入国拒否 浙江省に滞在歴のある外国人などにも拡大へ

入国拒否 浙江省に滞在歴のある外国人などにも拡大へ
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、安倍総理大臣は、12日朝開かれた政府の対策本部で、入国を拒否する対象を、中国・湖北省に加え、感染が広がっている浙江省に滞在歴のある外国人などにも拡大する方針を明らかにしました。
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府は今月1日から、入国申請前の14日以内に中国・湖北省に滞在歴がある外国人と、湖北省で発行されたパスポートを所持する外国人について、特段の事情がないかぎり、入国を拒否する措置を実施しています。

これについて、安倍総理大臣は12日朝、総理大臣官邸で開かれた対策本部の会合で「事態は時々刻々と変化しており、中国での感染者数の拡大や、感染症が発生しているおそれのある旅客船が、今後もわが国に来航する可能性を踏まえれば、より包括的かつ機動的な水際対策を講じることが不可欠だ」と述べました。

そのうえで、入国拒否の対象とする地域を感染が広がっている浙江省にも拡大し、13日午前0時から実施する方針を明らかにしました。

また、安倍総理大臣は、集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客と乗員を対象とするウイルス検査について、地方や民間の検査機関にも協力を依頼するなどして、最大で1日当たり300件程度とされる検査能力を、1000件以上の実施が可能となるよう体制の拡充を図る方針を示しました。

さらに、国内の感染状況の把握を徹底する必要があるとして、症状のある患者に対しては、自治体の判断で検査を実施できるよう関係者への周知を図る方針も示しました。

浙江省 湖北省との経済交流活発

中国東部の浙江省は人口およそ5700万で、地元の衛生当局によりますと、新型のコロナウイルスへの感染者が11日までに1131人となっています。中国国内では湖北省と南部の広東省、内陸部の河南省に続いて4番目に多くなっています。

浙江省の観光当局によりますと、去年、省内の旅行会社が手配して日本に旅行した人は延べ68万5000人で、日本が海外の旅行先として最も多かったということです。

また、浙江省の中心都市、杭州には中国のネット通販最大手「アリババ」の本社があるなど、IT関連の企業などが集まっています。

浙江省にはパナソニックや東芝など多くの日系企業が拠点を置き、その数はおよそ500社に上るとみられています。

浙江省には日本企業3344社が進出

外務省のまとめによりますと、中国東部にある浙江省には2018年10月の時点で、3344社の日本企業が進出しています。

ジェトロ=日本貿易振興機構によりますと、浙江省の中心都市・杭州にはパナソニックや東芝、旭化成などの関連会社のほか、金融機関の支店なども進出しています。

また、杭州は、IT関連のビジネスが盛んで、中国のネット通販最大手「アリババ」の本社があるほか外資系の企業も集積しているということです。

浙江省の感染者 4割以上確認の都市 温州

浙江省全体の4割以上にあたる481人の感染が確認されているのが、湖北省武漢からおよそ700キロ離れた東シナ海に面する人口およそ925万人の都市、温州です。

温州市当局は生活に必要な物資の買い物などの外出について、2日に1回、1世帯につき1人だけに制限するなど、感染拡大の防止で厳しい措置をとっています。

温州の企業家は中国各地で活発な経済活動を行う「温州商人」として知られ、中国メディアによりますと、武漢にはおよそ18万人の「温州商人」が滞在し、先月下旬の旧正月「春節」前には、このうちおよそ2万人が武漢から温州に戻っていたということです。

また温州には、湖北省から出稼ぎなどで来た人もおよそ30万人以上いるということです。

温州で確認されている感染者の数は湖北省以外の中国国内の都市の中で最も多くなっていて、中国当局が人の移動を制限する前に経済活動などを通じて感染者が流入したことが、温州を中心とした浙江省で感染が拡大した原因になったと見られています。

官房長官 「状況注視 適切な対応を」

菅官房長官は午前の記者会見で、入国拒否の対象を浙江省にも広げたことについて、「浙江省は新型コロナウイルスの感染症の感染が拡大していること、さらに同省の主要都市である温州市で移動制限措置が講じられていること、さらに現地の医療体制の状況を総合的に勘案した結果として、上陸を拒否する判断をした」と述べました。

そのうえで、浙江省の状況について、「温州市は武漢市とは状況が異なっており、現時点で邦人が自分の意思で移動できない状況にあるとは認識していない。政府としては、邦人の安全確保の観点から現地の状況を引き続き注視し、在留邦人や関係者に情報共有を行っていくとともに、適切な対応を不断に検討していきたい」と述べました。

入国拒否 閣議了解を経ずに可能に

政府は、新型コロナウイルスの感染が拡大していることから、湖北省や浙江省以外でも感染が拡大している地域があれば、そこに滞在歴がある外国人や新たに感染者がいる疑いのあるクルーズ船があれば、その外国人の乗客らを閣議了解を経ずに入国を拒否できる措置を取りました。

出入国在留管理庁は「出入国管理法を適用する対象についての規定を見直すことで、今後は閣議了解を経ずに政府の対策本部において必要なときに迅速に適応できるようになった」としています。

立民 枝野代表「政府一体の状況になっていない」

立憲民主党の枝野代表は、党の常任幹事会で、「まだまだ政府が一体となり、総力を挙げているという状況になっていないのではないか。残念だ。クルーズ船やチャーター機への対応は、自然災害の際の避難所対応などにも類似したところがある。政府を挙げて全力で進めていただきたい」と述べました。

国民 玉木代表「不安解消や観光対策を提言したい」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「地方空港での中国便の欠航など、地域経済に大きな影響が出始めている。国内のメーカーにマスクの増産を依頼したにもかかわらず、店頭に並んでいないということは対策がうまくいっていないのではないか。国民の不安解消や観光への影響の対策を政府に提言したい」と述べました。

公明 石田政調会長「雇用調整助成金の活用を」

公明党の石田政務調査会長は記者会見で「政府は今週14日に予備費を活用した対策をまとめると思うが、経済的な影響も出てくる。特に観光業では、予約のキャンセルが相次ぐと雇っている人に休んでもらわなければならない。そうした時のために雇用調整助成金の運用基準を緩和し活用することも検討すべきだ」と述べました。

維新 馬場幹事長「超党派による協議会を」

日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で、「クルーズ船については、本来は最初の段階で乗客ら全員の検査をしておくべきだった。中途半端な対応が今のような状況を招いていると思う。1分1秒を争う状況なので、超党派による協議会を設置し、対応すべきだ」と述べました。

成田空港に周知文掲示

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、入国を拒否する対象を中国・浙江省に滞在歴のある外国人などにも拡大する措置が13日から取られるのに合わせて、成田空港の入国審査場では該当する人は審査官に申し出るよう呼びかける周知文が掲示されました。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府は、今月1日から、入国申請前の14日以内に湖北省に滞在歴がある外国人と湖北省で発行されたパスポートを所持する外国人について特段の事情がないかぎり入国を拒否する措置を実施しています。

これに加えて13日午前0時からは感染が広がっている浙江省にも措置を拡大することになり、成田空港の入国審査場では、出入国在留管理庁の職員がこの14日以内に湖北省や浙江省に滞在したことのある外国人は入国審査官に申し出るよう、日本語、中国語、それに英語で書かれた新たな周知文を貼りだして掲示していました。

成田空港では、浙江省の中心都市、杭州との間を結ぶ直行便が往復で週に11便運航されていたほか、浙江省の寧波との間を結ぶ直行便が往復で週に7便運航されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でこれまでにいずれも運休となっています。