クルーズ船から下船の豪の乗客 帰国後2人陽性反応

クルーズ船から下船の豪の乗客 帰国後2人陽性反応
オーストラリア保健省は、新型コロナウイルスへの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船し、20日、チャーター機で帰国したオーストラリア人2人から、ウイルスへの陽性反応が出たと発表しました。
陽性反応が出たのは、南オーストラリア州に住む24歳の女性と、西オーストラリア州に住む78歳の男性で、いずれも容体は安定しているということです。

オーストラリア保健省によりますと、帰国した乗客164人のうち6人が北部ダーウィンに到着した際、熱などの症状がみられたため、すぐに隔離して検査を行った結果、2人から陽性反応が出たということです。

これについて、加藤厚生労働大臣は「必ずしも全員が陰性とわかってチャーター機で帰国したわけではなく、誰がどういう経緯で陽性が出たのか情報を収集したい」と説明しています。

こうした日本政府の見解についてオーストラリア保健省の報道官は、NHKの取材に対し「日本を出発する前の検査で陰性だと確認されることが下船の条件だった。陽性だった乗客はチャーター機に搭乗することは許されなかった」と説明しました。

そして、乗客全員について搭乗前には感染の症状はみられず、検査の結果も陰性だったとしています。

そのうえで帰国後にウイルスへの感染が確認されたことについて、下船前の検査で陽性反応が出たために搭乗できなかった人と接触していた可能性などが考えられるとしています。

感染が確認された2人を除く、残りの乗客については指定の施設で14日間隔離されることになっています。

加藤厚労相「情報を収集したい」

このことについて、加藤厚生労働大臣は閣議後の記者会見で「オーストラリアに帰国した人たちは、必ずしも全員が陰性だと分かってチャーター機で帰国したわけではなく、誰がどういう経緯で陽性が出たのか、情報を収集したい」と述べて、ほかの乗客と同様に、検査で陰性と分かって下船したかどうかはまだ分かっていないと説明しました。

また健康観察期間とした14日間を過ぎたあとに陽性反応が出たことについては、「専門家からは下船した人も念のため引き続き健康観察を行うことが必要だと指摘を受けていて、しっかりフォローアップしなければならないと考えている」と話しています。

さらに、クルーズ船から下船した人が公共交通機関で帰宅したことについて、各国から疑問の声があがっているという質問に対しては「感染を広げてしまうのではないかと懸念する人がいるのは承知しているが、限られた中で科学的な知見を踏まえながら判断している。下船したあとは必ずマスクを着用し不要不急の外出は控えるよう求め、定期的に状況を確認する体制を敷いている」と答えています。

専門家「下船後に陽性ありえる」

感染症に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は「新型コロナウイルスは、のどからぬぐいとることができるウイルスの量が非常に少なく、検査が難しい実態がある。さらに、これまでの報告から、船内で客室での待機を行ったあとに感染している可能性もあるため、下船の際の検査で陰性であっても、あとから陽性になってしまう可能性はある」としています。

そのうえで「船内での感染拡大を防ぐために乗客を下船させたのは妥当な判断といえるが、下船後2週間は人混みに出ないなど、接触を最小限にする生活を送ってもらうことが望ましい」と話しています。

また、感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎教授は「これまでわかっている船内での感染の事例から、今月5日に客室での待機が始まったあとに感染している可能性もあり、下船した人の中から陽性の人が出てくる可能性はある」と指摘しました。

また、乗客が下船した後の対応について「日本では国内で感染経路が追えない人が出てくるなど、アメリカなどとは段階が異なってきている中で対応が違うことは理解できる。下船した人には2週間、体調の変化に注意してもらい発熱などの症状が出れば、相談してもらうことが大切だ」と話しています。

下船した乗客「不安に思っている人も多いのでは」

京都市の岡村吉雄さんは先月20日に妻とともに乗船し、今月14日に受けた検査で陰性だったため、19日下船しました。

京都市の自宅に戻った岡村さんはオーストラリア人の乗客が、帰国後のウイルス検査で新型コロナウイルスの陽性反応が出たことについて「ニュースを見て驚いている。検査のあとも船内では乗客どうしの接触があったので、陽性の人が出てくることは考えられたことだと思う」と話しました。

そして「自分は体調がよいので特に心配はしていないが、下船した乗客の中には不安に思っている人も多いのではないでしょうか」と話しました。

また下船から1日がたった20日の昼すぎには、厚生労働省の担当者から電話があり、発熱などの症状がないか尋ねられ、下船から2週間程度は不要不急の外出を控えるよう指導されたということです。

糖尿病の持病がある岡村さんは「自分が万が一陽性だった場合、病院に行けば感染源になってしまいます。病院には抵抗力の弱い人たちがたくさんいるので、船の中でもらった薬がある間は、なるべく病院に行かずにしのごうと思っています」と話していました。