みんな政治の話がしたい?

みんな政治の話がしたい?
「若者は政治に関心がない」と言われます。34歳の私も今でこそ政治取材が仕事ですが、学生時代、友人と政治の話はほとんどしたことがありません。ましてや高校生のころは「18歳選挙権」導入前でしたが、部活動のことしか頭にありませんでした。やっぱり若者って、政治に興味ないの?
(政治部記者 並木幸一)

まずはデータですが

でも決めつけちゃいけませんよね。まずはデータで確かめてみましょう。

これは平成に入ってからの衆議院選挙の投票率を、総務省がまとめたものです。
年代が高いほど、投票率が高い傾向にあります。この傾向は参議院選挙でも変わりません。
去年7月の参議院選挙でも、全体の投票率が48.80%なのに対し、10代は32.28%、20代は30.96%でした。こうした数字からも若い人が投票に行っていないことがわかります。

若い人だからこそ!

取材しているうちに、政治と若者の距離を縮めようという学生グループを見つけました。
「No youth No Japan」
「若者なくして日本なし」っていうことでしょうか。威勢がいいです。

去年7月の参議院選挙の際、学生たちが中心となって、SNSを活用したネットワークを立ち上げました。

参議院選挙では、「わかりやすく」を目指して「原発政策」や、
「選択的夫婦別姓」などで、各党がどう主張しているのかをまとめ直しました。
その後も、大学入試への英語民間試験の導入延期や日米貿易協定といったテーマを、タイムリーに発信しています。こうした活動が徐々に浸透し、現在のインスタグラムのフォロワーは1万5000人にまで増えました。
代表を務める、慶応義塾大学4年の能條桃子さんです。
グループを作ろうと思ったきっかけは、デンマークへの留学でした。

「前回、3年前の衆議院選挙のあと、選挙結果の要因の1つとして、『若者が政治に無関心だったこと』を指摘する報道があったんですが、そんなことないんじゃないかと思いました。周りの友人だって社会に対して問題意識のある人が多かったですし。投票率が低かったのは事実なんですが…。海外はどうなんだろうと、各国の投票率などを調べるうちに、デンマークを直接見てみたいと思ったんです」

デンマークは、投票しなかった場合の罰金などはありませんが、国政選挙の投票率は、毎回80%を超えています。去年の全体の投票率も84.6%でした。
去年3月から半年余りデンマークで生活した能條さん。実際に生活してみて、国全体に、「生活に根づいた民主主義」が浸透していることを肌で感じました。そして、政治や政策について、ふだんから当たり前のようにやり取りが交わされていることに驚かされました。

「驚いたのは、本当に普通の学生でも『花火大会に行く?』というようなノリで、政治的なイベントやデモに行くことです。市民と政治との距離がとにかく近いんだなと」

現地で、政治をテーマにしたフェスに行った時のことです。ステージ上のミュージシャンが政治的な表現をしているのはもちろん、会場には多くの市民団体や政党の青年局、それに行政機関などもブースを出していました。
会場を訪れる人の年齢も幅広く、学生たちも、授業の一環として来ていたそうです。政治に参加するハードルの低さを感じたといいます。

また、留学している間には国政選挙もありました。その際にも友人との会話で政治を話題にすることが多く、「党首討論を一緒に見よう」という誘いもあったと言います。

そんな日本の若者との違いを目の当たりにした能條さんは、デンマークにいながら、SNSを使って仲間を集め、今のグループを立ち上げました。

実際に運営してみると、SNS上では、こんな率直な質問も寄せられました。
能條さんは、日本では、政治の素朴な疑問をぶつけられる相手が身近にいないのではないか、政党の主張に具体的に触れる機会も少ないのではないかと感じました。

「日本の学校では、国会は法律を作るところだといった、『政治の仕組み』を学ぶことはあっても、自分にとって大切な価値観がどの政党に近いのか、当てはめていく作業をすることはありません。各党がどういう政党なのかを学ぶこともないまま、いきなり18歳になったんだから投票しろと言われている気がします」

また、身近な問題を政治の問題としてとらえられない現状もあると考えています。
「国政選挙では、憲法改正など大きな争点が示されることが多いように思います。自分たちに身近な話題を各政党がどう考えているのかが、わかりづらいです。周りの学生と話していても、社会問題には関心が高いのに投票には結び付いていないですね。いろんな報道で、投票前にある程度結果もわかっているし、どこに投票しても同じだ、社会を変えるんだったらNPOに参加したり、起業したりしたほうが早いと思っている子も多いです」

「関心ない」若者は少ないというデータも!

