“リニア”に乗ってみてわかったこと

“リニア”に乗ってみてわかったこと
“リニアモーターカー”
なんだか懐かしく、でも少し未来っぽい、その呼び名。皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。40代の記者が子どものころ、“未来の乗り物”の大本命でした。ずっと、小説や漫画などの世界のものだと思っていたら、気付けば開業予定まであと7年。現実味が増してきました。いったい、どんな乗り物になっているのか。遅ればせながら、“未来の鉄道”に乗ってみました。
(ニュース制作部チーフプロデューサー 酒井敏寛・ネットワーク報道部記者 郡義之)

品川~名古屋 40分!

その鉄道の名は「リニア中央新幹線」。JR東海が2027年の開業を目指し、品川駅から名古屋駅までの286キロを結ぶ21世紀の「夢の超特急」で、所要時間はなんと40分と大幅に短縮されます。
その「未来の鉄道」の実験線が山梨県にあります。上野原市と笛吹市の間の全長42キロ余りで走行実験を繰り返していて、記者も去年の報道関係者向けの試乗会に参加させてもらいました。

子どもの頃から鉄道が大好きで、30年以上前、小学生の時に当時宮崎県にあった実験線に見学にも行きました。
都留市の見学センターでホームに向かうと行き先案内はすでに「名古屋」。テンションが上がります。
乗車するのは「L0系」。青と白の車体は一見、東海道新幹線のようにも見えますが、先頭を見てみると、これでもかというくらいの“長い鼻”。およそ15メートルもあります。

意外に車内は狭い…

さあ、いざ乗車です。わくわくしながら、車内に入ってみると…。

「狭っ!」
車体の幅は2メートル90センチ。座席も通路を挟んで2列ずつ。東海道新幹線のN700系よりも一回り小さいのです。

さらに座席に座ってみると、前の座席との間隔もちょっと窮屈。JR東海によるとその間隔は80センチと、N700系よりも20センチ以上狭いのです。

乗っている時間が短いため、1両当たりの定員を増やそうと狭くしているのだとか。感覚的には飛行機のエコノミークラスに近いかもしれません。

ただ実際の営業運転の時の車内をどうするかはまだ決まっていないといいます。

浮いちゃうんです

試験走行は都留市の見学センターを出発し、実験線を1往復するなどします。その距離約100キロ。でも所要時間は25分とあっという間です。

突然ですが、リニアってどういうふうに走っているかご存じですか?

重要な鍵を握っているのが「磁石」の力です。この車両には「超電導磁石」という強力な磁力を起こす磁石が搭載されていて、地上側のコイルとの間の磁力、つまり磁石のN極とS極が反発する力と引き合う力とを利用して進みます。

つまり今の鉄道のように車輪とレールという関係ではなく、車体の両脇に取り付けられた超電導磁石と走行路の側壁に並べられたコイルの作用で車両が浮上することで、超高速走行が可能になります。

「耳をすませば音が変化することに気付いていただけます」

走行が始まりしばらくすると、こんなアナウンスが。わくわくしながら耳をすませていると、確かにある瞬間からタイヤの音が消えました。でもよく聞いていないとわからないほどのスムーズさ。

車両が浮上したあとも、車内での会話も普通にできて、新幹線に乗っている感覚とあまり変わりありませんでした。

さあ500キロ!

さあいよいよお楽しみの時速500キロ走行です。車両は徐々に勢いを増し、ぐんぐん加速。100キロ、200キロ、300キロ…。

ここまでなら、新幹線でも体験した範囲。ここからは未体験ゾーンです。400キロ到達。窓の外は今までに見たことがない速さでトンネルの照明が次々と過ぎ去っていきます。
そして加速から2分40秒ほどでついに時速500キロに到達。

「速い、でも静かだ…」

そんなギャップに感動しているのもつかの間、2分ほどで超高速走行は終了。確か、天気がよければ富士山が見えると聞いていましたが、あまりにも速すぎて、そんな旅情に浸る暇もありません。
その後もリニアはカーブや急勾配をものともせずにすいすい走行。乗っている時もほとんど揺れも感じず快適でほとんど「乗り物」としては完成の域に近づいていると感じました。

同乗したJRの担当者も「東京から来られた方の中には在来線の特急よりも揺れなかったとおっしゃる方もいます」と胸を張っていました。

研究にすでに半世紀以上

リニア中央新幹線は昭和37年に東京~大阪間を1時間で結ぶことを目指し、研究が始まりました。

それから50年余りの間、最高時速はどんどん速くなり、平成27年には時速603キロを記録しギネス世界記録に認定されました。
JR東海では現在、新たな試験車両の製作を進めています。先頭の形状を変更して、より空気抵抗を少なくした車両を製作し、今春から試験走行を始める予定です。
夢の超特急「新幹線」のその先の未来は手の届くところまでやってきています。ただその一方で、建設に伴う環境への影響やばく大な建設費用など、手放しで喜べる話でもありません。

リニアモーターカーが東京と名古屋、そして大阪を結ぶ次世代の大動脈として役割を果たすことができるのか、こよなく鉄道を愛するファンの1人としてこれからも注目していきたいと思います。
ニュース制作部チーフプロデューサー
酒井敏寛
ネットワーク報道部記者
郡義之
2010年入局 前橋放送局、釧路放送局を経てネットワーク報道部。現在、ネットニュース、調査報道など担当。学生時代は寝台列車で帰省するほどの大の鉄道好き。