センバツ高校野球 無観客で開催の方針 今月11日に最終判断

センバツ高校野球 無観客で開催の方針 今月11日に最終判断
k10012313701_202003041916_202003041935.mp4
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、高野連=日本高校野球連盟などは今月19日に甲子園球場で開幕するセンバツ高校野球について、観客を入れずに開催する方針を固め、今月11日に最終判断することを決めました。
高野連などは4日午後、大阪 西区でセンバツ高校野球の運営委員会を開き、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、大会の開催について協議しました。

その結果、観客を入れずに開催する方針を固め、出場校に対して準備を進めるよう要請することを確認しました。大会が無観客で行われることになれば、春夏通じて初めてです。

高野連などでは今月11日に改めて臨時の運営委員会を開き、最終判断を行うことにしています。

会議の後の会見で高野連の八田英二会長は、無観客で開催する方針を固めた理由について、「開催中止というのは簡単だが、甲子園でプレーしたいという球児の夢の実現に向けて感染予防などの対策をして最大限の努力をしたい」と話しました。

そして「専門家の意見も踏まえて感染状況がどうなるのか今後の推移を見守ったうえで、1週間後の今月11日に最終判断を行うことにした」と説明しました。

4日はこのほか、今月13日に予定している組み合わせ抽せんについては例年、出場校のキャプテンなどが、くじを引いていましたが、ことしは大会本部の担当者が代理で抽せんを行うほか、大会を開催した場合でも、15日と16日に行うことになっていた甲子園練習や19日に予定していた開会式を中止することなども合わせて決めました。

開催に向け感染予防を徹底へ

無観客で開催する方針が固まったセンバツ高校野球について高野連=日本高校野球連盟など大会の主催者は、開催に向けて新型コロナウイルスへの感染予防対策を徹底するとしています。

高野連が示した対策では、大会前の今月15日まで出場校に対し練習試合や遠征合宿の自粛を要請し、移動による選手の感染のリスクを減らすよう求めています。

また大会期間中の対策として、宿舎から甲子園球場への選手の移動は大会本部が用意したバスを使うことや、選手の宿舎ではビュッフェ形式の食事をやめてそれぞれの選手に配膳すること、それに、甲子園球場を訪れるすべての大会関係者の検温とマスクの着用を徹底することなどをあげています。

さらに試合後の選手への取材については通常のインタビュールームではなく、観客席で選手との距離をとって対応することも検討されています。

大会の主催者などは感染症の専門家に意見を求める一方で、プロ野球とサッカーJリーグが設け、3日初会合が行われた新型コロナウイルスの対策連絡会議に高野連の担当者が参加して情報収集をしたうえで、今月11日までに予防対策をまとめることにしています。

一方、出場校の選手などに感染者が出た場合について大会会長で毎日新聞の丸山昌宏社長は「明確な基準はなく、感染者が出たら対応を決めることになるが、常識的に考えて大会を継続することは難しい」と述べ、大会中でも中止する可能性があることを明らかにしました。

“テレビ越しに応援”“注意して実施してほしい”

センバツ高校野球が観客を入れずに開催する方針になったことについて、都内に住む20代の女性は「感染拡大を抑えるためにはよかったと思う。テレビ越しに応援するので頑張ってほしい」と話していました。

また、神奈川県に住む20代の女性は「観客が入れないというのは悲しいけれど新型コロナウイルスの影響であればしかたないかなと思う。甲子園のスタンドからの応援はないとしても、これ以上広げないためにもしかたないのではないか」と話していました。

都内に住む50代の男性は「試合をやること自体は選手にとっていいこと。自粛ムードが強すぎるので、個人的には観客がいてもいいと感じているが、主催者には注意して実施してほしい」と話していました。

都内の30代の女性は「選手たちが頑張ってきたので試合が中止になるよりできる機会があるのはいい。競技によっては中止になっているので不公平な部分はあると思う。なるべく観客を入れないでも試合だけはできるようにしてあげてほしい」と話していました。

甲子園近くの食堂では…

甲子園球場の近くの老舗の飲食店からは落胆の声が聞かれました。

このうち甲子園球場から徒歩10分ほどの商店街にある「大力食堂」は、昭和41年創業の老舗で、高校野球など甲子園で試合がある日は店の名物の「大盛りカツ丼」を目当てに大勢のファンでにぎわうといいます。

高校球児たちも全国から数多く訪れ、店の壁一面には球児たちが書いた色紙が貼られています。

店の売り上げは、試合がある日に集中しているということで、センバツ高校野球が、無観客での開催になることで、大きな痛手を受けるといいます。

夫婦で店を経営している藤坂初枝さんは、「無観客試合はさみしいが、球児たちの気持ちを思うと、中止よりはよかった。一方で、球場にお客さんが来ないため売り上げに大きく響くので、早くいつもの状態に戻ってほしい」と話しています。

甲子園 過去には…

春と夏の甲子園は長い歴史の中で、開催の危機や中止に追い込まれたことがありました。

夏の全国高校野球では大正7年の第4回大会が米騒動のため、開会式前日に延期が発表され、その後、中止になりました。

さらに昭和16年夏の第27回大会も一部地域で地方大会が始まったあとに戦局が緊迫したため中止に追い込まれました。その後は太平洋戦争のため、センバツ高校野球は昭和17年からの5年間、夏の全国高校野球は昭和17年からの4年間、大会そのものが途絶えました。

この中断期間に開催された昭和17年の夏の大会は、戦意高揚を目的に当時の文部省が主催した別の大会で「幻の甲子園」とも呼ばれています。

一方、センバツ高校野球は出場校が決まったあとで開催が中止になったことはありませんが、大きな災害により、開催の危機に直面したことはありました。

平成7年の第67回大会は阪神・淡路大震災のおよそ2か月後の開幕でしたが、被災地の兵庫からの3校も出場して開催されました。

さらに、開幕直前に東日本大震災が発生した平成23年の第83回大会は、開幕の5日前まで中止が検討されましたが、「がんばろう!日本」をスローガンに開会式の入場行進を中止にしたり、ブラスバンドなどの鳴り物による応援を禁止したりして派手な演出を控える形で開催されました。

センバツ 過去の入場者数

センバツ高校野球は大会期間中、甲子園球場に50万人前後が観戦に訪れる一大イベントです。

特に90回の記念大会で大阪桐蔭高校の優勝にわいた、おととしの入場者数は平成に入って最も多いおよそ54万人にのぼりました。

去年もおよそ48万人が入場し、入場料収入はおよそ3億2800万円余りでした。

92回目を迎えることしの大会は、2日間の休養日をはさんで13日間の日程で行われる予定ですでに先月28日から内野の特別自由席などの前売り券の販売が始まっていました。

高野連=日本高校野球連盟によりますと、払い戻しの方法については今後、詳細を決めたうえで高野連のホームページなどで周知するとしています。