でも、こんな数字もあります。

OECD=経済協力開発機構が去年に発表した資料によると、「政治に関心がない」と答えた日本の若者(15歳~29歳)は11%と、ドイツやデンマークなどに続いて6番目に少ない数字になっています。加盟国全体の平均である24%よりも、かなり低い数字です。
逆に言うと、実は政治に関心がある若者の比率は高く、投票率が低いからと言って、一概に「若者=政治に無関心」と本当に言えるのかと疑問に感じます。

「意識高い系」と言われるのが…

では、そういう「関心がある」であろう若者はどう考えているんだろうか。
一橋大学のゼミで政治を勉強している学生たちに聞いてみました。
ゼミで幹事を務める3年生、上保晃平さんは、若者が積極的に政治に関わろうとしない原因に、思い当たるところがあるようです。
「周りの友達を見ても、インターネットで政治ニュースに触れる機会は多いですが、結局、大学の授業料値上げの話など、身近なことにしか興味がないのかなと。政治についてSNSなどで発信すると、『意識高い系』として認定され、嘲笑の対象になってしまうことが一因だと思います。政治をちょっとかじったような発言だと批判されるような風潮があるように感じます」

政治に対する“感覚”も変わっていると言います。

「政治学では、『保守』、『革新』、『リベラル』とか、『右』、『左』とかいう言葉が出てきます。しかし、政策によっては、どの政党の政策なのかわからないものもあります。『保守・革新』とか、『右・左』はもはや関係なくなっているように思います。そうしたことよりも、自分にとってその政策がどうなのかが大事なんです」

もう1人、杉山あかりさんは、ふだんは政治の話をしないといいます。
「ふだん、友達と話す時に、与党がどうだ、野党がどうだとか、政治の話をしたことはありません。ゼミは政治学ですが、政党の話をすると少し敬遠されてしまうというか…。英語の民間試験導入が延期されたね、といった話はしますが、政治というよりも個別の社会問題として見ています」

「意識高い系」「敬遠される」…なんとなくわかる気がします。

ゼミで学生を指導する中北浩爾教授は、若い世代と政治との接点の少なさを指摘します。
「ここ10年くらいの学生で、政治への興味はそんなに変わっていないのではないかと思います。海外と違って、日本の学生が生の政治に触れることはまれで、政党の青年部のような組織に入っている人は、ちょっと変わった学生と受け止められがちです。学生運動が花盛りの時代ならまだしも、今の学生たちは、政治、特に政党の活動に主体的に関わる機会は少ないのではないでしょうか」

政治は身近にできるはず!

最初に登場した能條さんも、政治の話となると意見を言いにくい、議論しにくい雰囲気があるのではないかと感じています。
「政治の話をする時に、その問題を100%理解していないと話しちゃいけない空気があるように思います。私も気候変動問題などで、載せている記事の中立性はどうなんだといったコメントをもらうこともあります。デンマークで学んだんですが、自分のスタンスを決めたうえで、話を進めていかないと、お互いわからないと思うんですよね。だから、私は、そんな批判はあまり気にしないことにしているんです」

一方で、能條さんは、今の活動に可能性も感じています。

「日本の若い世代も、議論しにくい、意見を言いにくい空気を感じているんじゃないでしょうか。政治の話題について大声で主張するYouTuberや、政治的発言をする芸能人に人気があるのは、その裏返しだと思っています。1つの動画の再生回数が数十万回にもなることもあるということは、若い人だって政治に関心はあるということだと思うんです。だから、私は、今の活動を地道に続ければ、政治を身近にすることにつながると思っています」

10年後、20年後…将来の日本はどうなるんだろう。未来をわかりやすく語ってくれる政党や政治家を、日本の若者たちは待ち望んでいるのかもしれません。
政治部記者
並木 幸一
2011年入局。山口放送局を経て2017年に政治部へ。2019年秋から立憲民主党の国会対策委員長や社民党を担当。