“水質”と“臭い”は改善されるか? 神津島の砂投入

“水質”と“臭い”は改善されるか? 神津島の砂投入
サラサラとした、きれいな白い砂。
伊豆諸島の神津島から東京 お台場に運ばれてきました。
この砂で、東京オリンピック・パラリンピックの会場となる海の水を浄化しようという取り組みが始まりました。
その効果はいかに?
(社会部 記者 内山裕幾)

お台場の海への砂投入

目の前にレインボーブリッジをのぞむ東京 お台場の海。
東京オリンピック・パラリンピックのトライアスロンなどの競技会場となります。
ここで、2月8日から、海底を神津島の砂で覆う作業が始まりました。島から船で運び込まれた大量の砂がショベルカーで海中に次々に投入されていきました。

“お台場”の水質問題とは?

この対策のきっかけは、去年8月に行われたテスト大会。
水質検査で、会場から国際競技団体が定める基準値の2倍を超える大腸菌が検出されました。
選手からも、水の濁りや臭いを指摘する声が上がり、会場の海を泳ぐ「スイム」が一時中止される事態となりました。

潜ってみると…

NHKの取材班が、先月、現地の海に潜って撮影した映像です。
海中は濁っていて、場所によっては、数十センチ先も見えなくなりました。
海底に手を入れると、黒っぽい泥のようなものが。
死んだ貝も複数見つかりました。

基準超える大腸菌が

東京都が2017年に会場周辺で行った水質調査では、国際競技団体が定める基準の最大21倍の大腸菌と、最大7倍のふん便性大腸菌群が検出されました。
特に、水温が高く、急な大雨が多い夏場は、発生のリスクが高まるといいます。

なぜ大腸菌?

そもそも、大腸菌が検出された理由は?
都によると、都内の下水処理の仕組みに一因があるといいます。
その仕組みは、生活排水や工場排水などを「雨水」と同じ下水道管を使って集める「合流式」という方式です。
この図のように、大雨が降って下水道管が容量を超えると、処理しきれない汚水がそのまま雨水と一緒に海に放流されます。
東京23区で、この「合流式」がとられている地域はおよそ8割。
雨天になると、この地域の汚水が、お台場のある東京湾に流れ込むのです。
東京都は、大会本番に向けて、水質の改善と臭いを取り除くため、下水の貯留施設などの整備に加え、さまざまな対策を打ち出しました。
1つが汚水の流入を防ぐ“3重のスクリーン”を張ること、もう1つが、“神津島の砂”で海底を覆うというものです。

対策1:スクリーン

まずは、スクリーンによる対策です。
都と大会組織委員会は、おととしの夏、会場内の一部エリアをスクリーンで囲い、汚水の流入を防ぐことができるか、実験しました。
その結果、実験した27日間のうち、大腸菌の水質基準を上回ったのはスクリーンのないエリアでは12日間だった一方、1重のスクリーンの内側は2日間でした。3重のスクリーンの内側は、すべての日で基準を下回りました。

この結果を踏まえて、去年8月のテスト大会では、1重のスクリーンを設けて、臨みました。
ところが、大腸菌は基準値を超えてしまったので、本番はスクリーンを3重にして臨むということです。

対策2:神津島の砂

さらに、水の浄化作用を期待して、神津島の砂を使って海底を覆うことにしました。
東京都港湾局に「なぜ神津島の砂なのか」と聞くと、砂をまいた場所に「貝」が住み着くことで、海中の栄養分が摂取され、水質が浄化される効果が期待できるということです。
また、もともとお台場の人工の砂浜には神津島の砂が使われていて、運搬のノウハウもあるということでした。
この砂の投入作業にかかる予算は6000万円。砂の量は10トントラックで1980杯分に上るということです。

都担当者と専門家に聞く~対策の効果は?

この2つの対策により、果たして競技会場の水質は改善されるのか。
東京都オリンピック・パラリンピック準備局の担当者と水質問題に詳しい専門家にそれぞれ話を聞きました。
競技・渉外担当課 矢嶋浩一課長
「運営側としては、覆砂を行うことは歓迎しているし浄化機能も期待していますが、砂をまいても汚水を完全にシャットアウトすることはできません。大会運営上の課題となる大腸菌の減少に直接効果がある対策でなく、長期的な視野に立ったうえでの効果を見込める施策だと考えています。汚水の流入防止策としては、スクリーンを“3重”にすることで、課題をクリアしたいと思います」
沿岸環境学が専門 東京大学 鯉渕幸生准教授
「これらの対策では、処理施設からの汚染源の流入を防ぐことはできないし、砂による浄化作用が本当にあるのかは、効果を測定しないと分かりません。スクリーンについても、東京湾は潮の干満の差が2メートルと大きく、汚水がスクリーンを通過して入ってくるのを完全に防ぐことは難しい。3重のスクリーンや神津島の砂の効果について、効果を検証していく必要があります」
現地に行くと、確かに会場周辺はレインボーブリッジや都心に立ち並ぶ超高層ビルが一望できるすばらしい景観です。
ただ、肝心な水質が今のままでは、とてもアスリートファーストとはいえません。
大会まで残りの期間で、最大限、競技環境を整える努力を続けてほしいと思います。
社会部 記者
内山裕幾