首都直下地震に備えよ 2020年を一極集中是正の元年に

首都直下地震に備えよ 2020年を一極集中是正の元年に
日本経済にとって最大の脅威ともいえる首都直下地震。マグニチュード7クラスの巨大地震が今後30年以内に70%の確率で発生すると予測されています。人口や都市機能が集中する東京がひとたび巨大地震に見舞われたら…2013年に政府が発表した被害想定は、最大で死者2万3000人。全壊または焼失する建物は61万棟。経済的な被害は実に95兆円にのぼるとされています。この被害想定をまとめた政府の有識者会議のメンバーだったのがサントリーホールディングスの新浪剛史社長です。現在、経済財政諮問会議の議員を務めていますが、首都直下地震がもたらす巨大被害を最小限に抑えるには、東京一極集中の是正を急ぐしかないと力説しました。(経済部記者 仲沢啓)

一極集中是正の元年

(新浪社長)
「2020年を一極集中是正の元年にしたい。いつ東京に直下地震がくるかわからないということですから、急いでやる必要があります。」

このように語る新浪社長。オリンピックイヤーのことし、一極集中の是正につながる「人や職場の分散」がどこまでできるのかを見極める年にしたいと考えています。社内でいろいろ検討しているということですが…
(新浪社長)
「この夏に東京オリンピック・パラリンピックもありますが、そこでわれわれは実証実験を行って仕事のしかたを変えていこうと思っています。たまたま私たちがいる東京(港区・台場)の拠点は、オリンピック・パラリンピックの会場エリアの真ん中に位置していて、通勤が大変難しくなると予想しています」
(新浪社長)
「セキュリティーがしっかりしたパソコンやタブレットを社員に配っていまして、実証実験で本社に来なくても仕事ができるかどうかを見ながら、職場が分散してもこの分野は大丈夫かどうかの確認をし、最終的な結論を出していきたいと思っています」

拠点機能の移転を検討

新浪社長は、首都直下地震に備えるためには、拠点機能を地方に分散させることも必要だと主張します。ただ、機能の分散といっても簡単ではないですよね。税制優遇措置を講じて企業誘致に乗り出す自治体もありますが、企業の地方分散、あまり進んでいないようです。
サントリーホールディングスは、登記上の本社を大阪に置く一方、東京・台場の拠点で本社機能のほとんどを担っていますが、今後、どこにどのような機能を移すことを検討するのか、聞いてみました。
(新浪社長)
「過去の地震の規模やリスクを分析しましたが、日本海側は太平洋側に比べてまだ安心度が高いのではないかと考えています。目下、どこがいいのかなと検討していますが、日本海側にもう少し経営資源を移して分散をしていくことが必要なんじゃないか、こういう議論をしています。また、どういう機能を分散させるかについては、財務や経理などの、いわゆる非営業部門というのは比較的移しやすいんじゃないか。今後1年を目途にプランを出していきたいと考えています。(機能の地方移転は)簡単なことではありませんが、大前提は安全かどうかであり、向き合ってコミュニケーションをして危機意識を共有すれば社内で十分理解が得られるのではないかと思います」

東京が国際都市として輝くためにも

新浪社長はこれ以上、人口や都市機能が過密になると、安全面でのリスクが高まり、国際都市・東京の魅力がかえって失われることになりかねないとも指摘。ITを活用して地方都市のスマートシティー化を進めながら、行政、企業とも早急に一極集中の是正に動くべきだと主張します。
(新浪社長)
「一極集中を改めると東京の魅力がなくなるのでないか。このように主張する人もいますが、そういうことにはならないと思います。東京が目指すのは、さまざまな知識や技術をもった方々、いわゆる高度人材が集まるような国際都市。こうした外国人も含めて安心して滞在できるような都市であるべきです。一極集中が進むほど災害時のリスクが高まりますから、国際都市としては厳しくなる。一極集中をやめることによって、災害に強い国際都市として光り輝くことができると思います。一方で東京から地方への分散を進めるには、まず地方で中心となる拠点をスマートシティー化する。福島県会津若松市のように都市のIT化を進め、病院や子育て、エネルギーなどの施設を効率的に運営していく。行政だけでなく、民間企業も一緒になって進めていくことが重要です。経済財政諮問会議のメンバーとしてこうした動きを積極的に促していきたいと思います」

民間の技術力を防災・減災に生かす

首都直下地震に備えるうえで経済界はどのような役割を果たすべきなのか。新浪社長は、一極集中の是正に経済界全体が取り組むことと合わせて、民間の技術力を防災・減災に生かすことが必要になると考えています。
(新浪社長)
「民間が技術開発したものを防災・減災に役立てる。そうしたことは大いにあると思います。企業はIoTやAIを活用し、いかに安く確実に生産設備を運営するというようなノウハウを蓄積しています。一方でAIなどの最新の技術はまだまだ防災には十分生かされていません。技術の力で防災・減災の課題を解決する。このことを技術を発展させるための起爆剤とすべきではないでしょうか」
今回のインタビューで新浪社長がキーワードとして挙げたのが「技術の力」。2013年に政府の有識者会議のメンバーとして首都直下地震の被害想定や対策を作ったときに比べ、いまは防災に活用できる技術が格段に進歩しているといいます。また、これからは技術の力で一極集中を是正するという考え方も必要になると指摘しました。

新浪社長が語ったようにことしが一極集中是正の元年となるのか。企業の動きを中心に取材を進めたいと考えています。
経済部記者
仲沢 啓
平成23年入局
福島局、福岡局を経て
現在、流通・食品業界などを担当