日米安保条約改定から60年 日米協力は「宇宙」へ拡大

日米安保条約改定から60年 日米協力は「宇宙」へ拡大
日米安全保障条約が改定されてから60年、日米協力の内容や範囲は時代とともに変化し、今では陸海空にとどまらず、宇宙へと拡大しています。
日米安全保障条約に基づく防衛協力は、アメリカの強大な軍事力を抑止力とする日本の安全保障政策の基軸とされ、この60年間、国際情勢の変化などに伴い、拡大されてきました。

協力の範囲などを定めた日米防衛協力の指針・ガイドラインは、2015年の見直しでは、技術革新を背景に、宇宙やサイバーといった新たな領域でも日米が連携を強化することがガイドラインに初めて盛り込まれ、協力の内容や範囲は拡大を続けています。

宇宙での人工衛星 幅広く活用

いま、宇宙での人工衛星の利用は、安全保障上、欠かせないとされ、部隊の指揮や情報収集に幅広く活用されています。

具体的には、
▽遠く離れた部隊との通信に使う「通信衛星」、
▽位置の把握やミサイルの精密誘導に使う「測位衛星」、
▽高性能カメラなどで警戒監視を行う「画像衛星」、
▽弾道ミサイルの発射を探知する「早期警戒衛星」が挙げられます。

軍事的に利用しているとされる人工衛星について、防衛省がイギリスのシンクタンクの報告書をもとに各国の保有状況をまとめたところ、
▽アメリカが125基、
▽中国が103基、
▽ロシアが96基などとなっていて、
3つの国が突出しているとしています。

「宇宙状況監視システム」 整備が進む

防衛省・自衛隊も、すでに宇宙の利用を始め、さらに本格的な態勢整備を進めています。

防衛省は、3年前に防衛通信衛星「きらめき」を初めて独自に導入したほか、日本版GPS衛星「みちびき」や画像衛星などを利用しています。

こうした人工衛星を他国からの攻撃や妨害、それに宇宙ごみから守るため、いま、整備が進められているのが「宇宙状況監視システム」です。

不審な人工衛星の接近や、宇宙ごみの軌道をレーダーなどで監視します。監視活動は、日本では、すでにJAXA=宇宙航空研究開発機構で行われていて、防衛省は、ノウハウなどを学ぶために、3年前から航空自衛官1人を派遣しています。

去年8月から2代目の連絡官として派遣されている齋藤拓也3等空佐は、もともとは基地の通信設備の維持管理などが専門で、新たに宇宙の分野に携わることに当初は驚いたということです。
齋藤3等空佐は、「配置になる前は、何をしたらいいのか全くわからず、いまも手探りで勤務している状況です」としたうえで「JAXAの最先端の知見やノウハウは、防衛省が初めて取り組む宇宙状況監視システムの運用をより効果的かつ確実なものにするために、生かされると考えています」と話していました。

防衛省は、
▽宇宙監視の専門部隊となる「宇宙作戦隊」を来年度、東京の航空自衛隊府中基地に発足させるほか、▽宇宙監視用のレーダーを山口県内で整備していて、令和5年度から「宇宙状況監視システム」の運用を始めることにしています。

背景に各国の脅威

宇宙状況の監視で連携を強める日本とアメリカ。背景には、増え続ける宇宙ごみや、人工衛星をターゲットにした兵器の開発を進める各国の動向があるといいます。

防衛省は、特に中国とロシアの動きが活発だとして、
▽人工衛星を地上から攻撃するミサイルや、
▽人工衛星に接近して攻撃する「キラー衛星」、
▽それに人工衛星のセンサーを妨害するレーザー兵器や、
▽人工衛星と地上の通信を妨害する装置の開発が進んでいると指摘しています。

こうした中、アメリカは、先月、陸軍や海軍などと同格の宇宙軍を創設し、宇宙の軍事利用を進める中国やロシアに対抗する動きを見せています。

宇宙状況の監視 日米連携進む

各国の脅威などを背景に、宇宙状況の監視での日米の連携は、すでに進んでいます。

アメリカは、ヨーロッパやオーストラリアなど各地に設置したレーダーや各国との情報共有を通じて世界的な宇宙監視のネットワークを作っていて、さらに日本と連携することで、東アジアの地域をカバーする形になるといいます。

日米は、宇宙状況の監視で得た情報を共有する取り決めを結んでいて、今後、防衛省の宇宙状況監視システムとアメリカ軍との間をつないで情報共有が行われることになっています。

さらに、アメリカ軍が主催する宇宙状況の監視に関する多国間演習に航空自衛隊などから参加しているほか、令和5年度に打ち上げる予定の日本版GPS衛星に、アメリカの宇宙監視用センサーを搭載することが検討されていて、宇宙でも日米の一体化の動きが進んでいます。

一方、日本の人工衛星が宇宙で攻撃を受けた場合、アメリカが日本を防衛する義務を定めた日米安全保障条約の第5条が適用されるかなど、宇宙での日米協力の範囲は、明確になっていない点が多く残されています。

専門家「戦略と政策をつくることが必要不可欠」

安全保障政策や防衛技術に詳しい拓殖大学の佐藤丙午教授は「安全保障の領域は陸海空に加えてサイバー、そして宇宙へと拡大しつつある。コストや技術的な面において、宇宙空間を日本だけで利用するのは不可能で、領域を横断した作戦を成功させるためにアメリカとの協力の強化が焦点になっている」と指摘しています。

そのうえで、「日米安全保障条約でも宇宙空間をどう利用するかは想定されていない。宇宙空間はボーダーレスという特徴があり、日本のこれまでの制約的で限定的な自衛権の運用と、アメリカが進める宇宙戦略との間にそごが出てくる可能性がある。日本が、どこまで、どのような形でアメリカと協力するか、戦略と政策をつくることが必要不可欠だと思う」と指摘しています。