“まだ再編が必要!” ヤフー川邊社長の真意は

“まだ再編が必要!” ヤフー川邊社長の真意は
ZOZOの買収、そしてLINEとの経営統合。今、大型のM&A(企業の合併や買収)を次々と打ち出しているのがZホールディングス。去年10月、ヤフーが持ち株会社体制に移行して発足した会社だ。相次ぐビッグディールのねらいは何か。そして次の一手は。グループを率いる川邊健太郎社長(45)に戦略を聞いた。(経済部記者 茂木里美)

ビッグディールの背景は

ZホールディングスがZOZOの買収を発表したのは去年9月。そのわずか2か月後にはLINEとの経営統合を発表し、世間を驚かせた。

川邊社長は、やつぎばやのビッグディールの背景として、アメリカのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や、中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)といった、米中の巨大IT企業の存在を挙げた。
Zホールディングス 川邊健太郎社長
「ラグビーワールドカップの時期だったので、私たちも、(敵にタックルを受けながらもパスをつないでいく)“オフロードパス”と呼んで交渉にあたっていました。ZOZOのことをやりながら、LINEのことをやりながらという感じで」
「国内のインターネットサービス産業が成熟してくる中で、GAFAやBATと呼ばれる米中のIT企業が日本でもものすごく強くなり、シェアを持つようになった。われわれ自身、このまま行くと埋没していくという危機感があったし、もっと日本に住む人に優先順位を置いた“もう1つの選択肢”が出てこないとまずいのではないかな、とも思うようになりました。それには国内のインタ-ネットサービス産業の業界再編が必要だということで、お声がけしたんです」

意外な驚きも

GAFAに対抗できる規模を目指した再編。ZOZOとLINE、それぞれの魅力は何だったのか。
川邊社長
「ファッションのEコマースの分野ではわれわれは大きなシェアを持っておらず、巻き返すには相当大きなことをやらなければいけないと思っていました。その意味で、数千億円の取引高を持つZOZOというのは本当に最適な規模感だった。ZOZOのほうも、さらに大きくなるには何か違うことをしなければいけない、ユーザー層を広げなければいけないといった問題意識があり、話がかみ合いました」
「LINEに関しては、インターネットにおいてはユーザーの“起点”を抑えることが非常に重要だと言われています。朝、起きた時にみんな何から始めるかと言うと、今は残念ながらヤフーニュースを見るよりも、先にLINEで知り合いからのメッセージを見るところから始めていると思う。この“起点”をスマートフォン上で強力に押さえていることが最大の魅力でした」
交渉中は、驚きもあったという。
川邊社長
「本当に記者会見の直前にZOZOの前澤社長(当時)から『ちょっと相談がある』と。『どうしたんですか』と言ったら、『この際すっきりしたほうがいいので、私も社長を辞めます』と急におっしゃられて。『後を継げる社長はいるんですか』とお尋ねして、『今の澤田社長がちゃんといます』というような話を伺ったんですが、あれはびっくりしましたね」
※澤田宏太郎氏は去年9月からZOZO社長。

目指す“データカンパニー”

業界再編に加えて川邊社長が重視する戦略が、ビッグデータの活用だ。去年10月、外部の企業や行政に、ビッグデータを提供する新たなビジネスに乗り出した。膨大な検索データから、性別や年代、位置情報、検索されているキーワードなどを分析。プライバシーを保護したうえで、有料で提供している。
例えば大手デパートが手がけたこのスカート。ヤフーのビッグデータを使って25歳から35歳の女性をターゲットに関心が高いファッションを探った結果、「ロングスカート」が導き出されたという。

そして、合わせて検索されていることばを分析するなどした結果、「自転車での巻き込みが怖い」「子どもをだっこする際におしゃれに見せたい」といった声が浮かび上がった。

こうした声を踏まえて、自転車に巻き込まれにくいすそのデザインにしたり、だっこひもをつけた際にポケットが隠れないよう低い位置にデザインしたりと、工夫を凝らした結果、同じブランドのなかで過去最高の売り上げを記録したという。
川邊社長
「データは“21世紀の原油”と言われていて、これからは“データカンパニー”になっていかなければいけないと強く思っています。重要なビッグデータの資産が(GAFAなどを通じて)海外にすべて流れていってしまうのはどうかなと。きちんともう1つの選択肢を責任を持って示していきたい」
「個々の商品をメーカーさんと一緒に作るというのもやっていますが、たとえば防災、あるいは被災時の緊急支援といった点でも役に立てると思っています。台風や地震というのはアジア全域も同じような課題を抱えているので、LINEとの経営統合後は、日本で作ったサービスをアジアへも積極的に展開していきたい」

今後の戦略は

インタビューを通じて川邊社長が繰り返したのは、米中に対抗できる「第3極」になるという決意だ。一方で、GAFAやBATと国内企業の間では、売り上げや時価総額などに大きな開きがある。その差をどうやって埋めるのだろうか。
川邊社長
「個々で闘って全員が埋没するより、それぞれの強みを生かした業界再編が起きる必要があると思っています。日本のインターネットの大きな企業にはみんな声をかけていきたいと思っていますし、LINEとの統合後は、アジアのIT企業やベンチャー企業にもどんどん仲間にならないかと声をかけていきたい。再編したうえで、きちんとした研究開発費を持てるような財務的な余力を作り出し、どんどん新しいサービスを提供していくことが重要だと思っています」

進むか、業界再編

「夜も眠れないような戦い」

GAFAなどと対抗していく争いを川邊社長はこう例えた。彼我の差が大きいぶん、今後の再編への意欲も強いのだろうと感じた。

あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」の時代を迎え、ネット業界に限らず、自動車や電機、金融といったさまざまな業界をまたいだ連携も、ますます加速することが見込まれている。次の戦略がどういう台風の目になっていくのか、注視していきたい。
経済部記者
茂木里美

フリーペーパーの編集者を経てNHKに入局。
さいたま局、盛岡局を経て平成29年から経済部