新型コロナウイルス 政府 対策基本方針を決定

新型コロナウイルス 政府 対策基本方針を決定
新型コロナウイルスの感染の拡大に備え、政府は患者数が大幅に増えた地域では、重症者向けの医療体制を確保するため、症状が軽い人には自宅療養を求めるなどとした対策の基本方針を決定しました。
政府は25日昼、総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、感染の拡大に備えた対策の基本方針を決定しました。

基本方針では、現在の状況について「国内の複数地域で感染経路が明らかではない患者が散発的に発生し、一部地域には小規模な集団感染が把握されている状態だ」としています。

そのうえで、感染経路について「飛沫か接触感染で空気感染は起きていないと考えられる」とする一方、「閉鎖空間で近距離で多くの人と会話するなど、一定の環境下であれば、せきやくしゃみがなくても感染を拡大させるリスクがある」と指摘しています。

また、重症度は、致死率が極めて高い感染症ほどではないものの、季節性のインフルエンザと比べて高いリスクがあるとし、高齢者や基礎疾患がある人は重症化のリスクが高いと分析しています。

そして、感染拡大の防止策を講じ、患者が増加するペースを可能なかぎり抑えるとして、国民や企業に対して発熱などかぜの症状がみられる場合には、休暇を取得したり外出を自粛したりすることや、テレワークや時差出勤の推進を強力に呼びかけるとしています。

また、イベントの開催は現時点で、全国一律の自粛要請は行わないものの、感染の広がりなどを踏まえ、開催の必要性を改めて検討することなどを求めています。

さらに、臨時休校などについて、学校が適切に実施するよう都道府県から要請することにしています。

一方、今後、患者数が大幅に増えた地域では、重症化した患者向けの医療体制を確保するため、症状が軽い人は、自宅での安静・療養を原則とするほか、診療時間や動線を区分するなどの対策を講じたうえで、一般の医療機関でも患者を受け入れるとしています。

また、患者数が継続的に増えている地域については、患者の濃厚接触者に対する健康観察は縮小し、広く外出を自粛するよう協力を求めるとしています。

そして、こうした対応に切り替える際は、厚生労働省が考え方を示したうえで、地方自治体が判断して、地域の実情に応じた最適な対策を講じるとしています。

首相「方針に基づき より踏み込んだ対応を」

基本方針の決定を受け、安倍総理大臣は、「患者の増加スピードを可能なかぎり抑制し、国内の流行を抑えることが重要だ。自治体の状況に応じて地域の感染拡大の防止に向け、方針に基づき、より踏み込んだ対応を行っていく。自治体や医療機関など関係者と連携しつつ、必要な医療提供体制をしっかりと整備していく」と述べ、速やかに実行に移すよう指示しました。

情報提供

基本方針では国民や企業、地域などに対して情報提供を進めるとしています。

国民に対しては、正確で分かりやすい情報提供や呼びかけを行い冷静な対応を促すとしています。

具体的には、感染の発生状況などについての正確な情報提供や、手洗いやせきエチケットなどの対策の徹底、発熱などの症状がある場合の休暇取得や外出の自粛などを呼びかけます。

また企業に対しては、発熱などの症状がみられる従業員への休暇の取得やテレワークの推進などを呼びかけます。

イベントの開催については、現時点では全国一律の自粛要請を行うものではないとしたうえで、地域や企業には感染拡大を防ぐ観点から、イベントを開催する必要性を改めて検討するよう要請するとしています。

