2020年代の生活 一足先に体験~こんな○○ あなたの家にも?~

2020年代の生活 一足先に体験~こんな○○ あなたの家にも?~
アメリカ・ラスベガス。観光で訪れたことがある人にはおなじみだと思いますが、飛行機を降りると空港で真っ先に出迎えてくれるのはカジノのスロットマシーン。そんなエンターテインメントの街が年に1度、最新のテクノロジー技術であふれ、さながら未来を予想させるような空間へと様変わりします。
それが今月7日から10日まで開かれている世界最大規模のテクノロジー見本市=CESです。2020年代という新しい時代に生活はどう変わるのか。一足先に体験してきました。(経済部記者 伊賀亮人)

あれもテック これもテック

今回が初めてのCES取材となる私ですが、まず圧倒されたのは、訪れた人の波です。期間中に世界160か国以上から約17万5000人が訪れるそうです。

そんな人たちをかき分けるように連日、広い会場を2万歩近く歩いて取材した最新のデジタル技術は、AI=人工知能や自動運転、フィットネスや教育、旅行など30以上に分類されています。

「え?こんなものもテックなの!?」といったものも。
一見すると普通のスーツケースですが、ハンドルが隠されています。そう、なんとモーターと小さなタイヤがついていてスーツケースの上に座って移動できる小型のモビリティになるのです。

飛行機の機内持ち込みができる大きさで、充電式のバッテリーで動きます。重さは約9キロ。最速で時速11キロも出ます。乗ってみるとかなりのスピード!スーツケースを空港内で持ち歩くくらいなら乗っていけたら確かに便利です。価格は約1500ドル(約16万円)で、日本での販売も目指すということです。

ほかにもあります。一見すると普通のヨガマットですが、マットの中にセンサーが内蔵されています。
アプリと連動させるとスピーカーから音声が流れて正しいヨガのポーズの取り方を教えてくれるというものです。AI技術を使っていて、腰痛など利用者の具合が悪いところを改善させるポーズも教えてくれるとのこと。
「スマートキッチンシステム」というのもありました。ポットのような機器に具材を入れるだけで、切って煮たり焼いたりと、好きな料理を全自動で作ってくれるという製品です。

○○テック

さまざまな分野と最新テクノロジーを掛け合わせる○○テック。

すっかりおなじみとなったフィンテック(金融)以外にも、ビューティーテック(美容)、エドテック(教育)などありますが、会場で特に注目を集めていたのがヘルステック。医療や健康増進に最新技術を活用するものです。

時計型のスマートウォッチといったウエアラブル端末もそうです。また、センサーで心拍数や血圧など体の状態を計測したり、アプリで医師と患者をマッチングして遠隔診療を行ったりする技術も。こうしたヘルステックの製品やサービスで世界中の企業がしのぎを削っています。

現代人の悩みもテックで解決

このうち、快適な睡眠を促すスリープテックについては、専用コーナーまで設けられていました。

日本でも「睡眠負債」という言葉が話題になりましたが、日常生活のストレスによる睡眠不足で、体や精神状態が影響を受けていると指摘されています。
「スマートベッド」は快適に寝られるようマットレスの温度や硬さを自動で調節するというもの。センサーで寝返りや心拍数などを計測して睡眠の「質」を数値化し、それをもとにマットレスを調節します。最新のデジタル技術で睡眠の質を高めるのが狙いです。

際立つ中国の存在感

今回会場を歩いていて、とにかく感じたのが中国企業の存在感です。「おもしろそうな技術だな」と思って取材に行くと、多くが中国企業のものでした。
例えば、液晶画面を必要としないプロジェクター型のタッチスクリーン。画面をデスクや壁に映し出し、内蔵のカメラで指の動きを検知することで、まるでそこに液晶画面があるかのように文字の入力やタップといった動作ができるのです。
また、去年のCESでは折りたたみ式のスマホが注目を集めた中国企業が今回出展したのは、極薄のディスプレー画面をまきつけたAIスピーカーです。0.01ミリという紙のように薄くつくる技術を活用していて画面がきれいに曲がっています。画面は「柔軟に」曲げることができるということです。
CESによりますと、今回の出展企業4500社のうち、1000社以上が中国勢。米中の対立が深まる中、去年注目された企業の中には今回、出展を取りやめたところもありますが、それでも4社に1社以上が中国企業です。日本からは70社余りが出展していて、会場では日本企業の担当者とも多くすれ違うのですが、やはりいたるところで中国語の会話を耳にします。

キーワードはデータ

2020年代は、デジタル技術の活用で生活がさらに便利になるのは間違いありません。

一方で気になるのが、企業が集める個人データがどう使われるかです。日常生活の中でたまるデータを収集しAIなどで分析、利便性を高める、というのが基本的なビジネスモデルになっているからです。
ヨガマットもスマートキッチンもスマートベッドも、すべて利用者の個人データを集めながら利便性を高めていきます。

データの利活用とプライバシーに関するCESの討論会では、まさにそんな議論が交わされていました。登壇者はアップルやフェイスブック、それにアメリカ政府の担当者です。

監視資本主義がやってくる?

司会者が「あらゆるデータが抜き取られ、企業の収益にされる『監視資本主義』の時代にいよいよ入ったのか?」と聞くと、フェイスブックの担当者が「無料でサービスを提供するにはデータを活用した広告が必要だ」と述べました。

その上で「利用者にはどんなデータを集めているかをわかりやすく表示している」と述べて、利用者のプライバシーは守られていると強調しました。

これに対して、アメリカ政府の担当者は一般論だと前置きした上で「あまりに膨大なデータが日々集められていて、どの企業が何のデータを集めてどう使われているか正確に知っている人はいない。そういう意味ではプライバシーは守られているとは言えない」と発言しました。
会場では立ち見が出るほどで、たいへんな熱気。あまりたいした情報ではないように思えても、個人個人を特定できる情報、さらにスマホの位置情報などと結びつけられると私生活すべてが浮き彫りになるのではないかという警戒感が根強くあるのだと思います。

今後、デジタル化により生活が驚くほど便利になる一方で、それに不可欠なデータをどう使い、どう守るのか。世界的な議論は始まったばかりです。
経済部記者
伊賀亮人
2006年入局
仙台局 沖縄局 経済部 ネットワーク報道部を経て
19年夏から再び経済部
おまけ。
記事には出ていませんが、こんな動画もあります。