新型肺炎 厚労省が検査対象拡大を通知 医療機関側は対応に苦慮

新型肺炎 厚労省が検査対象拡大を通知 医療機関側は対応に苦慮
国内で新型コロナウイルスの検査対象にならなかった人から相次いで感染が確認されたことを受けて、厚生労働省は対象を拡大し、全国の自治体に通知しました。それでも検査対象にはあたらないものの、感染の疑いがぬぐいきれない患者が受診するケースがあり、医療機関は対応に苦慮しています。
新型コロナウイルスの検査を行う対象について、厚生労働省は37度5分以上の発熱と肺炎を疑わせる呼吸器症状があり、2週間以内に武漢市を含む湖北省への渡航歴があるか、湖北省に滞在した人と濃厚接触した人まで含めるよう広げました。

こうした中、対象には当たらないものの、感染の疑いをぬぐいきれない患者が受診して、医療機関が対応に苦慮するケースが出ています。

このうち、千葉市にある内科などの診療所では、先月29日、空港で仕事をしている男性がレントゲン検査などの結果、肺炎と診断されました。

医師は、抗菌薬など通常、肺炎で使われる治療薬を処方しましたが、効果はみられず、症状が悪化しました。

患者の男性は、外国人旅行客と接触する機会もあるため、医師は、新型コロナウイルスへの感染の疑いもあるとして、検査ができないか、今月3日に保健所に問い合わせましたが、国が定める検査対象にはあたらないとして、対応を断られたということです。
診療所の河内文雄医師は、「経過が通常の肺炎とは異なり、勤務環境からも新型コロナウイルスへの感染の疑いがあると判断したが、保健所は『武漢や湖北省との接点がない』との一点張りで対応してくれなかった。こうしたケースは多くあると思われ、放置していたら、今後、感染が拡大するのではないかと心配している」と話していました。

協力要請された病院も対応に苦慮

厚生労働省は、新型コロナウイルスへの感染の疑いがある人専用の外来窓口を全国の主要な医療機関に設置するとしていますが、協力を要請された医療機関からは、対応するための病室が足りないなどと、戸惑う声が上がっています。

厚生労働省は、今月上旬をめどに新型コロナウイルスへの感染の疑いがある人専用の「帰国者・接触者外来」を住民の生活圏となる「二次医療圏」に1か所以上設置するとしています。

これを受けて、東京都では、患者が増えたときに備えて、およそ80の医療機関に対し協力を求めていて、今週末にも調整を終えたいとしています。

しかし、東京都からの要請を受けた医療機関の一つで、多摩市にある日本医科大学多摩永山病院は、都の「感染症診療協力医療機関」に指定されていますが、新型コロナウイルスへの感染が疑われる患者について受け入れられる態勢をすぐに整えるのは難しいとしています。

病院では、感染の疑いがある人がほかの患者と接触せずに受診でき、空気が外に流れ出さないようにした専用の診察室はあるものの、3床ある専用の病室はほかの感染症の患者でいっぱいになっています。

また、およそ400床ある通常の病室も9割が埋まっていて、感染しているかどうか検査結果がわかるまで待機してもらう部屋を確保するのも難しいとしています。
中井章人院長は、「病院で感染の疑いがある患者を拒否することはないが、検査の結果が出るまでにどのくらい時間がかかるのか十分な情報がないし、実際に患者を留め置く病室が空いていないので、対応に苦慮している」と話しています。

専門家「行政と地域の医療機関全体で情報共有を」

感染症の予防対策に詳しい、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、感染の疑いがぬぐいきれない患者の検査が行われないケースについて、「保健所が国の指示に厳密に従って検査していることは理解できるが、今後、湖北省との接点がない人での感染が増えると、検査の対象からもれる人も出てくる。医師が判断して、感染の疑いがぬぐいきれない人については危機管理の面からも検査することが望ましく、民間の検査センターなどと連携して検査できるようにすることが必要だ」と話していました。

また、新型コロナウイルスへの感染の疑いがある人に対応する医療について、2009年に当時、新型と呼ばれたインフルエンザの感染が広がったときには感染症の指定医療機関でも、対応できる医師や病床などの設備が不足したとしたうえで、「重症の患者は高度な治療が受けられる医療機関に、軽症の患者は、地域の医療機関で受け入れるといった診療体制を地域全体で構築することが重要だ。それぞれの医療機関で、どの程度の症状の患者を何人受け入れられるかといった情報を行政と地域の医療機関全体で共有して対応する必要がある」と指摘しています。