中国の団体旅行中止 日本の旅行会社 キャンセル対応に追われる

中国の団体旅行中止 日本の旅行会社 キャンセル対応に追われる
中国で新型のコロナウイルスの感染が拡大し、日本を含む海外への団体旅行が27日から中止されることになったことで、東京の旅行会社では社員が休日返上で、予定していたツアーの宿泊先にキャンセルの連絡をするなど、対応に追われていました。
東京 新宿区にある「カモメツーリスト」は、中国の旅行会社向けに日本国内のツアーを企画・販売している旅行会社で、ツアーの運営も請け負っています。

会社によりますと、春節の大型連休中、中国の旅行会社からおよそ350のツアーの運営を請け負い、1万人を超える観光客が参加する予定でした。

しかし、中国で日本を含む海外への団体旅行が27日から中止されることになり、運営を請け負っていた来月1日までのツアーのほぼすべてがキャンセルになったということです。

会社では急きょ社員20人が出社し、宿泊先のホテルやバス会社にキャンセルの連絡を入れるなど対応に追われていました。

ただ、26日中にすべての関係先に連絡するのは難しいうえ、問い合わせの電話も殺到し、社内は混乱した様子でした。

カモメツーリストの山添翔社長は「社員に急きょ出社してもらっているが、なかなか対応が追いつかないのが現状です。こんな事態になるのは初めてで、春節は最も多くのお客さんが集まるので非常に残念です。ただ、人命が第一と私たちも理解しているので、協力できることはしていきたい」と話していました。

観光庁によりますと、おととし中国から日本を訪れた観光客のうち、団体ツアーの利用者は31%、航空券と宿泊施設をセットにした旅行商品の利用者は8%で、各地の観光産業への影響が懸念されます。

ホテルも大きな痛手

札幌市南区のホテルでは中国人の団体旅行合わせて250人分の予約がすでにキャンセルになるなど影響が広がり始めています。

北海道では、春節に伴う大型連休や、今月末から来月にかけて開かれる「さっぽろ雪まつり」に合わせて、例年この時期に大勢の中国人観光客が札幌市を訪れます。

中国人観光客の団体旅行を受け入れている札幌市南区の「定山渓ホテル」では25日午後、中国の旅行会社が手配していた複数の団体旅行の予約について、キャンセルのメールが届いたということです。

旅行会社に理由を問い合わせたところ「中国政府の方針により、1月27日24時以降の団体旅行の予約をすべてキャンセルする」という趣旨のFAXが届き、26日夕方までにこの旅行会社が手配していた6つのツアー、合わせて250人分の予約についてキャンセルの連絡があったということです。

このホテルでは、今回の団体旅行も含め合わせて16のツアーおよそ500人分の予約が入っていましたが、さらにキャンセルが増えるとみて情報収集を急いでいます。

定山渓ホテル営業販売部の佐藤元昭次長は「すでに分かっているだけでも200万円ほどの減収で、団体旅行が中止になり中国人が来ないとなると観光地としても寂しい部分がある。新型のコロナウイルスの感染拡大が早く収束することをせつに願っている」と話していました。

中国人観光客「政府の命令なのでしかたない」

北海道有数の観光地、登別温泉を訪れていた中国人の観光客などからは今後を心配する声が相次ぎました。

上海から団体で訪れたという男性は「日本に旅行できなくなった人は残念だと思うが、政府の命令なのでしかたないと思う。新型のコロナウイルスによる肺炎の患者が増え続けているので心配です」と話していました。

香港の旅行会社の添乗員の女性は「観光客が急に日本に来ることができなくなり、バス会社なども困ると思う。中国政府の命令なので守らないといけませんが、団体旅行の中止がいつまで続くのか心配です。長く続くと非常に困ります」と話していました。