急増!在宅勤務 背景はやっぱり “新型ウイルス”

急増!在宅勤務 背景はやっぱり “新型ウイルス”
「会社に行かない」「人に会わない」
新型コロナウイルスの感染が相次ぐなか、在宅勤務を導入する企業が急増しています。感染対策を進めると、新たな働き方が見えてくる?
(ネットワーク報道部記者 郡義之 松井晋太郎)

全社員を在宅に!

先月、東証1部上場のIT企業「GMOインターネット」は、グループ全体のほぼすべての社員約4000人を対象に、2週間の在宅勤務を命じました。
多くの従業員であふれていた東京 渋谷の本社オフィスは、驚くほど閑散としています。
当初は2週間の予定だった今回の対策。
しかし、新型コロナウイルスの感染が相次いでいることから、期限を設けず対策を続けることにしました。
顧客の対応など、やむを得ず出社する場合でも条件が設けられています。

「健康状態が良好であること」
「持病を抱えていないこと」
また、妊娠など健康への配慮が必要な家族やパートナーがいる場合は出社できません。
出社する場合は、公共交通機関が混雑する通勤や帰宅ラッシュの時間を避けることや自転車通勤を勧めています。

メディアなどの対応を担当している、広報マネージャーの石井晴美さんもふだんは自宅で問い合わせに応じるなどしています。

ほぼすべての社員が在宅で仕事をして、困ることはないんでしょうか?
「今月上旬、在宅勤務について社員にアンケートをしました。9割ぐらいの社員が『よかった』と回答し、『大きな支障はない』とか『困ったことはない』と答えています」
必要なやり取りはメールで行い、ビデオ会議で打ち合わせすることで、在宅でも円滑な業務を可能にしているということです。

一方、「口頭で簡単に済む話でもチャットで対応するため手間がかかる」とか、「個人の無線LANルーターでは、通信の限度を超えてしまう」といった意見も寄せられています。
GMOインターネットの熊谷正寿グループ代表は、自身のツイッターに在宅勤務を導入した実感を投稿しました。
「在宅勤務開始から3週間。何がすごいかと言うと、業績に影響がほぼ無い。この結果を見て、そもそもオフィスが必要なのか真剣に考えている」
また、AIなどを活用した情報通信サービスを展開している「スペクティ」(本社・東京)も17日から当面の間、全社的に在宅などで勤務できる態勢にしました。

都内にある本社のオフィスには、電話対応など社員が3人程度いるだけ。
このほかの約50人の社員は、携帯電話やパソコンを使って在宅で勤務を行います。

この会社ではこれまでも台風などの際には在宅勤務を行ってきましたが、新型コロナウイルスへの対策が長期間必要になる可能性もあることから、全社的な取り組みを導入したということです。
スペクティ担当者
「在宅を進めていくと、今後は顔を直接つきあわせてのやり取りができなくなるので、意思の疎通をどう充実させていくかが課題になってくる」

在宅勤務で組織も変わる

突然、在宅勤務を命じられてもスムーズに仕事ができるんでしょうか?

ネット上で話題になっている、あるイラストを見つけました。
都内に本社がある企業の中国支社に所属する日本人。
コロナウイルスの感染拡大を防止するため出勤を禁じられ、今月、日本に帰国しました。

在宅勤務の決定は、春節の休みが明けるわずか3日前。

パソコンがない従業員には、会社の端末を貸与するなどして環境を整備。
会社にいるのは、電話対応の1人だけにしたそうです。
業務連絡はすべてチャット。
会議はWEB上で行います。

メンバーの中には自分の部屋のドアに勤務時間を書いた紙を貼って、家族に協力を求めた人もいたそうです。

これらの投稿、最も多いもので2万を超えるリツイートがあり、反響を呼んでいます。
このツイートを投稿した女性(31)に話を聞くことができました。
女性は今月5日に会社から帰国するように言われ、12日に中国の自宅を引き払って帰国。
その後、在宅で仕事をしています。
勤務は午前10時から午後7時までで、顧客とのやり取りや部下の勤務管理などすべての業務を自宅で行っています。

毎日3回のウェブ会議で互いの顔を確認しながら情報を共有しています。
投稿した女性
「チャットで仕事をすると、分からないことにすぐに返事が来て解決するようになりました。みんな『誰かがやってくれる』という考え方から『困った時は誰かが助ける』という感覚で仕事が進んでいます」
はじめは不安があったという女性ですが、やってみると違和感が無いそうです。
さらに、業務の環境や従業員のつながりにも変化が出ているといいます。
投稿した女性
「通勤途中など、自分がうつしてしまうかもしれないといったストレスがなくなったことで安心して仕事ができています。また、社内の一体感は対面の時よりも強くなったと感じます。柔軟な働き方や業務の効率化、それにお互いに助け合うつながりは会社の組織を強くさせると思います」

採用面接 自宅でOK

新型コロナウイルスの対策はこんなところでも始まっています。
転職サイト運営会社の「エン・ジャパン」は今月から、自社の採用面接をWEB上で行っています。

5年ほど前から、面接会場まで片道2時間以上かかる人を対象にWEB面接を行ってきたというこの会社。

各地で新型コロナウイルスの感染が確認されていることを受け、全面的なWEB面接に踏み切りました。

面接官はパソコンの前に座り、モニターの画面に映る学生と1対1で向き合います。

服装は自由で、どこの場所で面接を受けてもいいということもあって、学生からは「リラックスして話せる」とか「人混みに行かなくて安心」といった声が上がっています。

すでに約300人がWEB上で面接を受けました。
平原恒作 人財戦略室長
「実際に来社する必要がない分、面接の日程調整がしやすいという利点がある一方で、実際に来社して分かる企業の雰囲気などは伝わりづらいのが課題です。いずれにせよ、学生の健康面を第一に考えればこうした方法による面接は有効だと思います」

専門家 “変革を前倒し”

在宅勤務の取り組みについて、専門家は感染症対策としてだけでなく、企業活動を継続する上でも有効だと指摘します。
「東京オリンピック・パラリンピックに向けて、在宅勤務を導入する企業が出始めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大がその変革を前倒ししているといえます。企業に社員の感染予防が求められる一方、経済活動も継続しないといけないという使命があり、こうした在宅勤務は有効でしょう。さらに、業務に必要なシステムの開発など、新たな産業の創出につながる可能性もあります。今後、こうした動きが加速するとみられますが、中小企業など資金面で設備投資などが困難なところもあります。この動きを進めるために、国が態勢の支援をもっと推し進めるべきだと思います」
新型コロナウイルスの感染対策として、企業で進む在宅勤務の導入は、働き手の健康を守る予防はもちろんのこと、見方を変えてみれば私たちの暮らし方や働き方を見直すきっかけにもなるのではないでしょうか。

こうした取り組みが、今後もますます広がりそうです。