ここまできた!ARが可能にする“未来体験”とは?

ここまできた!ARが可能にする“未来体験”とは?
アメリカ・ラスベガスで1月に開かれた、世界の最新のテクノロジーが集う技術見本市、CES2020。そこで注目を集めていたのが、実際の風景にデジタル情報を重ね合わせるAR=拡張現実を使ったサービスとデバイスです。なかでも、「ARを使ってショッピングができるサービス」が展示されたブースに大勢の人が集まっていました。

ARといえば「どんな活用方法があるのかイメージがわかない」、また「技術的な制約も多くサービス化まで道のりが遠いのではないか」といった印象を持つ人も多いのではないでしょうか。実際、私もそうでした。ところが、実際に現場で体験してみるとARが私たちの日常に溶け込む世界がすぐそこまで来ているのではないかと強く感じました。どんな体験だったのか、最新のARサービスを取材して、見えてきたものとは。(映像センター カメラマン 大石達生)

あれ?触れそう!

メガネのような形をしたARグラスを使ったオンラインショッピング体験。日本のスタートアップ「MESON」と、中国の企業「エンリアル」が共同で開発しました。ARグラスをかけると目の前の風景に重なってバーチャルモデルが現れ、モデルが着ている洋服をユーザーが購入できる仕組みです。

NHKで映像に携わる仕事をしている私は、これまでARやVRなどを体験するためのデバイスをいくつか見てきましたが、ネックに感じていたのがデバイスの重さや、もっさりとした動作環境です。紙媒体など2Dのコンテンツと比べると、ARなどの体感型のコンテンツは、実際に体験するまでのアクションが多いため、「見たい」という強いモチベーションが必要で、私自身もコンテンツを体験するために「よし、見るぞ」と構えることがよくありましたが…。
今回、CESで発表されたARのサービスを実際に体験してみました。まず驚いたのがARグラスの性能です。実際にかけてみるとサイズ感、重量ともにメガネとほぼ変わらず、ARグラスの違和感が体験の妨げになるような印象は受けませんでした。
グラスをかけるとバーチャルモデルが目の前に出現します。出てくるのは3Dスキャンを使って本当のモデルを再現した画像。モデルはアバターのようでどこか無機質ですが、着ている洋服の質感や色合いなどからリアリティを感じさせ、服のしわや光沢なども感じることができました。

これまでの既存のコンテンツでは、実際の風景とARで作り出されたオブジェクトとの境界線に違和感を持つことがありましたが、今回はデジタル情報とリアルな空間がうまく溶け合っているように感じました。
ARグラスとつながったスマホがポインターになり、対象物に向けてスマホをタップするとモデルの着ている服を選択できます。そして選択した服のそばにポップアップで値段が表示されます。欲しい服はそのままポインターで選択。バーチャル空間に生成されたカートにドラッグすれば購入は完了です。簡単すぎてたくさん買い物してしまいそう…。

等身大のモデルは、私が後ろに回り込んだり、近寄っていろんな角度で眺めたりすることができ、服のディテールや違うアングルからの見え方などをチェックすることもできました。またARグラスにはスピーカーが付いていて、音楽を聴きながらショッピングができ、まるで実店舗に来て買い物をしているような没入感も味わえました。

なぜARでショッピングなのか

開発したARスタートアップの梶谷健人CEOによると、ARが進化したことで、ふだん、私たちが実店舗で体験しているようなショッピングだけでなく、さらに一次元上の体験を提供できるといいます。例えば、消費者が外出しなくても自分の家でリラックスしながらお気に入りのブランドの世界観に浸って買い物ができたり、店側が十分なスペースがない場所でも、店舗でARを使って商品を展開することも可能になると話していました。

ねらいはスマホ視聴を超えるユーザー体験

今後の展望について梶谷CEOは、スマートグラスの進化によって、ARを使った体験が現在のスマホ社会にとってかわる時代が来ると確信しています。
(梶谷CEO)
「一昔前は、重たいARグラスをつけるか、もしくはスマホやタブレットかざしてかなり不自然な行為でARを楽しむしかありませんでした。今はメガネと変わらないような生活の中で自然に利用できるデバイスになり、日常生活とARが混ざり合う世界はすぐそこまできていて、SF的な話ではなくなってきています」
このARを使ったショッピングは、ことし秋にサービスを開始する予定だということです。取材を通して感じたのは、ショッピングという私たちにとって身近な体験がAR空間で可能になることで、便利になると同時に、デジタルと現実世界の境界がよりあいまいになっていくということ。
梶谷CEOのことばで印象に残っているのが「ARが社会にもたらすインパクト、それは、現実世界とデジタル世界の距離を限りなくゼロに近づけること」ということばです。例えば、スマホやパソコンで文字を打って検索しなくても、ARグラスをかけて東京タワーを見れば、実際の風景に情報が映し出されて、見る行為そのものが検索になる。そんなテクノロジーが実用化されれば、「現実とデジタルの境界」は今よりもっと消えていくのかなと感じました。

進化を遂げつつあるAR。デジタルとリアルの融合が進むなかで、今後は、未来のライフスタイルの「当たり前」になっていくのかもしれません。
映像センター カメラマン
大石 達生
平成21年入局
動画サービス会社に1年間出向した経験をもとに
動画制作に携わる