テーマは「偉大なアメリカの再起」トランプ大統領一般教書演説

テーマは「偉大なアメリカの再起」トランプ大統領一般教書演説
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アメリカのトランプ大統領は、この1年の施政方針を示す一般教書演説を行い、「偉大なアメリカの再起」をテーマに内政や外交・安全保障でみずからの実績を最大限アピールしました。秋の大統領選挙での再選に向けて幅広い支持を訴えたい思惑があるとみられますが、野党・民主党との深刻な対立が随所で浮き彫りとなりました。
トランプ大統領は4日夜、今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行いました。

政権4年目となる、ことしの演説のテーマは「偉大なアメリカの再起」で、トランプ大統領は「われわれはたった3年間でアメリカの衰退を打ち砕き、少し前には想像できなかった速度で前進している。決して後戻りすることはない」と訴えました。

さらに、みずからの力で経済を復活させたとして好調な雇用環境を強調し、中国との貿易交渉で第1段階の合意に達したことをアピールしたほか、選挙で重要な争点となっている教育政策や、医療保険制度の充実も打ち出して労働者層に訴えかけました。

外交・安全保障面では過激派組織IS=イスラミックステートの指導者の死亡や、イランの革命防衛隊のソレイマニ司令官の殺害を成果だと強調したうえで、中東からアメリカ軍の撤退を目指す考えを示しました。

演説は、内政や外交・安全保障で、みずからの実績を最大限にアピールし、内向きな姿勢が色濃く反映されたものとなりました。

ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判などで、野党・民主党との対立が深まる中、11月の大統領選挙での再選に向けて、国民に前向きなメッセージを打ち出して、幅広い支持を訴えたい思惑があるとみられます。

一方、民主党をあからさまに批判することはありませんでしたが、「社会主義にアメリカの医療保険制度を破壊させない」と述べるなど暗に批判する場面もありました。

また、民主党の一部の議員が弾劾裁判が続いていることを理由に、演説への出席をボイコットしたほか、演説の直後、民主党のペロシ下院議長がトランプ大統領の後ろで演説の原稿を破り捨てるなど、トランプ大統領と民主党との深刻な対立が随所で浮き彫りとなりました。

新型ウイルスめぐり「できるかぎりの措置とる」

トランプ大統領は、新型コロナウイルスの感染が続いていることについて「アメリカ人の健康を守ることは感染病と闘うことでもある。われわれは、この脅威から国民を守るため、できるかぎりの措置をとる」と述べました。

「自由を守るため 米軍に記録的投資」

トランプ大統領は「アメリカの自由を守るために、私たちは米軍に2.2兆ドルという記録的な投資をして、最高の航空機やミサイルなどあらゆる軍事装備を購入した。これらはすべてアメリカ製だ」と主張しました。

また「同盟国に公平な分担を支払わせ、NATOのメンバーから4000億ドル以上の貢献を引き出して、最低限の義務を果たす同盟国は倍以上になった」と主張しました。

さらに「宇宙軍という新たな組織を創設した」と述べて、成果として強調しました。

民主党下院議長 演説原稿破り捨てる

トランプ大統領が一般教書演説を終えた直後、民主党のペロシ下院議長はトランプ大統領の後ろで演説の原稿を破り捨てました。

ペロシ議長は、トランプ大統領の演説中も時折、拍手をする一方で、ぶ然とした表情を浮かべていました。

これに先立ってトランプ大統領は演説の前に本会議場に入った際にペロシ議長の握手には応じず、弾劾裁判をめぐるトランプ大統領と民主党との深刻な対立をうかがわせました。
また民主党のペロシ下院議長は声明を発表し、トランプ大統領の演説を「虚偽のマニフェスト」だと批判し、トランプ大統領に対じする姿勢を強調しました。

この中では「私たちはいつも大統領の一般教書演説を希望を胸に聞いている。良好な関係を持ち、見解の一致を見いだすための機会を歓迎している。しかしトランプ大統領の今夜の演説は、既往症や薬の処方に悩むアメリカ人にとってなんの慰めにもならなかった」として、大統領の演説を批判しました。

そのうえで「民主党は、薬の処方にかかる費用の低コスト化や、アメリカのインフラを立て直すための投資を大統領に求めていく。演説で示された虚偽のマニフェストは、真実と価値のある政策を求めるすべての人にとって立ち上がるきっかけとなるはずだ。アメリカ人は大統領に誠実さを期待している。われわれは、アメリカの懸命に働く人々のために発展を求め続けていく」として、トランプ大統領に対じする姿勢を強調しました。

民主党 ミシガン州知事が反対演説 「違う意味で豊かに」

トランプ大統領の一般教書演説に対し、野党・民主党は中西部のミシガン州のホイットマー知事が4日夜、反対演説を行いました。

この中で、ホイットマー知事はトランプ大統領がアメリカ経済は好調だと強調したことについて「必要のない減税で金持ちが私腹を肥やしているが、アメリカはもっと違う意味で豊かにならなければならない。実際、多くの人は月々の支払いがままならないような仕事にしかついていない」などと批判しました。

