「凡人」はどう導く? カリスマなきあとのハウステンボス

「凡人」はどう導く? カリスマなきあとのハウステンボス
経営が悪化し赤字続きだったテーマパーク「ハウステンボス」。大胆なアイデアで大型のイベントなどを導入し再建を果たした「カリスマ」澤田秀雄前社長が退任したのが今から半年前。引き継いだのはみずからを「凡人」と称する人物です。「カリスマ」なきあと、会社をどう導こうとしているのでしょうか。(長崎放送局佐世保支局記者 玉田佳)

入場客を出迎えるのは社長!

長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」。開園と同時に入場する客をにこやかな笑顔で出迎える1人の男性がいます。坂口克彦さん、このテーマパークの社長です。

客の生の声を聞こうと、できるかぎり現場に足を運ぶようにしています。来場者も、そばにいるのがまさか社長だとは思ってもいない様子です。
「私は凡人なので、これまでのカリスマ経営者のまねはできません」
去年5月の社長就任会見でこう語った坂口さん。大手日用品メーカーで幹部として人事などに携わってきた経験を見込まれ、5年前、大手旅行会社「エイチ・アイ・エス」に入社しました。

カリスマと呼ぶのは、「エイチ・アイ・エス」を一代で東証一部上場にまで育て上げた澤田秀雄氏のことです。

経営再建を果たしたカリスマ

平成4年に開業した「ハウステンボス」。東京ドーム33個分の広大な敷地に、オランダの町並みを再現しました。

しかし、多額の初期投資やバブル崩壊の影響で、平成15年にはおよそ2300億円の負債を抱えて経営破たん。その後も、赤字続きの苦しい経営が改善されない中、地元経財界からのたび重なる要請を受けて、運営を引き受けたのが澤田氏でした。
社長に就任した澤田氏はコスト削減を進める一方で、大規模なイルミネーションや花火大会などのイベントをつぎつぎに展開。わずか1年で開業以来初めての営業黒字を実現。

社長就任の直前の平成21年度に140万人余りだった入場者数も、5年でほぼ倍増させ、就任以来、営業黒字を確保し続けました。
しかし、会社の運営をいつまでも澤田氏の力に頼っていくわけにはいきません。そこで白羽の矢がたったのが、坂口さんでした。前の会社でトップダウンから組織経営へと移行を図り、業績を伸ばしたマネージメント能力が期待されたのです。

目指すはボトムアップ型

坂口社長
「澤田さんは天才。すごく天才的な経営の勘で、お客様に当たるものはこれだということをばんばんやるが、それは自分にはできない。現場の人やお客様に知恵があるので、それを聞いて、戦略的に仕上げていく」
ボトムアップ型の経営を目指す坂口さんは、社員とのコミュニケーションを重視しています。社長就任後半年余りの間で、すべての正社員と契約社員のおよそ2割にあたる200人以上と面談を重ねてきました。

率直に意見が言えるよう「会社に対して納得できていないことを教えてください」という聞き方を心がけているといいます。坂口さんは、最終的にはスタッフも含めたすべての従業員から意見を聞く予定です。

この中から改善の具体的なアイデアも引き出されています。その1つが入場料です。
入場料と主な施設の利用料がセットになった1日7000円の「パスポート」。しかし例えば、観覧車に乗ろうとすると別に600円必要でした。

このため、「パスポートを買っても、一部の施設で追加料金がかかることをお客様に説明しづらい」などの意見が上がりました。


そこで、観覧車などの追加料金をなくしました。さらに、65歳以上の高齢者や妊婦など、アトラクションの利用が少ない来場者向けに、5000円のパスポートを新たに設けました。

売り上げに響く大きな決断ですが、従業員の納得感を大事にしたといいます。

徐々に独自色も

また、徐々に独自の色も打ち出そうとしています。
1つが、澤田前社長の肝いりで始まったホラーエリアの廃止です。

そのあとには、ハウステンボスが強みとしているヨーロッパの町並みや花・光のイルミネーションなどを天候や時間帯に左右されずに楽しめる屋内施設を3月にオープンさせる予定です。
これまでやってこなかった絶叫マシーンの導入の検討も口にするなど、さらなる改修にも意欲的に取り組もうとしています。

カリスマ経営者を超えられるか

世界経済の先行きの不透明感が増し、レジャーも多様化するなど経営環境は決して楽観できる状況ではありません。それでも、坂口社長は、「カリスマ」澤田前社長時代の売り上げ、利益、入場者数をすべて上回ることを最終的な目標に掲げています。
坂口社長
「組織経営に変えていくことで、追いつけ追いこせでできるということをやっていきたい。社員も、7か月たって『坂口ってどんなやつなのかな』とある程度分かってきていると思う。2020年は、自分がやりたいと思うことに共感してもらう地盤固めの年になるんじゃないか」
紆余曲折をへて、2年後には開園30周年を迎えるハウステンボスがさらなる飛躍を遂げられるのか。「凡人」経営者の真価が問われることになります。
長崎放送局佐世保支局記者
玉田佳
平成29年入局
佐世保支局で行政・経済を担当