新型コロナウイルス 国内初の死者 専門家の受け止めは?

国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が死亡したことや、感染経路がはっきりとわからない感染者が出てきていることについて、感染症に詳しい専門家に聞きました。

濱田氏「致死率は決して高くなく冷静に受け止めを」

東京医科大学の濱田篤郎教授は、国内で初めて、新型コロナウイルスの感染者が死亡したことについて、「大変残念なことだが、ウイルスの感染力はかなり強いと思われるものの、いま分かっている致死率は決して高くはない。冷静に受け止めてほしい」と話しています。

また、感染経路がはっきりとわからない感染者が出てきていることについて「好ましくない事態だ。さかのぼってどこから感染したのか調査を行う必要がある。感染経路がたどれなくなれば国内で患者が次々に発生する状況になっている可能性も考えなければならない」と指摘しています。

そのうえで、感染を広げないことや、重症になるリスクのある人が医療を受けられるようにする必要があるとして、「不安に感じても、直接、病院に行くのはやめてもらいたい。厚生労働省のコールセンターやかかりつけ医、保健所などにあらかじめ電話して、受診する病院について指示を受けてほしい」と述べました。

そのうえで、「今の時点では、各地の医療施設で十分に対応できる態勢が完全に整っておらず、国や地方のレベルで医療態勢の整備を急がなければならない」として感染者が今後も出ることを前提にした対応を急ぐべきだという認識を示しました。

岡部氏「国内での感染拡大防止に重点移す必要」

川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「国内に一定程度の感染者がいることがわかってきたので、海外からの侵入を防ぐ対応から、国内での感染拡大を防ぐ対応に重点を移す必要がある。具体的には、気付かないところで感染が広がってしまうおそれがあるので、原因がわからない肺炎の患者などは、新型コロナウイルスの検査を実施することが必要だ。一方で、軽症の患者が指定医療機関に大勢入院してしまうと重症の患者が適切な医療を迅速に受けられなくなるおそれがあるので医療機関が連携し、重症化のリスクを判断しながら治療にあたっていくことが大切だ」と話していました。

工藤氏「病院内で手洗いや消毒など基本的な予防策の徹底を」

当時の国立国際医療センター国際感染症センターの元センター長の工藤宏一郎さんは、「いずれは国内でも死者が出るおそれがあるとは考えていたが実際に亡くなった人が出たことは残念だ。重症患者を救うには、早期の診断や治療が必要で、検査や診療の態勢の整備を急ぐ必要がある」と指摘しました。

また、現在、工藤さんが院長を務める東京の病院には、高齢者も多く訪れるということで、「高齢者を守るためにも院内で手洗いや手指の消毒といった基本的な予防策を徹底し、また、発熱などの症状がある人は、一般の患者と動線を分けるなどの対策を進めていく」と話していました。