そのうえで、「民主党が多数を占める下院では、3000万人のアメリカ国民の最低賃金を引き上げるための法案を可決した。人々を貧困から救い出し、生活をよくしようとしている」と述べて、アメリカ経済を本当の意味で回復させようとしているのは、民主党だとアピールしました。

中西部のミシガン州は民主党の地盤でありながら、4年前の大統領選挙でトランプ氏が勝利した州で、民主党がホイットマー州知事を反対演説に選んだ背景には、従来の地盤を奪い返したいというねらいがあるものとみられます。

演説会場ではサプライズ演出も

今回の一般教書演説は、演説開始直前に与党・共和党の議員たちが一斉に「あと4年!あと4年!」と声を上げて、トランプ大統領の再選を訴える異例のスタートとなりました。

一方、野党・民主党は、トランプ大統領に反発する一部の議員が欠席しました。

また、トランプ大統領が演説の中で医薬品の価格を抑える方針を説明した際には、民主党の議員たちが立ち上がって、民主党が提案した医薬品の価格を下げる法案の名前を一斉に叫んで、法案の成立を阻んでいるのは共和党だとして、演説を遮る場面もありました。

また、一般教書演説ではサプライズの演出もありました。

会場にはアフガニスタンに派遣されているアメリカ兵の妻と子どもが招かれていましたが、トランプ大統領が紹介したあと突然、会場に姿を現したのは、アフガニスタンにいるはずの夫、驚きの再会を果たしたのです。

このあと再会を喜ぶ議員たちが一斉に立ち上がって、「USA!USA!」と叫び声を上げて、会場は一時、愛国的なムードに包まれました。

民主女性議員 白い服で男女平等訴え

民主党のペロシ下院議長をはじめ、多くの民主党の女性議員は上下白い服を着て出席しました。

これは20世紀初めにアメリカ国内で起きた、女性の参政権運動の象徴が白い服だったことに由来していて、一般教書演説で白い服を着ることで男女平等を訴えました。

また、女性を見下す発言でたびたび批判されるトランプ大統領に、屈することはないという強いメッセージを出したものでもあります。

民主党の女性議員は去年も白い服を着て出席しましたが、2018年にはセクハラや性暴力を告発する「#MeToo」運動への連帯を示すため、黒い服を着て出席し、話題となりました。

特別ゲストにベネズエラのグアイド国会議長など

一般教書演説が行われる議会下院の本会議場には、毎回、大統領が特別なゲストを招き、傍聴席でファーストレディーとともに大統領の演説を聴くのが慣例となっています。

ことしの特別ゲストには、南米のベネズエラで反マドゥーロ政権を訴え、暫定大統領に就任した、親米のグアイド国会議長が招待されました。

このほか、過激派組織IS=イスラミックステートの指導者バグダディ容疑者に殺害され、軍事作戦の名前にもなった娘の両親が招かれたほか、イラクに従軍中に、イランによる攻撃で亡くなったとされるアメリカ軍兵士の遺族が招かれていて、トランプ大統領としては、バグダディ容疑者やイランの革命防衛隊のソレイマニ司令官の殺害を肯定するとともに軍の最高司令官としての手腕をアピールするねらいがあるものとみられます。

また、メキシコとの国境沿いでパトロールにあたる国境警備隊の男性や、不法移民によって殺害された男性の遺族も招かれていて、トランプ大統領は、みずからの支持者を意識して、不法移民の取締りを強化する姿勢を改めて示しました。

そしてことしのゲストには、元路上生活者で、トランプ大統領の税制改革の恩恵を受けて就職することができたという黒人男性など白人以外の人種やシングルマザーとして働く女性の姿もありました。

ことし11月のアメリカ大統領選挙に向けて、いわゆる「岩盤支持層」以外にも支持を広げるねらいがあるものとみられます。

専門家 再選を意識した演説との見方

トランプ大統領の一般教書演説について、アメリカ政治に詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授は大統領選挙での再選を意識した演説だったとの見方を示しました。

渡辺教授は、一般教書演説は「全体的に抑制の効いた大統領らしい演説だった」と評価しました。

そしてトランプ大統領が雇用の創出や失業率の低下、それに株価の上昇など、大統領に就任してからの3年間の成果を強調していたことについて、「オバマ政権時代と比べていかにアメリカがよくなったかということを強くアピールしていた。特に農業や製造業の雇用がいかに増えたか強調していて、自身の岩盤支持層である労働者に対していかに貢献してきたかをアピールするねらいがあった」と述べ、大統領選挙での再選に向けてみずからの成果を強調していたと話していました。

またトランプ大統領が「社会主義に医療保険制度を破壊させない」と演説したことについて、「サンダース氏やウォーレン氏といった民主党の左派の人たちの主張に対して明確にノーを突きつけ、民主党をけん制したという意味で選挙をにらんだ発言だったと思う」と述べました。

また渡辺教授は、演説の直後、民主党のペロシ下院議長がトランプ大統領の後ろで演説の原稿を破り捨てたことに「いちばん驚いた」としたうえで、「今のアメリカの党派対立のすさまじさを象徴している」と話していました。