送料が2万円? ネット通販のわな

送料が2万円? ネット通販のわな
年末年始の時期を迎えて、おせちや贈答品などをネットで購入する人も多いのではないでしょうか。
身近で便利なネット通販ですが、注意も必要です。
今、“ネット通販詐欺” の被害を訴える人が急増しているのです。
(おはよう日本ディレクター 平瀬梨里子)

歯磨き粉の送料が…

取材のきっかけは、松山市に住む弟からの連絡でした。
ふだんから生活用品など、さまざまなものをネット通販で購入している弟。
その弟が2か月前、ネット通販で1400円の歯磨き粉を購入したところ、2万1400円請求されたというのです。
驚いて請求書を見ると、送料が2万円も請求されていたことが分かりました。
「えっ?2万?みたいになって。カード情報とか全部登録しているから、2クリックくらいで注文できるし、最後の注文確定の画面に送料が出てたかもしれないけど、正直、全然見てなかった」
弟は、あわてて出品者に問い合わせをすると「システムのエラーでした」という回答。
その後、返金に応じてくれたということでした。
単なる「エラー」だったのか?
出品者のページを確認すると、すべての商品の送料が2万円になっていました。
さらに不自然なことに、日によって送料が無料になったり、2万円になったりを繰り返していました。
この出品者についてのレビューを見ると、
「詐欺です」「ふざけんな」「歯磨き粉を注文したのですが、なぜか配送料が無料だったのが、勝手に2万円に変更され、注文確定になっていました」など怒りを示す書き込みが多数。

どうやら高額な送料を支払ったのは、弟だけではなさそうです。

出品者を直撃すると…

なぜ、高額な送料を設定するのか。
出品者のページに掲載された電話番号に電話してみました。
しかし、一向につながりません。
そこで、書かれてある住所を訪ねてみることにしました。
都内から新幹線に乗り、さらに駅から車で1時間以上。
たどりついたのは、山あいにたたずむ一軒のカフェ…。
その店主に事情を聞いてみました。
私 「私の弟が2万円の送料を請求されたのですが?」
店主「2万円?なんでですか?」(とても驚いた様子)
私 「その理由をお聞きしたかったんですけど…」
店主「そういう話は聞いていないので…」
店主によると、出品業には関わっておらず、店の住所を知り合いに貸しただけだといいます。
そこで、カフェの住所を借りて、実際に高額な送料を請求していた出品者に、匿名を条件に話を聞きました。
会社員をしながら出品業を営む男性。
1年前から送料に費用を上乗せすることを始めたといいます。
最初は5000円ほどから始めましたが、次第に2万円まで金額を上げていったそうです。
この男性は上乗せした2万円の内訳は、人件費、管理費、資材費などと話しました。

こうした費用を送料に上乗せする一方、商品の表示価格を抑えることでウェブ上で「価格が安い順」に商品が並んだ際に、上位の目立つ欄に商品が表示されるようになるということです。
私 「購入者に、高額な送料が気付かれなければいいという気持ちは、なかったのですか?」
男性「そういう気持ちはないですね。画面に送料が表示されているから、客が同意したうえで買っていると思っています。申し訳ないという気持ちはない」
出品者が自由に送料を設定できるネット通販サイト。
消費者問題に詳しい弁護士によると、こうした行為は購入者を欺いているとして、「詐欺罪」に当たる可能性も高いということでした。

高額な送料を払わせられるトラブルに遭わないためには、商品の送料をきちんと確認してから購入したり、請求書を確認したりするしかありません。

取材を進めると、ネット通販を悪用した、さらに巧妙な手口を使った詐欺とみられる行為が明らかになりました。

注文していない荷物が次々と…

大阪市に住む男性会社員の自宅には、先月から注文していない商品が次々と届きました。
「当初は、嫁が注文したものなのかなと思って、とりあえずその場で支払って商品を受け取りました。代引き支払いで商品代およそ1万円を支払いました」
「しかし、箱を開けてみると入っていたのは、スーパーなどで使われる業務用の値札を貼る器具。自分の注文履歴を確認しましたが、注文したものはではありませんでした」
この男性は、ふだんからネット通販を頻繁に利用しており、その際に代引きで支払いをしているため、抵抗なく払ってしまったということでした。
その後、出品者に問い合わせ、返品と返金に応じてもらうことができましたが、その後も身に覚えのない商品が届き続けました。

