つかめ!“隠れたバイク需要”

つかめ!“隠れたバイク需要”
突然ですが、最近、バイクに乗りましたか?四季折々の風景の中、風を切って走るライダーは実に気持ちよさそうです。ただ、国内のバイク市場は減少傾向に歯止めがかかっていません。なんとか業界を再び盛り上げられないか。メーカーなどは“隠れたバイク需要”を取り込もうと、新しい取り組みを進めています。(経済部記者 佐々木悠介)

日本メーカーの存在感と裏腹に

日本のバイクメーカー4社(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)を合わせると、販売台数は約2800万台(2018年)。世界全体で販売されているバイクが5700万台余りなので、そのほぼ半分。日本勢の存在感は高いんです。
一方で、国内の販売台数は減少傾向が続いています。全盛期の1982年に327万台だった国内販売は、今では37万台。10分の1近くまで減っています。背景には若者のバイク離れや気軽にバイクを止められる駐輪場の不足などが指摘されています。

バイクも“○○放題”

“隠れたバイク需要”を掘り起こせないか。ヤマハ発動機が埼玉県川口市のバイク店と提携して去年5月から始めたのが、サブスク=サブスクリプション・サービスの実証実験です。音楽や動画などで普及している「聞き放題」や「見放題」の定額制のサービスを、バイクで始めたのです。
バイク店に足を運んでみると、ミニバイクやスポーツタイプのバイクなど幅広い種類のバイクがずらりと並んでいました。取り扱っている数は100台以上。しかも、ヤマハだけでなく、ホンダやスズキなど、ライバルメーカーのバイクも置いてあります。国内のあらゆるバイクを取り扱うことで、少しでもバイクに興味のある人をひきつけようという戦略です。

購入のハードルを低く

気になる料金は、車両価格と保険料などの諸経費を含めた総額の7.5%ほど。たとえば排気量250ccの50万円のスポーツタイプのバイク(中古)であれば、月額3万7500円になります。バイクに乗らない私は正直、少し高いという気もしましたが、好きな時に好きなだけ乗れるほか、1か月ごとに好きな車種に乗り換えることもできます。気に入ればそのまま買い取ることもできるということです。これまでの9か月で契約者は100人以上。予想を上回る状況だと言います。

意外なターゲットも

サブスクのターゲットは、何より「リターンライダー」。若いころにバイクに乗っていたけれど、結婚や子育てなどの間にバイクを手放した人たちです。「子育ても落ち着き、再び趣味のバイクを気軽に楽しみたい」。そうした大人のライダーを呼び込むことをねらっています。実際、契約者の6割はリターンライダーだそうです。ただ、ターゲットはそれだけではないんです。
(深見さん)
「実は、二輪免許を取った人の4分の1は、レンタルも含めてバイクに乗ったことがないというデータがあるんです」
ええ!?では何のために免許を取ったのでしょうか。ヤマハが調べてみると、「免許は取ってみたものの、購入するには高い」「車検など、維持が大変」といった声が根強いことが分かったのです。「ならば手軽に利用できる仕組みを」と、サブスクに踏み切ったのです。会社は、さいたま市以外へのサービス拡大も検討しています。
(深見さん)
「“バイクに乗りたいけど買いたくない”。そんな方々がまだまだたくさんいると感じています。そうした人に新しいサービスを届けられれば、しっかりとしたビジネスとして成立すると思っています」

バイクをシェア!

愛好家だけでなく、バイクの利用そのもののすそ野を広げようという取り組みも出てきています。ソフトバンクなどが出資するベンチャー企業のオープンストリートは、ミニバイクのシェアリング事業を去年9月から都内や埼玉県で始めました。現在は5か所にステーションがあり、屋根のついたホンダ製のミニバイクを借りられます。借りたところとは別のステーションに返すこともできます。

スマホで手軽に

シェアリングの特徴は、その手軽さ。予約から返却までスマホのアプリ1つで完結します。まずアプリで予約したいバイクを選びます。そして、スマホをバイク後部の荷物入れに近づけると、無線通信によってトランクが開きます。中には、ヘルメットや鍵が入っていて、衛生上の観点から、頭を覆うネットも付いています。料金は、保険料やガソリン代も含めて、月額1000円。加えて、15分ごとに160円かかります。

同じ地域をぐるぐる

この会社は、バイクに先立って、4年前から全国2500か所で自転車のシェアリング事業を手がけてきました。当初は1回の利用で4キロ以下の移動を想定していましたが、自転車の位置情報を分析したとろ、1回の利用で10キロ以上利用している客が予想より多くいることがわかりました。
単に片道10キロを移動したのではなく、同じ地域をぐるぐると回っていた例もあったと言います。こうした傾向から、観光などのサイクリングだけでなく、食べ物の配達や介護などの訪問サービスに使われているのではないかと分析。屋根や荷物入れがあるミニバイクに需要があると考えたのです。
(横井社長)
「移動手段が多様化するなか、ユーザーのニーズも多様化している。今後どういった地域でどんな需要があるかも含めて分析をすすめていきたい」

なるか人気復活

今回取材した取り組みはいずれもまだ緒に就いた段階。しっかり根づくまでには時間がかかるでしょう。ただ、かつての愛好家の再獲得や新たな愛好家づくり。そして、空いた時間に料理の配達を行うといった、新たな働き方に対応した利用に応える仕組みづくり。そういった取り組みを業界を挙げて進めることが、人気復活に向けた欠かせないカギになることは間違いなさそうだと感じます。
経済部記者
佐々木 悠介
平成26年入局
静岡局、浜松支局を経て
現在自動車業界を担当