新型ウイルス 中国 10日から企業活動再開予定も…

新型ウイルス 中国 10日から企業活動再開予定も…
中国では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で停止されていた企業活動が10日から多くの地域で再開されるのを前に、上海や広東省など、各地の政府が企業への支援策を相次いで打ち出し、感染拡大が経済に及ぼす影響を最小限にしたいとする姿勢を強調しています。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中国では、これまでに感染が確認された患者の数は、3万4546人、死者は722人に上っています。

感染の拡大を防ごうと、北京や上海、それに製造業が集積する広東省などでは、先月24日から始まった旧正月「春節」の連休が明けたあとも9日まで、企業活動の停止や在宅勤務を求める措置がとられていて、多くの企業は、10日から活動を再開するものとみられます。

企業活動の再開を前に、上海市政府は8日、地元の企業に対して、資金繰りに問題が出ないよう融資を受けやすくすることや、税を優遇することなど、支援策を発表しました。

また、上海以外にも広東省など各地方政府が企業への支援策を相次いで打ち出していて、感染拡大が経済に及ぼす影響を最小限に抑えようとする姿勢を強調しています。

ただ、各地で交通手段の制限が依然として続いていることなどから、帰省先から勤め先のある都市部に戻ることができていない人も多いとみられ、工場の操業やオフィスの業務が全面的に再開するには、しばらく時間がかかるという見方も出ています。

交通手段制限で人手確保が課題

中国では各地で10日から、企業活動が再開される予定となっていますが、交通手段が制限されていることなどから、勤め先のある都市部に戻ることができていない人も多いとみられ、工場の操業やオフィスの業務再開に向けて人手の確保が課題となっています。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国では旧正月「春節」の連休以降、各地を結ぶ長距離バスの運行見合わせや、鉄道の減便などさまざまな交通手段が制限されています。

中国の交通当局によりますと、春節の休暇を帰省先などで過ごした人たちがUターンする時期の鉄道やバス、航空機などの旅客数は、4億人前後と去年を70%程度下回る見通しです。

このため、地方に帰省した人の中には、まだ、勤め先のある都市部に戻っていない人も多くいるとみられます。

さらに、地域によっては、感染拡大を防止する対策の一環として、他の地域から戻った人に対して、一定期間は出勤せず、自宅に待機するよう求めているところもあり、人手が十分に確保できないおそれが出ています。

JETRO所長「当面は辛抱と我慢の状況続く」

中国各地で延期されていた企業活動の再開が10日から予定されていることについて、多くの日系企業が進出する広東省に拠点を置くJETRO=日本貿易振興機構広州事務所の清水顕司所長は、企業の従業員の確保が難しいことなどから、当面は厳しい状況が続くとしています。

広東省は自動車やスマートフォンなどの産業が集積し、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車をはじめ、多くの日系企業が進出していて、JETRO広州事務所の清水所長は、企業活動の再開について「再開はできると思うがすぐにフル稼働はできず、徐々に生産回復を図るだろう。企業によっては1週間、再開を延期させるところも出ている」と述べています。

そのうえで「人の動きが制限されているため従業員が元に戻るには時間がかかる。マスクや消毒液の確保が難しく、マスクがなければ操業できない場所もあり、企業から懸念の声が出ている。さらに物流が制限されているため供給網の確保も課題だ」と述べ、全面的な活動再開には多くの課題が残されていると指摘しています。

また「自動車部品の供給網が湖北省と広東省の間にできていて、湖北省が大きな影響を受けているので今後の供給網への影響が非常に懸念される」と述べ自動車産業に大きな影響が出る可能性があると分析しています。

さらに、今後の見通しについては「生産や販売の停止がこれ以上続くと、売り上げに直結するので非常に厳しくなる。今後の見極めは非常に難しく、当面は辛抱と我慢の状況が続くだろう」と述べています。

北京は「会食禁止」 飲食業界にさらなる打撃

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、北京では多くの飲食店で営業が再開できない状況が続いています。

北京市当局は今月5日、感染拡大を防ぐための措置として市民に対して、飲食店などでグループで食事することを禁止し店側に対しても、すでに入っている予約を速やかに取り消すよう指示する通達を出しました。

北京にある串焼き料理店の従業員は「新型コロナウイルスの感染が各地に拡大していて、影響がとても大きい」と話していました。

北京では、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店の間で休業の動きが広がっていましたが、通達を受けて今月中の営業再開を断念する店も出ていて、飲食業界にとってさらなる打撃となるおそれがあります。

通知に従わず業務の企業の処罰も

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、中国各地で9日まで企業活動の停止や在宅勤務を求める通知が出されるなか、通知に従わずに業務を行ったとして処罰される企業も出ています。

江蘇省南通市、通州区の警察のSNS上の発表によりますと、今月1日、地元の紡績工場に勤める3人の従業員が倉庫で業務を行って当局の通知に違反したとして工場の責任者に対して、5日間の行政拘留を科しました。

処罰された工場の責任者は、地元当局の通知は知っていたものの、休みに入る前の仕事が終わらなかったため一部の従業員を呼び出したということです。

ただ、この警察の発表は、その後、ネット上で削除されていて、地元当局の関係者は「警察の発表は事実だが、出勤させた人数が少ないなど摘発はやや行きすぎとも言える。このところ人々の議論を呼ぶものはすぐにネット上から削除される」と説明し、当局としても、行き過ぎた対応は企業や世論の反発を招くおそれがあるとして神経質になっていることがうかがえます。

学校の授業再開は10日以降も

中国の学校では、生徒や教職員への感染を防ごうと、各地で企業活動が再開される10日以降も授業を再開できない状況が続きます。

このうち上海では、市の教育当局が今月いっぱい授業を再開させないことを決め、日本人学校も今月16日までの予定だった連休を、来月1日まで延長することにしています。

また北京をはじめ、ほかの多くの地域でも学校の再開は早くても今月17日以降だとしていて、市民生活への影響が大きくなっています。