新型ウイルスに運転手が感染 タクシー会社は…

新型ウイルスに運転手が感染 タクシー会社は…
18日、新型コロナウイルスへの感染が確認された横浜市のタクシー運転手が勤務する都内のタクシー会社が、NHKの電話取材に応じました。
会社によりますと、感染したのは60代の男性運転手で、都内の営業所で勤務しています。

今月8日の朝に本人から「体調が悪いから休みます」との連絡があり、運転手はその日以降、ずっと休みをとっていました。
そして、19日午前中に、運転手の家族から電話があり、運転手が新型コロナウイルスに感染したという連絡を受けたということです。

その際に家族からは「運転手は少し前から具合が悪く、医者に診てもらったが『かぜだろう』と言われ休んでいた。しかし、体調がよくならないので別の病院で新型コロナウイルスの検査をしたが、そのときは陰性だった。そのまま入院をしていた」と説明があったということです。

会社は、運転手本人とは、これまでのところ直接話ができていないということですが、会社の勤務記録などでは、神奈川県と横浜市の発表で運転手が発熱があったという今月3日については、その日の朝から翌日の未明まで乗務をしていました。

乗務前と後に営業所で行われる点呼では、運転手は「体調に特に問題はない」と担当者に説明していたということです。

さらに、会社の勤務記録などでは休みに入る前の直近の勤務については、先月15日からは9日間働いていて、発熱があったとされる今月3日からは2日間勤務し、主に都内で、少なくともおよそ30人の乗客を乗せたということです。

この会社では、新型コロナウイルスへの対応策として先月28日以降、運転手のマスクの着用とうがいや手洗い、それに乗務前後の車内の消毒・清掃などを順次、行っていました。

また、乗務前の点呼で運転手の体調不良が疑われる場合などには、体温を測定するなどの対応をとっていたということです。

これまでのところ、感染した運転手以外の従業員に発熱やせきなど症状を訴える人はいないということですが、今後、感染した運転手と濃厚接触した従業員を特定し、自宅待機を指示するということです。

さらに、すべての従業員に自宅での体温測定など健康状態を確認するよう指示し、仮に37度5分以上の熱がある場合には出社させず、自宅で待機させることなどを決めたということです。

タクシー会社は「社員が感染したことで皆様にご心配をおかけしてしまい大変申し訳ありません。お客様や社員の安全安心を守るために感染の拡大防止に最大限取り組んでいきます」としています。

タクシー運転手らに不安の声

タクシーやハイヤー運転手などからも相次いで感染が確認されている中、都内のタクシー運転手たちの不安の声を取材しました。

最初に電話で話を聞かせてもらったのは都内のタクシー会社で働く40代の運転手です。

タクシー運転手など関係者に感染者が相次いでいることについて聞いてみると、「“あすはわが身”という心境ですよね。これだけ相次いでいると自分もいつ感染しても、おかしくないのかなと。誰が感染しているかわかりませんからね」と話していました。

また、特に不安を感じるときはどういう時なのか聞いてみると、「いちばん気になるのはマスクをしていないのに、せきをしているお客様ですね。勝手に窓をあけると、怒られるリスクもあるし我慢するしかないです。狭い空間なので逃げようがないですしね。自分自身はマスクの着用を徹底していますが、本当に大丈夫なのか不安です。怖いし、恐怖さえ感じますが最近は諦めに近い心境にも…」と話していました。

続いて話を聞かせてもらったのは、都内で個人タクシーをしている50代の運転手です。

この運転手は、「感染しないためには仕事をしなければいいのですが、食べていくためには働かざるをえないですしね。でもその仕事にも影響が出かねない事態になっています。特に個人タクシーは深刻だと思います」と話していました。

「個人タクシーが深刻?」って、どういうことなのか。

詳しく話を聞くと、都内の個人タクシーの組合支部で運転手や従業員などに感染者が相次いで以降、個人タクシーを避ける乗客もいるというのです。

実際に最近も都内のとあるところで順番待ちをしていたところ、この運転手の車が先頭だったものの、客は乗車せず、後ろの法人のタクシーに乗車したということです。

この運転手は、最近同様の経験をしている個人タクシーの仲間もいると話していました。

最後に、都内の法人タクシーで働く60代の運転手に話を聞きいたところ、この運転手は「私は外国人が多いエリアで仕事をしていないので、少し前までは自分が感染するとは思っていませんでした。でも日本人しか乗せていないというハイヤーの運転手が感染して以降、もはや関係ないのかなと。いつ感染してもおかしくないと思うようになりました」と話していました。

さらに仕事への影響を聞くと、「『タクシーで感染するのでは』というような風評被害も一部であるようで日本人の利用者が減っているようです。さらに中国人など外国人観光客の利用者も少なくなっていると思います。こうした状況が続けば生活が厳しくなる運転手もでてくるのかもしれません。早く終息してほしいです」と話していました。