“命を選ぶ権利もない”感染拡大の中で派遣社員の訴え

“命を選ぶ権利もない”感染拡大の中で派遣社員の訴え
新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、国は有給休暇の取得やテレワークを推奨していますが、実質的には活用できないと訴える非正規雇用の労働者がいます。
派遣社員として働く40代の女性は、先月下旬になって都内の派遣先の職場から、発熱などの症状があり、新型コロナウイルスの感染が疑われる場合には、出勤を自粛するよう求められました。

しかし、体調不良を理由に休めば、病欠扱いとなり時給制で働く女性はその分、手取りが減ってしまいます。

国が先日、仕事を休んだ場合の新たな所得の補償として1日当たり最大8330円を支払うと発表しましたが、対象となるのは全国で始まった学校の臨時休校に合わせて仕事を休んだ保護者のみです。

また、従来からある一般の労働者が対象の休業補償も、会社側の都合で従業員を休ませる場合に限られます。

万が一、体調を崩して休む場合に手取りの金額を維持するには有給休暇を取るしかありませんが、年間で10日しかなく、使い果たすわけにはいかないといいます。

女性は「派遣社員はテレワークも認められず、体調を崩すことも許されません。正社員との待遇の差は今までもいろんなところで出ているのでまたか、という感じです。私たちは命を選ぶ権利もないんだと実感しています」と話しています。

また、女性は派遣社員とは別に接客業のアルバイトも掛け持ちしていますが、最近までマスクの着用が禁止されていたということです。

女性は「感染するのが怖くて本当は休みたいけど、仕事にいかないと生活が成り立たなくなります。もともと、収入が少ないので、休業補償が出たとしても時給の6割では足りません。貯金を切り崩せばいいと思われるかもしれませんが、それができない現実をわかってほしい」と話していました。

専門家「収入を補償する仕組みを」

非正規労働者の問題に詳しい水野英樹弁護士は「新型コロナウイルスの影響で会社を休み、収入が減った分の補償がされるかどうかが労働者にとっての最大の関心事だと思います。休業補償で自分の収入を確保するためには、会社の指示で休んだことをはっきりさせたうえで休むことが重要です。また非正規労働者にきちんと賃金を支払う会社を国が支援していくことも必要だと思います」と話しています。

そのうえで、水野弁護士は「国はイベントの自粛や休校などへの影響について支援策を進めているが、それだけでは必ずしも十分ではないと思う。生活を守るために非正規雇用だけでなく、フリーランスや自営業の人も含めて、収入を補償する仕組みを作ることが国には求められている」と話しています。