北京 上海では通勤ラッシュ見られず 中国で企業活動再開

北京 上海では通勤ラッシュ見られず 中国で企業活動再開
新型のコロナウイルスの感染拡大が続く中国では、患者の数が4万人以上に達し、死亡した人も900人を超えました。中国では、10日から北京や上海などで企業活動が再開されましたが、朝の通勤客は、通常と比べて少なく本格的な活動再開にはまだ時間がかかる見通しです。
中国の保健当局、国家衛生健康委員会は、新型のコロナウイルスの感染が確認された患者の数が、9日、さらに3000人以上増え、4万171人に達したと発表しました。また死亡した人は、湖北省を中心に9日さらに97人増えて、中国での死者は908人となりました。

中国では、旧正月「春節」の連休が終わったあとも、上海などで企業の活動再開が延期されたほか、北京でも在宅での勤務が求められていましたが、10日から、ほぼ半月ぶりに各地で活動が再開されました。

ただ北京や上海のオフィス街では、通勤時間帯に、バスや地下鉄を利用して出勤する人や道路を走る車の数は先週よりやや増えたものの、通常に比べるとひときわ少なく、通勤ラッシュも見られませんでした。

帰省先から都市部に戻っていない人も多くいるとみられるほか、企業の中には、在宅勤務を続けるといった対策をとるところもあり、本格的な企業活動の再開にはまだ時間がかかる見通しです。

広東省 工場再開も人手不足

中国では10日から各地で企業活動が再開されていますが、南部 広東省の工場では、交通規制の影響で戻ってくる従業員が少ないことや、今後の材料の確保などについて懸念の声が聞かれました。

世界の工場とも言われる広東省では、10日から企業活動の再開が認められ、広州にある釣り具の地元メーカーでは入り口で従業員の体温をはかり、手を消毒したあと、春節明けにこの1年の商売繁盛を願って爆竹を鳴らす儀式をマスク姿で行っていました。

この会社は製品の6割以上を日本向けに輸出していて、従業員は通常でおよそ100人います。

しかし、春節明けは例年、従業員が減少することに加えて、ことしは新型コロナウイルスの感染を防ぐため各地で交通規制が行われていることから、出社したのは30人余りにとどまっています。このため、ふだんは事務作業などをしている従業員も生産ラインに加わっていました。

また、感染が深刻な湖北省が地元の従業員は、出社のめどがたたないため、社長の王怒冰さんはテレビ電話を通じて、家族の体調や生活ぶりを確認していました。

当面の材料の在庫はあるものの、交通規制で物流が滞っているほか、サプライヤーがまだ操業を再開できていないため、今後の材料が確保できるか懸念しているということで、納品先と相談しているということです。

さらにこの会社は去年、米中貿易摩擦の影響でアメリカ向けの製品の関税が引き上げられ、利益が圧迫されていたところに、今回の新型コロナウイルスの問題が出て頭を痛めています。

王怒冰社長は「2003年の新型肺炎=SARSも体験したが、今回も大変だ。中小企業にとっては厳しいが、従業員に感染者を出さないよう気をつけながら頑張っていきたい」と話していました。

日本企業の現地法人も

日本の物流大手の現地法人も北京首都空港の近くにあるオフィスでの業務を10日から再開しました。ただ会社で感染が拡大する事態を防ぐため、従業員の出社は最小限に抑えているということです。ふだんはおよそ100人が働いていますが、10日出社したのは3割程度にとどまりました。出社したのは管理部門が中心で、営業などの部門では大半が在宅での勤務を続けているということです。

オフィスの入り口には手に使う消毒液を置いているほか、靴の消毒のため、消毒液をしみこませたマットを敷いています。また出社した従業員には体温の測定を義務づけています。

このオフィスでは主に北京に到着した航空貨物を扱っていますが、ドライバーなど人員の確保が課題となっています。春節の休暇で帰省したドライバーがまだ職場に戻ることができていなかったり、一定期間、自宅待機を求められたりしていて、確保できているドライバーは通常の半分程度にとどまっているということです。

「日通国際物流(中国)」の橋詰博敏統括部長は「社員の健康に留意しつつ、どう通常の出勤体制を確立していくのかが大きな課題だ。また物流の停滞は社会にとっても大きな問題であり、われわれがどういう解決策を提供できるのか、努力していきたい」と話していました。