お守りに“思わぬ災い”も

お守りに“思わぬ災い”も
車のフロントガラスにつけるお守り。吸盤が付いていて、見たことがあるという人も多いと思います。しかし、これが危ないというツイートが大きな反響を呼んでいます。なぜなのか。取材を進めると身近な暮らしの中に思わぬリスクがあることがわかってきました。
(ネットワーク報道部記者 郡義之 秋元宏美)

お守りで車検通らない!?

今月8日、ネット上にあるツイートが投稿され、話題となっています。
「良い子のみんな。フロントガラスにお守り貼ったらダメよ。車検通らないから」
お守りで車検が通らない?

そのツイートを記者が読み進めてみると、問題なのはお守りではなく、そこに付いている吸盤だというのです。

ツイートには「吸盤が光を集めて虫眼鏡で火を起こすような感じで車内が燃えるから」と書かれてありました。
このツイートは13日までに、1万2000件のリツイートがあり、「ほんと怖いです!!」「お守りの吸盤でダッシュボードを焦がした経験があります」といった声が相次ぎました。
投稿をした人にメールで連絡してみました。

投稿したのは福岡県に住む30歳の男性。
男性が勤務する自動車整備会社にはフロントガラスに吸盤でお守りなどをつけた車が車検に持ち込まれることが多くあるといいます。
男性は「知識として知ってほしくて、ツイートしました」と答えてくれました。

冬場の今が注意必要

どうして吸盤で火災が起きてしまうのか。
火災の予防対策に詳しい財団法人「市民防災研究所」の坂口隆夫理事長に話を聞きました。
「透明な吸盤が、太陽の光を1点に集め、光が集中したところが高温になります。このため、可燃物を発火させてしまうんです。これは、収れん火災といって、凸面鏡や虫眼鏡によるものと同じです」
坂口さんによりますと、この「収れん火災」では太陽の光が当たる角度などによっては光が当たった物が数十秒で発火してしまうこともあるといいます。
さらに話を聞くと、まさに今が注意が必要な時期だというんです。
坂口隆夫 市民防災研究所理事長
「意外かもしれませんが、夏場よりも冬場のほうが注意が必要なんです。冬場は太陽の位置が低く、太陽の光が車の後部座席のほうまで差し込み、収れん火災のリスクが高まります」
車内の「収れん火災」を防ぐ対策についても聞きました。
「お守りだけでなく日よけなどを取り付けるのに吸盤を使う場合は黒など色のついたものを使えば、太陽光を遮ることができ、火災を防げます。また、ペットボトルやめがねをダッシュボードや座席に置かれる人がいますが、これらも収れん火災を起こす原因になりますので、置きっ放しにしないことや、冬場でも窓に日よけをしておくといいと思います」

後部座席のシートが燃えた

さらに国民生活センターに吸盤が原因で車の中で「収れん火災」が起きたケースがあるのか取材しました。

発生件数はすぐにはわからないということでしたが、相談の事例については知ることができました。

「シルバーマークを吸盤で車窓に付けていたところ吸盤がレンズとなって後部座席のシートが燃えた」
「吸盤がレンズの役目をして遮光用カーテンのシートのあちこちを焦がした」などという相談が過去に寄せられたということです。

そもそもつけていいの?

取材を進めると、もう1つ疑問がでてきました。

紹介したツイートの中には、フロントガラスに吸盤のついたお守りをつけていると車検が通らないと書かれていました。

そもそもフロントガラスにつけてもいいのでしょうか。

国土交通省技術政策課の担当者に話を聞きました。

それによりますと、車のフロントガラスに吸盤のついたお守りなどを付けるのは運転の安全上、望ましくないといいます。

くわしく話を聞くと、道路運送車両法の保安基準でいわゆる、車検シールなど運転をするうえで必要なものはフロントガラスにつけることを認められています。

しかし運転に必要のないものはフロントガラスにつけてはいけないということです。

このため基本的にはフロントガラスに吸盤のついたお守りなどをつけることは認められていないといいます。

ただし、認められるケースもあります。

車の製造された年やお守りなどの大きさにもよりますが、フロントガラスの上から20%の範囲でかつ、吸盤の色が透明な場合であれば運転する人の視野を遮らないとして認められる可能性もあるということです。
国土交通省の担当者
「一概にダメとは言い切れませんが、運転する人の視野に入るところにぶら下がっていることは安全上、望ましくありません。お守りなどはできればダッシュボードなどに入れていただきたいです」

より安全なお守りを

では、神社や製造するメーカーではどうしているのか取材してみました。

いくつか電話で話を聞くと、フロントガラス以外の場所につけることができるお守りを取り入れた神社がありました。

岩手県奥州市の「陸中一宮 駒形神社」では、約4年前からカーエアコンの送風口に取り付けるお守りも授与しています。
山下明 宮司
「どういったタイプが参拝者に好まれるのかという最近のニーズだけでなく、何より安全運転のお守りなので、安全を守るために視界の邪魔にならないこと、収れん火災を防ぐことなどを考えて新しいタイプのお守りを導入しました。吸盤がいいという方もいらっしゃいますが、“こっちのほうが安全だよね”と、カーエアコンに取り付けるタイプも広まっていると感じています」

10年間で61件

東京消防庁は去年3月、「思わぬ場所・物から収れん火災が発生します」と注意喚起をうながす発表をしています。

東京都内では平成30年までの10年間で起きた「収れん火災」は61件。
このうち、約2割に当たる13件が1月に起きています。

さらに時間帯では、日ざしが強く、日の傾いている午後3時台が最も多いのです。
また、車以外の場所で火災が起きることもあるといいます。

去年1月、都内の共同住宅の1室でソファが燃えました。
消防が調べたところ複数の凹面がある三面鏡に部屋に差し込んだ太陽の光が反射してソファーに当たり、火事につながったことがわかりました。

「収れん火災」を引き起こした物としては、虫眼鏡や金属製ボウル、タイヤホイール、特殊形状のペットボトルなどもあります。

東京消防庁は「身近な暮らしの中に思わぬ火災のリスクがあるということを知るとともに日頃から意識するだけでも火災の予防につながる」と呼びかけています。