新型肺炎「指定感染症」などにする政令 施行日あすに前倒しへ

新型肺炎「指定感染症」などにする政令 施行日あすに前倒しへ
新型のコロナウイルスによる肺炎をめぐり、WHO=世界保健機関が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したことを受けて、安倍総理大臣は法律に基づく「指定感染症」などにする政令について、来月7日としていた施行日を2月1日に前倒しする方針を示しました。
新型のコロナウイルスによる肺炎について、政府は先に国内での感染拡大を防ぐため、感染症法の「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定するための政令を閣議決定し、来月7日に施行するとしていました。

これについて安倍総理大臣は、31日の衆議院予算委員会の集中審議で「WHO=世界保健機関が緊急事態を宣言したことを受け、あす2月1日から施行することにした」と述べ、施行日を2月1日に前倒しする方針を示しました。

そのうえで「これにより、わが国に入国しようとする者が感染症である場合は、入国を拒否する。感染者であることが確認できない場合でも入国管理を強化するべく、運用を速やかに検討する」と述べました。

施行日の前倒しによって2月1日から、強制的に医療機関へ入院させる措置や、一定期間、仕事を休むよう指示することなどができるようになります。

一方、安倍総理大臣は武漢からチャーター機で帰国した人たちに支払いを求めることにしていた、エコノミークラスの片道の正規運賃およそ8万円の費用について、政府が負担する方向で検討する考えを示しました。

これに関連して茂木外務大臣は「感染者数の急激な増加や、今回、帰国された方々に医療機関での受診などの対応をお願いしていること、WHOによる緊急事態宣言などを考慮し、再検討することにした」と述べました。

また、加藤厚生労働大臣は武漢から帰国した人たちの一時的な隔離を検討すべきだと指摘されたのに対し「致死性や重篤性が非常に大きい状況で初めて、隔離、停留する。行動を制限するので人権との絡みで慎重に検討しなければならない」と述べました。

指定感染症 強制入院や休業指示も

指定感染症は、都道府県知事が患者に対して感染症の対策が整った医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるほか、患者が一定期間、仕事を休むよう指示できるようになります。
入院などでかかる医療費は公費で負担されます。

指定の期間は原則1年間で、さらに最大で1年延長することができます。

これまでに
▽平成15年の重症急性呼吸器症侯群「SARS」、
▽平成25年のH7N9型の鳥インフルエンザ、
▽平成26年の中東呼吸器症候群「MERS」などが指定され、今回の肺炎は5例目となります。

検疫感染症 検査指示に従わなければ罰則

検疫感染症に指定されると、空港や港などの検疫所で感染が疑われる人が見つかった場合、法律に基づいて検査や診察を指示できるようになります。

具体的には、空港や港などで入国者に症状が出ていないかを質問し、感染が疑われる症状があった場合は検査や診察を受けるよう指示できます。

さらに入国時に感染の疑いがある人については、一定期間、健康状態について報告を求めることができます。

これらに従わない場合は、罰則を科すことができます。

官房長官「希望する日本人全員 責任持ち帰国させたい」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、帰国を希望する日本人は現地におよそ140人いて、大半は武漢市以外に在住する人だとしたうえで、チャーター機の第4便の運航については「すべての帰国を求める邦人は責任を持って帰国させたい。武漢に向かっている人は、中国の国内事情でたどり着けない人もたくさんいるので、そうした状況を見ながら検討していきたい」と述べました。

また、「指定感染症」などにする政令の施行を、1日に前倒しする方針について「『指定感染症』には罰則がついており、人権の問題などから周知期間が必要だという見解だったが、WHO=世界保健機関が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言したことを受けて、あすから実施することにした」と説明しました。