奈良 箸墓古墳を調査 宇宙からの素粒子で透視 卑弥呼の墓説も

奈良 箸墓古墳を調査 宇宙からの素粒子で透視 卑弥呼の墓説も
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邪馬台国の女王、卑弥呼の墓という説もあるものの、内部の構造が全くわかっていなかった奈良県桜井市の箸墓古墳で、宇宙から降り注ぐ素粒子を使って内部を透視する調査が行われています。
桜井市にある箸墓古墳は、全長およそ280メートルの大型の前方後円墳です。邪馬台国の女王、卑弥呼の墓だとする学者もいますが、宮内庁が皇族を埋葬した陵墓として管理し立ち入りを禁止しているため、内部の構造は全くわかっていません。

このため奈良県立橿原考古学研究所は、発掘などを行わずに内部の状態を把握しようという調査をおととし12月から進めていることを、9日明らかにしました。

この調査は宇宙から降り注ぐ「ミューオン」という素粒子を使って、内部をエックス線写真のように透視するものです。

エジプトのピラミッドで行われた調査でも活用され、未知の巨大な空間の発見につなげました。

考古学者で、大阪府立近つ飛鳥博物館の白石太一郎名誉館長は、「今回の調査で、ひつぎを納めた埋葬施設がどこにいくつあるのか、どういう方向に設置されているかわかれば非常に役立つ」と話していて、埋葬された人物を探る手がかりを得られるか注目されます。

「ミューオン」調査とは

「ミューオン」は、宇宙を飛び交っている「宇宙線」という粒子が、大気と衝突してできる素粒子の1つで地上に大量に降り注いでいます。

さまざまな物質を通り抜ける性質があるため、古墳などを通り抜けたミューオンを観測することで、エックス線写真のように内部の構造を透視することができます。

この調査法は、火山の内部にあるマグマや、東京電力福島第一原発の調査で活用されているほか、エジプトのピラミッドの調査では、未知の空間が内部にあることを明らかにしました。

また古墳の調査でも、2年前、奈良県斑鳩町の「春日古墳」で使われ、ひつぎを納めた「石室」と見られる空洞の確認につながりました。

箸墓古墳とは

「箸墓古墳」は、奈良県桜井市にある全長およそ280メートルの大型の前方後円墳です。3世紀中ごろから後半に造られたとみられ、この地域から全国に広まった前方後円墳のモデルと考えられています。

また、箸墓古墳は、邪馬台国の有力な候補地の1つとされる「纒向(まきむく)遺跡」にあり、研究者の間で女王、卑弥呼の墓だとする説も出されています。

一方、宮内庁は、孝霊天皇の皇女「倭迹迹日百襲姫命(やまと・ととひ・ももそひめのみこと)」の墓として箸墓古墳を管理し、研究者の立ち入りや発掘調査などを認めていません。

このため、今回の調査でひつぎを納めた石室の様子などが分かれば、埋葬された人物を探る手がかりになると期待されます。

陵墓 調査の意義

「陵墓」は、歴代の天皇や皇后、それに皇族を埋葬した場所として宮内庁が管理し、「静安と尊厳を保つ」という理由で原則、立ち入りを禁止しています。

これに対し、考古学や日本史の研究者らの団体は「国家の成り立ちを解明するうえで貴重な文化財だ」として公開を求め、平成20年に立ち入りは認められました。

ただ、発掘や土器の採取はできないため、古墳に手を加えることなく内部の様子を把握できるミューオンを使った調査に期待が寄せられています。

調査に携わる県立橿原考古学研究所の西藤清秀元副所長は「この調査方法は人が入れない古墳などに有効で成功すれば多くの古墳に応用できる」と話しています。