男性は「目的が全然わからなくて、気持ち悪い」と話していました。
SNS上でも、この男性と同じような経験をした人の書き込みが多く見られます。
「代引き支払いで5点も届いた。心当たりが無いから受け取り拒否。ほんと気味悪い」
「代引きで頼んでいない商品が届いて、義母が代金払ってしまった」などなど。
中には、注文もしていない商品が、1週間に50個以上も届いていると書き込んでいる人もいました。

国民生活センターによりますと、ことしの3月ごろから、こうしたトラブルの相談が相次いでいるということです。

出品者も被害に

誰がなぜ、商品を送り続けるのか?
出品者を取材してみると、なんと出品者も被害を訴えていることがわかりました。
大手通販サイトで、自動車用品などを販売している業者もその1人です。

この業者のもとには、ことしの夏から代引き支払いでの注文が相次いだといいます。
しかし、発送した商品のほとんどが「受け取り拒否」
返品と返金に応じますが、その際にかかる手数料や送料などは、すべてこの業者が負担しなければなりません。
自動車用品の販売業者
「商品を受け取る側からは、勝手に出品者が送りつけたのではないかと思われてしまうので、本当に腹立たしい」
この業者によりますと、代引き支払いで入る注文の中には、注文者の名前がアルファベットの羅列だったり、住所の日本語がおかしかったり、マンションの部屋番号が抜けていたりすることが多いそうです。

この業者は、そうした「怪しい注文」は事前に発送をキャンセルするようにしましたが、あまりにも件数が多いので、代引きでの支払いができないように設定しました。

すると、ぱたりと「怪しい注文」は、なくなったといいます。
実際に、大手通販サイトに商品を販売する出品者が意見を交わす専用の掲示板を見ると、同様の被害を訴える書き込みが見られました。
「本日も2件の被害」「受け取り拒否やキャンセル」「7月以降毎日被害」などなど。

狙いは「ポイント」?

いったい誰が行っているのか?
ネット通販に詳しい、ITジャーナリストの高橋暁子さんによると「ポイントを狙った行為」ではないかといいます。
大手通販サイトでは住所と名前を入力すれば、注文した人が、出品者を通じて第三者に商品を送ることができます。
本来であれば、プレゼントなどを贈る機能として利用するものですが、この機能を悪用したのではないかというのです。
高橋さんによると、第三者が何かしらの方法で入手した住所と名前を入力。
そして、支払い方法に「代引き支払い」を選択し、商品を送りつけるのです。この第三者の目的は、注文した人に対して付与される「ポイント」。
商品の代金が支払われなければ、注文者に入ったポイントは消滅しますが、ポイントが付与された時点で、直ちにポイントを使って商品を買い、現金化しているのではないかというのです。

付与されるポイントを負担するのは出品者。

消費者問題に詳しい弁護士によりますと、こうした行為は詐欺罪に当たる可能性が高いということですが、実際の注文者を特定することは難しいのが現状です。
「指摘されなければ、ただもうけだけが得られるので、そういう送りつけをする側としては、メリットだけでリスクが非常に少ない。だからこそこれだけ詐欺がはびこる状態になっているのではないか」
ネット通販を悪用した、こうした行為が相次いでいることについて、楽天、アマゾン、ヤフーのネット通販大手3社に聞いたところ、いずれも、こうした悪質な行為に対しては、やめるように要請したり、契約の解除などを行ったりしているとしています。

こうしたトラブルに遭わないためにどうすればよいのか。
国民生活センターでは、ホームページを通じて消費者に注意を呼びかけています。
▽身に覚えのない商品が届いたら受け取らない
▽受け取ってしまっても代金を支払う必要はなく、仮に払ってしまったら、早急に販売元や発送元に連絡する
▽通販サイトを利用した場合は、支払い方法を含めて家族と打ち合わせておく
▽身に覚えの無い商品が届いた場合は、最寄りの消費生活センターに相談する(消費者ホットライン「188」)
私たちは取材を続けていきたいと考えています。
読んでいただいた皆様からの情報提供をお待ちしています。