介護事業所の2割近くがマスクの在庫切れ 介護職の組合調査

介護事業所の2割近くがマスクの在庫切れ 介護職の組合調査
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、介護事業所の2割近くがマスクの在庫がすでになくなった状態となっていることが組合の調査で分かりました。
介護職などで作る組合「日本介護クラフトユニオン」は、先月28日から今月1日にかけて全国の介護事業所を対象に新型コロナウイルスによる影響を調査し、1117の事業所から回答を得ました。

それによりますと、マスクやアルコール消毒液などの衛生用品がそろっていないと答えたのは全体の34.1%に上り、このうち小規模な事業所が多い訪問介護では45.8%と半数近くに達したことが分かりました。

さらに、マスクの在庫が何日分確保できているか尋ねたところ、18.8%の事業所が「すでに在庫が無い」と答えました。

訪問介護では27.8%に上っています。

介護事業所のマスク不足については、厚生労働省や内閣府が実態を把握するため都道府県に調査を求めていますが、68.1%の事業所は「調査をまだ受けていない」と回答しています。

調査にあたった日本介護クラフトユニオンは「介護現場では、マスク不足などで日常的な感染予防すら困難になるなど、深刻な衛生用品不足に陥っている。一方で、いまだにニーズの把握調査すら進んでいないのが現状で、早急に改善されるよう、政府はきめ細かく対応してほしい」とコメントしています。

介護施設「対策しろと言われても」

新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすい高齢者が利用する介護施設。

国は感染対策を徹底するよう求めていますが、施設側からは「必要な物資が手に入らないのに、どう対応すればよいのか」という戸惑いの声が上がっています。

千葉県八街市にある特別養護老人ホーム「生活クラブ風の村八街」では、1月の中旬ごろからマスクを入手できなくなったといいます。

毎年、インフルエンザに備えて12月からの4か月間はマスクを多めに備蓄していますが、それでも段ボールおよそ2箱分しか残っていません。

このため職員1人当たり1日2回交換していたマスクを、1日交換せずに使いながらしのいでいるといいます。

しかしこのまま入手できない状況が続けば、今後1か月ほどで底をつくと危機感を募らせています。

さらに、除菌に欠かせないアルコール消毒液も入荷できない状態が続いています。

国からはマスクの着用やアルコール消毒の徹底などを求められていますが、衛生用品が不足した場合、どう対処すればよいのかと頭を抱えています。

施設長の村井香織さんは「マスクの入手がいちばん困難で、いつになったら入手できるのか見通しを示してほしいところです。国はマスクを増産すると言っていますが、状況は変わりません。マスクが底を突いたら布で作るかどうかも検討しています」と話しています。

施設の入居者からも不安の声が上がっています。

鷹羽つねさん(91)は部屋にアルコール消毒液を用意して予防に努めていますが、いつ感染するか分からないリスクを常に感じているといいます。

鷹羽さんは「やっぱり病気には勝てないので、あまり出歩かないようにして部屋に閉じこもっています」と話していました。

施設では感染者が万が一出たときの対応を検討しなければならないと考えていますが、国から具体的な対応策が示されておらず、計画はまだ立てられないといいます。

村井施設長は「終息のめどが見えず、本当にどうしていけばいいのかというのが正直な思いです。高齢者の命を預かる現場なので、国には必要な物品の確保や具体的な対応策の提示をお願いしたい」と話しています。

専門家「現場に丸投げで混乱」

介護の問題が専門の淑徳大学の結城康博教授は「国が示している対応策は、実行するための具体策に乏しく、いわば現場に『丸投げ』の状態になっていて混乱が生じている。ぎりぎりの状態で下支えしている介護職員の善意に頼るのではなく、国がリーダーシップを発揮してより詳細な対応策を示すべきだ」と指摘しています。