1匹2億円! 広島が生んだレジェンドとは?

1匹2億円! 広島が生んだレジェンドとは?
魚が1匹2億円!?

初競りで話題になった青森県の大間のマグロではありません。
広島で生産された観賞用のニシキゴイについた値段です。

日本のニシキゴイは、「泳ぐ宝石」とも呼ばれ、いま世界中の富裕層から熱い視線が向けられています。なぜ外国人はニシキゴイに魅せられるのでしょうか…。(広島放送局記者 五十嵐淳)

広島に世界のバイヤーが殺到

プロ野球の広島カープで知られる広島県。

カープの名前のとおりコイの養殖が盛んですが、広島県三原市の山あいに、いま外国人が殺到している場所があります。
それは、国内最大級のコイの養魚場。

外国人のお目当ては、日本発祥のニシキゴイなんです。
ここでは、定期的にニシキゴイのオークションが開かれていて、この日も中国やタイなど世界のさまざまな国から、およそ120人のバイヤーが集まっていました。

関係者以外は立ち入れませんが、特別に中を見せてもらうと…。
ちょうど「大正三色」と呼ばれるニシキゴイのオークションが始まったところでした。50万円から始まった入札。

みるみるうちに価格はつり上がり、瞬く間に1000万円を突破、1300万円で落札されたのです。
参加した外国人のバイヤーは、日本のコイについてこう話します。
タイのバイヤー
「ニシキゴイはタイでもとても人気ですよ。いろいろな色があって派手で、大きく成長するのが魅力ですね」
イギリスのバイヤー
「コイを見ていると美しくてリラックスできますよ」

空前のニシキゴイバブル

日本固有のニシキゴイは海外で「Swimming Jewel(泳ぐ宝石)」と呼ばれ、アジアや欧米などの富裕層の間では、コイを飼うことが一種のステータスとなっているのです。

業界関係者によりますと、ニシキゴイは昭和の時代、高くても1匹数百万円程度でしたが、最近では数千万円で取引されることもあるといいます。
それを反映してか、財務省の貿易統計によると、観賞魚の輸出額は2018年には43億円と、10年前と比べて2倍に増加。その多くをニシキゴイが占めているとみられています。

この養魚場では、売り上げの9割は海外向けで中国や東南アジアが多いということです。いま空前のニシキゴイバブルが到来しています。

高級コイができる舞台裏

数千万円の値をつけるコイがいると聞いて、池にいるコイに目を凝らします。

しかし、模様が違うことまではわかるのですが、どのコイに高値がつくのか見当がつきません。

養魚場を経営する阪井社長に、どういったコイに高値がつくのか教えてもらいました。
阪井養魚場 阪井健太郎社長
「高値がつくのは、まず背中の模様が4段で1段目、2段目、3段目、4段目と、間隔が均等で、きれいな色であることが大切です。バランスのよい体型だと、さらに価格がはねあがります」
高値になるかどうかは、いわばコイ任せということなんですが、阪井社長は、あの手この手で価値の高いコイを生み出そうとしています。
まず、その規模に驚かされます。用途ごとに、およそ200の池を作り、年間3200万匹の稚魚がふ化するまで養魚場を大きくしました。国内では最大級の広さです。

さらに、大きく健康に育てるため、エサは豊富なタンパク質が含まれた独自のものを与えています。エサの中に、エビや蚕のサナギが含まれていることまでは教えてもらいましたが、詳しいレシピは門外不出だといいます。
私が一番、驚いたのがコイの写真撮影。オークションに出品するコイたちをパンフレットに載せるため、事前に撮影します。

決めポーズでの写真になるよう、麻酔でコイを動かないようにして美しく撮る徹底ぶりです。
社員が頻繁に池を巡回し、ケガをしているコイを見つけると、すぐに薬品を塗って丁寧に治療します。まさに至れり尽くせり…。

品評会で優勝を目指すため、阪井さんたちによる目利きによって選ばれたコイは、専用の池に移されて飼育されます。

いわばコイの選抜組。重視しているのは、コイの血統なんです。

阪井さんがいま最も期待している血統は、その名も「ビューティーローズ」。
その孫にあたるのが、体長1メートル余りの9歳のメス「Sレジェンド」です。

この「Sレジェンド」、2018年10月に2億円余りで台湾のバイヤーに落札されました。
さらに、世界で最も権威のある2019年2月の品評会でも総合優勝を果たします。世界一のコイが広島から生まれました。
阪井健太郎社長
「2億円の価格がついたことに非常にびっくりしました。いいコイというのは、実は少ないのです。需要に対していま供給が追いついていないことが、コイの相場が上がっている一つの要因だと思います」

世界に広がるニシキゴイ

2億円の値がつくほど高まるニシキゴイ人気。

世界各地に愛好者が増えていて、先日開かれた山口市のニシキゴイの品評会では、外国人も審査員を務めていました。
私が出会ったオランダの審査員は、地元でおよそ50匹のコイを飼っていると教えてくれました。

そして、自宅の池の写真を自慢げに見せてくれたのです。
池では、男性の娘たちがコイと一緒に泳いでいて、スケールの大きさに度肝を抜かれました。
オランダ人の審査員
「私はとても忙しいビジネスマンだったのですが、ニシキゴイを池で飼うことでくつろぐことができるようになりました。今では審査員として世界中を旅しています」
山口市の品評会で入賞したインドネシアの男性は、もともと愛好家でした。

趣味が高じて業者となり、今では地元に大規模な養殖施設を作り、300匹以上のコイを飼育して販売しています。
日本のお家芸だったニシキゴイの生産ですが、いまアジア各地でコイの現地生産が盛んになってきているのです。
インドネシア人の男性
「阪井さんの養魚場は、日本では最も優れた養魚場の1つだと思います。私の夢は、日本の品評会でグランドチャンピオンを獲得することです」
「Swimming Jewel」とまで呼ばれるようになった、日本のニシキゴイ。

テレビや半導体など、日本がかつて世界に誇っていた商品は、いまアジア勢などに席けんされています。

ニシキゴイでも海外の養殖業者の追い上げが始まる中、質の高さで世界に打って出る広島カープ…じゃなくて、広島のコイの新たな戦いが始まっています。
広島放送局記者
五十嵐淳
平成25年入局
横浜局、山口局をへて
現在、行政取材などを担当