臨時休校要請 教育関係者や専門家は

臨時休校要請 教育関係者や専門家は
安倍総理大臣が全国の小中学校と高校に対して、来月2日から臨時休校にするよう要請したことについて、教育関係者や専門家たちからはさまざまな意見が聞かれました。

多摩市青陵中学校 千葉正法校長

東京 多摩市の青陵中学校の千葉正法校長は、「これまでにない、踏み込んだ内容で、大変驚いています。中学校はあすが期末試験の最終日ですが、授業はその後も続く予定で履修しなければならない学習内容もまだ残っています。高校入試も後期試験を控え、受験する子どもの対応もあります。保護者にも動揺が走っていると思いますが学童クラブなど子どもの居場所も考えなければなりません。感染予防のため安全が優先されることは分かりますが、学校としてはあす緊急に対応を考える必要があります」と話しています。

教育評論家 尾木直樹さん

教育評論家の尾木直樹さんは「ここまで大胆な要請をするとは思わなかったので率直に驚いた。国全体の感染症に対する防御策を考えると、学校は密集した集団で、爆発的に広がる可能性もあり、的確な判断だと思う」と話していました。

一方で「共働きやひとり親家庭では子どもを置いて仕事には行けないので、混乱が生まれる可能性がある。学校だけではなく、親が仕事を休めるよう企業にも要請を行うなど総合的な政策を打ちだす必要がある」と指摘しました。

東北医科薬科大学 賀来満夫特任教授

感染症の予防対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、「学校は、互いに近い距離の中で生活を共にするため、感染しやすい環境で、学校で感染した子どもが同居する高齢者にうつすリスクがあり最も警戒する必要のある場所だ。インフルエンザでは、学級閉鎖などをすることで局所的に流行がおさまることから効果的で現実的な対策の1つであるといえる。本格的な流行が懸念される中で子どもも高齢者も両方守ることにつながる措置として評価できる」と話していました。

川崎市健康安全研究所 岡部信彦所長

政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議の委員で、感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。判断の理由を国民に説明すべきだ」と話しています。

また感染症対策としての妥当性について、「一定の効果はあるかもしれないが、2009年に当時、新型と呼ばれたインフルエンザの経験を踏まえると、各地域の状況に応じてそれぞれ対策をとることが有効だ。ウイルスに感染した患者がいない地域もあるのに、全国一律に小中高校の休校を要請するという、国民に大きな負担を強いる対策を、現時点ではとるべきではないと思う」と話していました。

東京慈恵会医科大学 吉田正樹教授

日本環境感染学会の理事長で、政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議の委員でもある東京慈恵会医科大学の吉田正樹教授は、「人から人への感染を防ぐという意味では、実施しないよりは感染者が少なくなる可能性はある。ただ、感染が起きている地域での休校は感染を広めないためにはよいと思うが、感染が起きていない地域で同じ対応をとることにどれほどの効果があるかはわからない。子どもたちが外に出歩き、友達と遊んでしまっては効果は下がるだろうし、現時点で評価することは難しい」としています。

日本病院会 相澤孝夫会長

全国およそ2500の病院で作る日本病院会の相澤孝夫会長は「全国の医療機関では、子育てしながら働くスタッフが非常に増えてきている。短い期間ならともかく、長期間の休校となると子どもを預けられず、出勤できないスタッフが多数出てくるおそれがあり、病院の現場としても非常に大きな影響を受ける事態だと考えている。出勤できるスタッフが減ると診療報酬を受けるのに必要な人員の要件を満たせなくなる施設が出てくる可能性もあり、国には特例措置を含めた対応を求めたい。全国の病院にどのような支援ができるのか、日本病院会としても対応を早急に検討したい」と話していました。