新年のトレンドワード まさかの第3次世界大戦

新年のトレンドワード まさかの第3次世界大戦
新年早々に入ってきたアメリカによるイランの司令官殺害のニュース。ネットをのぞくと「第3次世界大戦」「WW3」ということばがトレンドワードになっていました。こうした中、歴史を見つめてきた人たちのことばを引用し、現代の対立を冷静に見つめようというSNS上のメッセージが注目されています。(ネットワーク報道部記者 秋元宏美/高橋大地)

海外 そして日本でも

衝撃のニュースが日本で流れたのは1月3日のお昼前。まもなくネット上では、「第3次世界大戦」や「WW3」ということばが人々の不安とともに拡散し、世界中でトレンドワードになっていました。
「険悪だった米イラン関係から第3次世界大戦?」
「新年始まって3日目にして第3次世界大戦がトレンドに上がるとか勘弁」
「このめでたい新年に第3次世界大戦がトレンドって何だよ」

歴史から現代を見る

こうした中で、多くの戦争を見つめてきた研究者や歴史上の人物のことばを引用し、現代の対立を冷静に見つめることを促すツイートが注目されています。
「第3次世界大戦などという物騒な話が聞こえてきた。また、騙されるの?」
このつぶやきと共に紹介されているのは、「戦争プロパガンダ10の法則」という本の内容です。

プロパガンダ 10の法則

1.われわれは戦争をしたくはない
2.しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
3.敵の指導者は悪魔のような人間だ
4.われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う
5.われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる
6.敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
7.われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
8.芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
9.われわれの大義は神聖なものである
10.この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である
この10の法則は、もともとイギリスの政治家、アーサー・ポンソンビーが第1次世界大戦中の戦争プロパガンダを10の法則に集約できるとして、1928年に発表した著作に記されています。

この法則について、ベルギーの歴史学者、アンヌ・モレリさんが、冷戦や湾岸戦争、アフガン空爆など現代の戦争においても当てはまるとして詳しく分析し、その日本語訳が2002年に出版されたのです。

10の法則 当てはまる? 

ちなみにこの法則を念頭に、今回のアメリカとイランの発言を見てみると…
(アメリカ・トランプ大統領)
「戦争を始めるために行動を起こしたのではない」

(米国防総省声明)
「今回の攻撃はこの先のイランによる攻撃を防ぐためだった。アメリカは、国民と国益を守るためには世界のどこにおいても必要なあらゆる措置を取る」

(イラン・最高指導者ハメネイ師の軍事顧問デフガン氏)
「われわれは戦争を求めていない」
「戦争を始めたのはアメリカだ。アメリカには同等の被害を受けてもらう」

ツイッター上でもこんな指摘があります。
「アメリカとイラン側の声明を見ていると、アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』に書いてある通りに進んでいる。次の段階としては『知識人や芸術家が賛同』し始めたり、『愛国心』が声高に叫ばれたりして、いよいよ開戦となる流れ」

対立を客観視する参考に

10の法則が注目されていることについて、本を出版した草思社編集部では、「国と国の対立関係について法則として示され客観視できる内容なので、“正しい”情報を見極めるためにもぜひ手にとってほしい」と話しています。

出版社にある在庫は残りわずかな状態ですが、「今後、重版される可能性もある」そうです。

ナチス指導者のことば

英語でも似たようなツイートを見つけました。
「いま、イランで起きていること、第3次世界大戦について語られていることは、第2次世界大戦のあと、ナチスのヘルマン・ゲーリングが語ったことを思い起こさせます」
これは、北アメリカ在住と見られる人物がつぶやいたものです。ゲーリングはナチスの指導者の1人で、ツイッターでは、戦争犯罪を裁いた国際軍事法廷、「ニュルンベルク裁判」でのことばを引用しています。
「民衆が戦争を望むことはないが、指導者に従わせることは簡単だ。国民が攻撃にさらされていると言い、平和主義者のことを、愛国心に欠けていて、国を危険にさらしていると非難するだけでよいのだ」

あの天才科学者のことばも

20世紀を代表する天才科学者アインシュタインのことばも数多く引用されています。
「第3次世界大戦がどのようにおこなわれるかは私にはわからないが、第4次世界大戦で何が使われるかはお教えできる。石だ!」
(増補新版「アインシュタインは語る」大月書店)
これは、第2次世界大戦後の1949年に、アインシュタインが雑誌のインタビューに対して答えたものです。

アインシュタインの思いとは

どのような思いをこのことばに込めていたのでしょうか。
アインシュタインと交流のあった物理学者、湯川秀樹博士の下で学んだ愛知大学名誉教授の板東昌子さんに話を聞きました。

板東さんは、「アインシュタインは核が兵器として使われたことに心を痛め、核廃絶の問題に取り組んだ人物です。どうやったら核兵器や戦争を無くせるか、感情ではなく科学者として考えた発言だったのではないか」と指摘します。

板東さんは、湯川博士から「科学者は1人では何もできない。結束して自分たちの力で科学が戦争に利用されないよう行動しなければいけない」と教えられたそうです。

それは、アインシュタインが1955年、哲学者のラッセルとともに核兵器廃絶を訴える宣言を出したことをきっかけに開かれた「パグウオッシュ会議」に、湯川博士が出席していたことと大きく関係しています。

現在82歳の板東さんは、ネット上でアインシュタインのことばが注目されていることについて、「1人では戦争を止めることはできないが、みんなで状況を変えていこうという今の世代の行動力であり、それは今の世界情勢の中で、希望だと感じます」と話していました。

「歴史を知ることは今を知ること」

歴史の授業で学んだ気がします。そして私たちは今、ネットという道具を通じて歴史をより簡単に共有できるのです。