世界が注目!作曲家 挾間美帆さん ジャズ×クラシックで新境地

世界が注目!作曲家 挾間美帆さん ジャズ×クラシックで新境地
先月受賞作が発表された、アメリカ音楽界で最高の栄誉とされる「グラミー賞」。そのノミネート作の中に、注目のジャズ作曲家の作品がありました。ニューヨークを拠点に活動する、挾間美帆(はざま・みほ)さん(33)。曲を聴いてみると、ジャズとクラシックの両方の要素があり、なんともジャンル分けが難しい一方で、誰もが気軽に楽しめるようなメロディーが繰り返され、親しみやすい曲になっています。どのようにして今のスタイルにたどり着いたのか。これからどんな活動をしていきたいのか。挾間さんに話を聞きました。
(科学文化部 飯嶋千尋 / アメリカ総局 波多江麻紀)

予想外の「グラミー賞」ノミネート!

「グラミー賞」のノミネート作、「Dancer in Nowhere」。おととし発表した、3作目のアルバムです。挾間さんはこの作品で、「ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム」の部門に初めてノミネートされました。

日本人がジャズの部門でノミネートされるのは、2011年にジャズピアニストの上原ひろみさんがノミネート・受賞して以来、9年ぶりのことです。

ノミネート作の発表日時も知らず、デンマークにいたという挾間さん。会議中、携帯電話が急に鳴りっぱなしになり、友人からの大量のメッセージを見て初めて、ノミネートされたことを知ったそうです。
(挾間美帆さん)
「最初は本当に驚いたというのが第一印象です、とにもかくにも驚きました。続けてきたことが徐々に実を結ぶというか、より多くの方々の目や耳にとまったということが、純粋にうれしいなと思っています」

ジャズだけど 弦楽器で“音に厚み”を

このアルバムに収録された楽曲を演奏しているのは、挾間さんが率いる楽団「m_unit」。ジャズの楽団なので、アルトサックスやドラムス、それにピアノなど、ジャズの演奏に欠かせない楽器で編成されていますが…
バイオリンやビオラなど、ジャズに使われない弦楽器も含まれています。挾間さんによると、弦楽器を使うと曲に厚みが出るんだそうです。
(挾間美帆さん)
「管弦楽団でしか出せない複雑な音の混ざり具合とか、弦楽器ならではの“木の要素”による音の厚みに魅力を感じているので、私が作る曲では、ジャズでは使わない弦楽器も重要な役割を担っています」
こうした音楽は世界でも認められ、2016年にはアメリカの音楽雑誌「DOWNBEAT」で、「未来を担う25人のジャズアーティスト」として、アジアからただ1人選ばれています。

作曲家の道 選んだきっかけは 大河ドラマ

挾間さんの独自の音楽性は、どうやって培われてきたのか。

3歳で音楽教室に通い始めた挾間さん。家族が音楽好きなこともあり、クラシックやジャズだけでなく、合唱やテレビドラマのBGMなど、さまざまな音楽に親しんでいました。

小学生の時にはオーケストラの曲をエレクトーンで弾いたり、気に入った曲は、ドレミで熱唱できるくらい聞き込んだりしたこともあったそうです。

そうした音楽に囲まれた生活のなかで、演奏者ではなく作曲家の道を選んだきっかけは、当時見たNHK大河ドラマ「秀吉」だったと熱く語ってくれました。
(挾間美帆さん)
「日本史が好きで大河ドラマに思いきりはまった時期があり、週に1回はあこがれの作曲家のオーケストラ音楽に触れていたんです。シーン1つ1つのためにオーケストラが演奏してくれるなんて、何とぜいたくなことなんだろうと、すごく夢のあることに思えたんですね。いつかは大河ドラマのメインテーマを作曲することができたらいいなと」
大学では作曲を学ぶため、国立音楽大学のクラシック作曲専攻に進みますが、ジャズとの出会いもこの頃でした。
(挾間美帆さん)
「偶然サークルとして活動しているビッグバンドに入ったのがきっかけです。新入生の歓迎演奏会で、本当にかっこいい演奏をしていて、そのまま吸い込まれるように入部しちゃいました。即興で演奏するなんてしたことがなかったのに、見よう見まねで練習するうちに、そこで演奏している作品が、自分で作ってみたい音楽に一番近いのかもしれないと思うようになったんです」

複雑なリズムと気軽に楽しめるメロディーが融合

作曲の時に心がけているのは、“音に意味を持たせる”こと。

演奏する人の特徴からインスピレーションを得たり、数字や図形からコンセプトを見いだして音階やリズムを作ったりすることもあると言います。

こうした発想に、ジャズの複雑なリズムと、誰もが気軽に楽しめるようなメロディーが融合して、格好よくて親しみやすい曲ができあがります。
(挾間美帆さん)
「大学で4年間教わったクラシック作曲の先生にも、留学したニューヨークでジャズを教わった先生にも、『君、この音に何の意味があるの?』と同じことを指摘されたことがショックで、それ以来、音を書く意義や音への責任を考えながら作曲しています」

オーケストラには “リズミカルな楽曲”を提供

独自の音楽はオーケストラにも評価され、先月には「オーケストラ・アンサンブル金沢」に楽曲を提供。挾間さんは金沢を訪れ、リハーサルと本番に立ち会いました。
ふだんはクラシックを演奏することが多いオーケストラが、ジャズのリズミカルで明るい曲を演奏します。いわゆる「シンフォニック・ジャズ」と呼ばれるスタイルです。
曲名は「南坊の誓い」。金沢に身を寄せていたキリシタン大名、高山右近を題材にしています。

キリシタン大名という宗教的な要素を表現しようと、賛美歌を思わせるメロディーに加え、教会の鐘の音を「NHKのど自慢」でおなじみの楽器「チャイム」で奏でます。

“私の音楽はジャンル分けが難しい”

自身の音楽をジャンル分けするのは難しいと話す挾間さん。ジャンルにとらわれずに楽しんでもらえるような音楽を作りたいと意気込みます。
(挾間美帆さん)
「オーケストラとの懸け橋になっていけたらいいなというのが大きな目標です。オーケストラが演奏するジャズ音楽、あるいはジャズっぽい要素を使った音楽を通じて、新しい発見をお客様に提供できるような活動をしていきたい」

さらに広がる活躍の場

挾間さんは現在、デンマークの老舗ビッグバンドの首席指揮者を務めたり、自身の楽団「m_unit」とニューヨークシティバレエ団のプリンシパルとのコラボ公演が決まったりと、活動の場をさらに広げています。

今回、グラミー賞の受賞は逃しましたが、その後の記者会見で「ノミネートは通過点にすぎないので、今までどおり全力でいい作品を作る努力を続けたい」と意気込みを語った挾間さん。今後、さまざまな場面で曲が聴けるようになるのが、本当に楽しみです。
科学文化部
飯嶋千尋
アメリカ総局
波多江麻紀