国内での感染状況の把握

感染症法に基づいて医師の届け出で感染の疑いがある人を把握し、ウイルス検査を行います。

そして感染が確認された場合は、感染経路などを調べるとともに濃厚接触者を把握します。

また民間の検査機関を含めて、ウイルス検査の機能向上を図るとしています。

今後、患者の数が継続的に増えた場合は、入院が必要な肺炎患者の治療を確定するためにウイルス検査を実施するという方針に移行させるとしています。

感染拡大防止策

集団感染が発生しているおそれがある場合には、関係する施設の休業やイベントの自粛など必要な対応を要請するとしています。

また、重症化しやすいとされる高齢者の感染を防ぐため、介護施設などでの対策を徹底するとともに、多くの人が集まる公共交通機関や道の駅などでの感染防止対策を進めます。

今後、地域で患者の数が継続的に増えた場合は、感染経路の調査や濃厚接触者への健康観察は縮小し、広く外出自粛の協力を求める対応に切り替えるとしています。

また感染拡大を防ぐために、学校での臨時休校などを適切に実施するよう都道府県から要請することにしています。

医療体制

まずは「帰国者・接触者相談センター」で連絡を受け、感染が疑われる場合には専用の外来窓口「帰国者・接触者外来」を紹介します。

そしてウイルス検査を行ったうえで必要に応じて入院させます。

また、医療機関で感染症に対応したベッドや人工呼吸器などの確保を進めるとともに治療法やワクチンなどの開発に取り組みます。

今後、地域で患者の数が大幅に増えた場合は一般の医療機関でも診療時間や動線を分けるなどの感染防止策を行ったうえで感染が疑われる患者を受け入れるとしています。

それにあわせて重症の患者を多く受け入れる見込みの感染症指定医療機関から順に「帰国者・接触者外来」を段階的に縮小します。

また、症状が軽度である場合には自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した時にかかりつけ医などに相談したうえで受診させます。

高齢者や持病がある人は感染すると重症化しやすいことからより早期・適切な受診につなげるとしています。

症状がない高齢者や持病がある人の継続的な医療・投薬については感染防止の観点から電話による診療で処方箋を発行するなどできるだけ医療機関を受診しなくてもよい体制をあらかじめ構築するとしています。

そのうえで重症者を優先的に受け入れる医療機関を決めるなど適切な体制を整備することにしています。また高齢者が利用する介護施設などで感染が疑われる人が出た場合には感染防止策を徹底するとともに重症化のおそれがある人を円滑に入院治療につなげるとしています。

水際対策

国内への感染者の急激な流入を防ぐために現在の入国制限や渡航中止勧告などは引き続き実施するとしています。

一方検疫での対応については今後医療資源の確保の観点から感染拡大防止策や医療提供体制などに応じてその運用を切り替えていくとしています。

そのほか

マスクや消毒液の増産、円滑な供給を関連する事業者に要請するとともに過剰な在庫を抱えることのないよう消費者や事業者に冷静な対応を呼びかけます。

また中国から一時帰国した児童・生徒の学校への受け入れを支援しいじめを防ぐための取り組みを進めることにしています。

患者や感染防止の対策に関わった医療関係者などの人権に配慮した取り組みを行います。

空港や港湾、医療機関におけるトラブルを防ぐために必要に応じて警戒や警備を実施します。

「地域医療体制整備を」総務相が各知事に書簡

高市総務大臣は各都道府県の知事に対し、政府が決定した対策の基本方針を踏まえ、適切な入院医療を提供できるよう、体制整備に万全を期すよう求める書簡を出しました。

書簡ではこのほか各地方自治体が運営する公立病院が今後の患者の増加を見据えて、病床の確保など公立病院としての役割を適切に果たすよう積極的に取り組むことも要請しています。

官房長官「ある意味 先手先手の対応」

菅官房長官は午後の記者会見で、25日決定した対策の基本方針について記者団から「野党側からは政府の対応全般の遅れを指摘する声も出ているが、タイミングは適切だったと考えるか」と問われたのに対し、「政府としては、これまで先手先手の対策で対応してきた。今回の基本方針は、今後、患者が増加する局面を想定して適切に対策を策定したもので、ある意味、先手先手の対応だ」と述べました。

立民 福山幹事長「国民の不安 払拭できないのではないか」

立憲民主党の福山幹事長は記者会見で「基本方針には国民が求めている検査の拡充が、明確に示されておらず大変残念だ。イベントを自粛したほうがいいのかなど、素朴な疑問に答えておらず、国民の不安を払拭(ふっしょく)できないのではないか」と述べました。

また、集団感染が確認されたクルーズ船から、厚生労働省が必要な検査を行わないまま、23人の乗客を下船させていたことについて「そんなずさんな管理体制でやっているのかと驚いた。対応に問題があるのではないか」と述べました。