関西財界セミナー 新型肺炎で今後の企業業績に懸念の声

関西財界セミナー 新型肺炎で今後の企業業績に懸念の声
関西の企業経営者らが一堂に会する関西財界セミナーが、6日から京都市で始まり、新型コロナウイルスが企業業績に及ぼす影響について懸念の声が聞かれました。
関経連=関西経済連合会と関西経済同友会が開く関西財界セミナーには、企業経営者などおよそ670人が参加しました。

中国とのビジネスについて話し合う分科会の中で、関経連の松本正義会長は、新型コロナウイルスの感染が拡大していることについて「関西企業は、中国と東南アジアでのビジネスのシェアが高く、各社の決算に及ぼす影響が心配だ」と述べました。

また、中国に60以上の事業所を構える大阪に本社がある段ボールメーカー、レンゴーの大坪清会長兼社長は「中国企業による牛乳や薬の生産工場は操業が続いていて、包装パッケージを作る自分たちの工場は稼働を続けている」と現地の現状を説明しました。

そのうえで、大坪会長は「運ぶための手段が不足している状況だ」と述べ、物流網がうまく機能していないという認識を示しました。

分科会では、中国に詳しい経済評論家の津上俊哉氏が、中国経済の現状を説明し「中国では今後、2次産業と3次産業の業績が急速に落ち、中国経済に大きな打撃が降りかかると覚悟しておいたほうがいい」と警告しました。

関西財界セミナーは、7日まで開かれます。

武漢に拠点を持つ企業の声

セミナーには、中国の武漢に工場や拠点を持つ企業の経営者も参加しました。

このうち、大阪の鉄鋼メーカー、丸一鋼管は武漢で主に自動車向けの金属パイプなどを生産する工場を稼働させています。

丸一鋼管の鈴木博之会長兼CEOは「今回は長期化しそうだが、武漢の経済発展の勢いはすさまじく、勢いはまた戻るものだと考えている。ただ、工場の休止期間が延びた場合、現地の従業員が転職してしまうのではないかと懸念しているが、実際に工場が稼働し始めないとどうなるかわからない状況だ」と話していました。
また、大阪に本社がある大手空調メーカーのダイキンは、武漢に業務用空調機器の生産工場を持っています。

ダイキンの植松弘成監査役は「現地の駐在員やスタッフから情報は入ってくるが、詳しい状況を把握しきれていない。特に、部品がきちんと入ってくるのかどうかについて、あらゆる可能性を洗い出して、対策を検討しているところだ」と話していました。

大阪 リーガロイヤルホテル 影響と懸念

関西で最大規模の1000余りの客室がある大阪のリーガロイヤルホテルは、去年6月のG20大阪サミットで各国要人の宿泊施設としても使われ、海外からも多くの人が宿泊します。

宿泊客のうち中国人の利用者は全体の1割ほどですが新型コロナウイルスの感染拡大に伴って中国からの団体旅行が中止された先月27日以降、予約のキャンセルが相次いだということです。

ホテルを運営するロイヤルホテルの蔭山秀一社長は「2月、3月は、これから固まってくると思っていた宿泊がキャンセルになった」と述べ、今月以降の予約にも影響が出ていることを明らかにしました。

ホテルでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためフロントを含めたすべての従業員がマスクを着用して対応しています。また、エレベーターのボタンやドアの手すりなど宿泊客が手に触れる部分は従業員が徹底して消毒します。チェックアウト後の部屋の清掃ではテレビのリモコンや電話の受話器なども細かく消毒するため一部屋当たり5分ほど追加で時間がかかっているということです。

ホテル業界にとって予約のキャンセルに加えて新たな懸念も浮上しています。それは宿泊料金の水準が下がることです。予約がキャンセルとなったほかのホテルが客を確保しようと宿泊料金を下げた場合、値下げ競争が激しくなり、ホテルの収入減少につながるおそれがあるというのです。

蔭山社長は「客室単価の引き下げから始まり、今度はホテルの稼働率が下がってくる。予約の取り合いになれば価格の引き下げ合戦になり、関西のホテル業界にとって非常に厳しい環境だ」と述べ、懸念を示しました。

バス会社で深刻な影響

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、中国からのインバウンド需要を取り込んできたバス会社では深刻な影響が出始めています。

大阪・堺市に営業所を置くバス会社では海外からの観光客向けに主に東京・大阪間でツアーバスを運行していて、乗客の多くは中国からの団体客で全体のおよそ80%を占めています。

今月の予約も中国の団体客で80%ほど埋まっていたということですが、中国政府が海外への団体旅行を中止にしたことで状況が一変、予約はすべてキャンセルされたといいます。

本来ならば、フル回転で動かしていた23台の観光バスは駐車場に止まったまま。仕事がないため25人の運転手は自宅で待機してもらっています。売り上げが見込めない中、このままでは人件費やバスのリース料など固定費の支払いもできなくなるとして会社は、給料の削減のほか早期退職の希望者を募ることになりました。

6日は営業所で運転手を集めた説明会が開かれ、本社から訪れた社長が2月分の基本給を2割カットすることを伝え理解を求めていました。

さらに今月中の退職を希望する場合は慰労金として10万円を支給することが伝えられ、運転手からは「退職するかどうかすぐには決められない」とか「営業所の閉鎖は考えているのか」などと不安の声が上がっていました。

30代の運転手の男性は「突然のことで自分の中でなかなか整理がつきません。家に帰って妻と相談したいと思います」と話していました。また50代の男性は「厳しい現状を考えると給料カットも我慢するしかないのかなと考えています。早く終息して、観光客が戻ってくるのを待つしかないです」と話していました。

バス会社の「家康コーポレーション」の海江田司社長は「会社は従業員と運命共同体だと思っていますがきょうは断腸の思いで伝えました。中国以外の団体客を獲得できるよう営業に力を入れ、苦境を乗り越えたい」と話していました。