死後の手続きを“代行” 葬儀会社の新事業とは

死後の手続きを“代行” 葬儀会社の新事業とは
疎遠な家族が亡くなった時、残された遺族は自分1人だけ。財産の処分を依頼されたら1人でできますか?誰かに手伝ってほしい。そうした相談がいま、葬儀会社に相次いで寄せられています。福岡市のある葬儀会社が、遺族に代わって財産の処分などあらゆる手続きをまとめて請け負う事業を始めました。社会の変容にあわせて、変わりつつある葬儀会社の仕事。その実態を取材しました。(福岡放送局記者 大西 咲)

“孤独”に亡くなった男性

去年12月、福岡県太宰府市で64歳の男性が亡くなりました。10匹を超える猫と暮らしていた男性。NHKの取材クルーが部屋を訪れると、無数の餌の空箱や、タバコの吸い殻、散乱したゴミがそのままになっていました。

男性の住宅は持ち家で、一連の葬儀のほか、土地と建物の相続、解体や売却などの手続きと処分が必要となりました。

10年以上疎遠だった兄「1人では何もできない」

亡くなった男性は未婚で、残された家族は長崎県に住む高齢の兄、ただひとりでした。男性は、その兄と10年以上音信不通だったといいます。警察から弟の死について突然の連絡を受けた兄は、取材に対して「すべてが初めての手続きである上、長崎に住む私にとっては見知らぬ土地ですし、自分が高齢なので何度も福岡に来ることもできない。そもそも、どの業者に何をお願いしたらいいのか全く分からず本当に困った」と話しました。
こうしたケースで、もし、遺族が何もできずに、葬儀だけでなく財産の処分などの手続きを放置した場合、行政が代わりにできることは法律上、火葬と納骨に限られています。そして、空き家が増え続ける実態があります。こうした中、この兄が相談したのは「葬儀会社」でした。

葬儀会社の仕事はどこまで?

福岡市にある葬儀会社「天国社」。遺族からの依頼が増え続けていたこの会社は、死後の不動産の処分などをサポートするサービスを新たに事業化することにしました。

事業化にあたって、この会社は宅地建物取引業の免許を取得。担当の執行洋隆さんも、専門学校に通って個人で宅地建物取引士の資格を取得しました。
執行さん
「最近、特に去年あたりから、お葬式が終わったお客様から不動産はどうしたらよいの?というお問い合わせがものすごく多くて、せっかくそこまで信頼をいただいているならわれわれでできるんじゃないかなというのが始まりなんですね」

利益は確保できるが…「すべてを受けるのは難しい」

この葬儀会社の事業化の仕組みは次のようになっています。
葬儀会社はまず、遺品の片付けと清掃を行う業者、家の解体業者、相続の手続きを行う司法書士、土地を売却する不動産会社にそれぞれ作業を依頼します。
次に、さら地になった土地を葬儀会社が遺族側から買い取り、土地代を遺族に支払います。
遺族は土地を売って得たお金からそれぞれの業者に作業代金を支払い、一方、葬儀会社は不動産会社に土地を売却します。葬儀会社は土地の価格の差額をいわば仲介料のような形にして利益を得るのです。

ただ、遺族にお金を残すのが目的のため、大きな利益にはつながりません。また土地を買い取り、遺族に土地代を支払うところまで進んでも、その後土地を第三者に売却できない場合は葬儀会社が土地を抱え続けるというリスクもあります。

かつては家族が行っていた

私たちが取材した日は、冒頭で紹介した太宰府市の64歳の男性の家の解体作業が始まっていました。

葬儀会社の執行さんが全体を取りしきります。解体の手順や土地の境界線の確認、売却に向けたスケジュールなどの打ち合わせをしていました。

本業の葬儀関連の仕事を行うかたわら、こうした業務をこなしていく。遺族から頼られ、それを断ればほかに担い手はなく空き家として放置される。執行さんは、利益よりも“使命感”が自分に仕事をさせていると話します。
執行さん
「亡くなった人をしのびながら、昔はこうした手続きを家族が行っていたはずなんですが、それがもうできなくなっている。ちょっと寂しいですよね。家族の縁が薄くなったというのももちろんあるでしょうし、1つは少子化・核家族化が進んでいるというのが鮮明にわかりますね」

実態にどう合わせるのか

死後に残されたさまざまな手続きは従来、残された家族が行ってきたものです。しかし、一人暮らしを続ける高齢者や、離れて暮らしたまま疎遠になってしまう家族、家族の形は大きく変化しています。そのしわ寄せがきている葬儀会社にもいずれ限界が来るはずです。家族の間で改めて将来を考えるのはもちろん、社会制度を今の実態にどう合わせていくのか、課題は多く残されていると感じました。
福岡放送局記者
大西 咲
平成26年入局
熊本局を経て現所属
高齢者福祉や孤独死の現場を取材