マツダは職人魂で生き残れるのか

マツダは職人魂で生き残れるのか
あなたは、マツダにどんなイメージを持っていますか?“世界でいちばん売れた2人乗り小型オープンカー”としてギネス記録にもなったロードスター。そして世界で初めて量産化に成功したロータリーエンジンを載せた車は、モーターファンをくぎづけにしました。そんなマツダは、実は世界シェアわずか2%の広島のスモールメーカー。AIや自動運転、EVなど最新技術を軸に自動車業界が大きく変わろうとしている今、“職人魂”にこだわるマツダは、果たして生き残ることができるのでしょうか。創立100年を迎えたマツダの今と、これからを考えます。(広島放送局記者 真方健太朗 後藤祐輔)

常識破りの製造ライン「混流生産」

広島県にあるマツダの本社工場を訪ねると、まず驚かされるのが生産ライン。大量生産を行う製造業の常識とは異なる姿が目に飛び込んできます。オープンカーのあとにSUV、その次はセダンなど1台ずつ異なる種類の車が次々とラインを流れてきます。

実はマツダは顧客がディーラーで注文をしてから車を生産する受注生産を行っています。注文の順番通りに車種や色が異なる車が同じラインを流れてきます。こうした方式は「混流生産」とか「少量多品種生産」と呼ばれています。
こちらは、ほかの自動車メーカーの工場。自動車工場では、生産ラインに車種や色が同じ車をまとめて流すのが一般的。アメリカが20世紀初頭に自動車の大量生産に成功して以来、こうした組み立て方が効率よく生産するための常識とされてきました。
混流生産は、注文後に組み立てるので在庫を抱えるリスクが少なく、1つのラインですむので投資が大幅に抑えられるというメリットがあります。一方でデメリットは、膨大な部品がある車作りでは、別々の車が流れてくると従業員の作業が複雑になることです。無理をするとラインが止まるおそれがあります。

このため車種が違っても、できるだけ部品を共通化したり、車のボディーを生産ラインに固定するのに使われるボルトの穴の位置を統一したりするなど設計段階から混流生産を意識した開発を行っています。
(垰森工場長)
「生産能力をフル活用しながら、台数を売ることができるオンリーワンの技術だと思います。一方で、作業に無理やムラが出てしまうおそれもあります。無理な作業は、品質を悪くするので、開発から生産までが一体となっていかに作りやすい車を作っていくかが大事です」

スモールメーカーはつらいよ

マツダがこの方法を取り入れているのは、会社の規模が小さかったから。車種ごとにラインを作るにはばく大な投資が必要で、その体力はありませんでした。
混流生産を本格的に始めたのは、1970年代のオイルショックの時。車を作ってもほとんど売れず在庫の山が積み上がったといいます。近年でも2008年のリーマンショックに伴う超円高に苦しめられました。1ドル=80円を下回る時期もあり輸出を行う製造業では工場の海外移転が加速しましたが、マツダは国内の工場を残すため、この生産方法を追求しピンチを乗り越えようとしたのです。

現場で工夫を重ねる“職人魂”

作業が複雑になる混流生産の課題を解決するため、工場では地道な工夫を積み重ねていました。ラインのそばで頻繁に動いていたのは、従業員ではなく自動で部品を運ぶ台車。赤いスポーツカーが流れてくればこの車の赤いドアが、白のセダンがくるとこれに対応した白いドアが従業員の後ろにぴたっと運ばれてきます。フロントガラスやハンドルも同様です。従業員が開発したこの台車のおかげでミスがなくなり作業時間の短縮にもつながりました。
(瀧口マネージャー)
「かなり効率的になっています。むだな動きが極端に少なくなったしオペレーターの作業負担もなくなっています」
こうした機器を生み出しているのが工場の一角にある「改善道場」。従業員が日々集まって作業を効率化するための研究を重ねています。ここで生まれた工夫を会社では「からくり」と呼んでいます。改善道場で生まれたからくりを、いくつか見せてもらいました。
社内のコンテストで最優秀賞をとった「定量とれるんジャー」は、手を差し出すだけでナットが決まった数だけ出てきます。数の間違いがなくなりスピードアップに成功。
「アッカンベー太郎」は、振り子のように動かすことで、マフラーに使うリング状の部品が、決まった数、飛び出します。こうしたからくりは工場におよそ130件。お金だけで解決するのではなく、従業員の知恵と工夫を積み重ねることで生産ラインを改善する「職人魂」を感じました。
(山本さん)
「みんなが親しみを込めていろんな改善をやっていくからくりを作っていくことが理想の姿だと思っています」

変革期をどう生き残る?

100年に1度の大変革期とも言われている自動車業界。自動運転や電動化、インターネットにつなぐコネクテッド技術など、いわゆる「CASE」への対応が迫られています。グーグルやアップルなど世界的なIT企業も自動運転の開発を加速させる中、マツダは、どのように生き残っていくのでしょうか。
キーワードは「得意分野に資源を集中」し「苦手分野は他社と協業」です。2017年にはトヨタ自動車と資本提携。トヨタはマツダが得意とする生産や開発の技術を学びたいとしていて、2021年には一度撤退したアメリカに、合同で新たな工場の操業を始めます。一方で、電気自動車などの苦手分野はトヨタなどと新会社を設立し海外勢に対抗していくことにしています。
(丸本社長)
「スモールプレイヤーのマツダが生き残るため、独自性や強みを生かし、トヨタをはじめさまざまな方と協力していきたい」
以前は、下取り価格が安いため大幅に値引きされているマツダの車にしか乗り換えられなくなる「マツダ地獄」と呼ばれる時代もありました。このため、ブランド力の向上に力を入れていてデザインを1つのスタイルに統一しています。車種が少ないスモールメーカーであることを逆手にとり、世界中の誰が見てもマツダ車だと認知してもらうための戦略です。
さらに去年、ほとんどの車の名前を会社名と数字の組み合わせにして国内外で統一しました。目指すのはドイツの「BMW」のようなオンリーワンの自動車メーカーだといいます。何度も会社に足を運んでいますが100年に1度の変革期に対して、大きな危機感を持っていると感じました。いかにしてオンリーワンのメーカーに変化していくのか、その進化を見続けていきたいと思います。
広島放送局記者
真方健太朗
平成23年入局。帯広局、高松局を経て現所属。広島の経済を取材。
広島放送局記者
後藤祐輔
平成24年入局。さいたま局、鹿児島局を経て現所属。経済や国際関連の取材を担当。