クラウドはもう古い!? 2020年は「エッジ」の時代に

クラウドはもう古い!? 2020年は「エッジ」の時代に
「エッジ・コンピューティング」ということばを聞いたことがありますか?身近にある端末でデータをより速く処理する技術のことです。スマートフォンや自動運転、画像認証技術など、AI=人工知能の活用が本格化するにつれ、開発が急速に進んでいます。(国際部記者 曽我太一)

エッジ・コンピューティングとは

「データは現代の石油」とも言われるように、いまさまざまなビジネス分野でデータの活用が進んでいます。

アマゾン・ドットコムの「AWS」や、マイクロソフトの「Azure」、それにグーグルの「Google Cloud Platform」などが提供する大規模なデータセンターで膨大なデータを処理する技術は、「クラウド・コンピューティング」と呼ばれ、次世代の通信規格5Gの整備が世界的に進んでいることも相まって、市場が急拡大しています。
このクラウドサービスの活用と同時に開発が進んでいるのは、より身近にある端末(=エッジ端末)でデータを処理する技術「エッジ・コンピューティング」です。スマートフォンや自動運転、防犯カメラなど、データを取得した場所に近いところで、処理が求められるようになり、各メーカーが開発競争にしのぎを削っています。
エッジ・コンピューティング自体は新しい技術ではありません。例えば、エアコンが人の居場所を感知して風量などを調節する機能も、エアコンでデータの処理を行う立派なエッジ・コンピューティングです。

需要増える迅速な処理

しかし、AIの活用が本格化する今、必要とされているのは、“より大きなデータを、より速く”処理する技術です。
自動運転では、車に取り付けられたセンサーやカメラが検知した歩行者や障害物などのデータを瞬時に分析し、ブレーキを「踏む」「踏まない」などの判断が求められます。映像を毎回データセンターに送って処理していると、時間がかかりすぎてしまいます。

また、ドローンで撮影した映像をリアルタイムで分析する場合も、バッテリーの容量が限られているため、搭載されるAIの情報処理にはエネルギーの省力化が必要になります。

こうしたニーズの高まりで、エッジ・コンピューティングの市場規模は、2017年の1億7000万ドルほどから、2025年には、10倍にまで成長するという試算もあります。

日本にも世界から注目の企業が

関心が高まるエッジ・コンピューティング。その核となる半導体チップの開発は、アメリカや中国などの半導体メーカーが世界をけん引していますが、日本国内にも注目されるスタートアップ企業があります。

2012年に創業した渋谷区に拠点を置くスタートアップ企業「LeapMind(リープマインド)」です。従業員は、およそ80人。おととしアメリカの調査会社が発表した「革新的な人工知能技術に取り組んでいる最も有望な100社」の1つに選ばれました。
LeapMindでは、画像処理に特化したAIのアルゴリズム(コンピューターの情報処理方法)と、半導体チップの回路の設計を行っていて、とにかく少ないエネルギーで画像データを処理できるのが特徴です。
兼村さん
「半導体チップを小さくし省力化することでテレビなどにも搭載できるようになります。テレビでディープラーニングを行えるようになれば、お気に入りに設定した人が画面に映った時に自動的に検知して知らせてくれたり、画質の低い過去の映像などを見たいときに、リアムタイムで高画質にして見られるようにしたりすることも可能になります」

すでに実用化に向けた動きも

すでに実用化に向けた取り組みも進んでいます。電車の車両を設計している川崎重工と連携。電車のホームドアに設置されたカメラで撮影された映像を、LeapMindが設計した半導体チップで分析し、電車のドアに傘や服などの異物が挟まっていると、自動で検知し、警告を出す実証実験を行っています。

電車のドアには、傷や汚れなど、挟んだ異物と似通ったまぎらわしいものもあります。ドアが閉まってから発車するまでのおよそ2秒の間に分析することが求められますが、9割以上の確率で異物のみを検知することに成功しています。

これまでにトヨタ自動車や三井物産のほか、アメリカ大手ITのインテルなど国内外からおよそ50億円の出資を受けていて、今後はアメリカなどでも事業を拡大していきたいとしています。
兼村さん
「今後はクラウドやエッジなど、さまざまなコンピューティング技術が組み合わされるようになっていくと思います。私たちは、身近な端末でさまざまな機械学習やディープラーニングを使えるようにすることで、今までにできなかったことをできるようにしていきたいです」
日本のスタートアップ企業、LeapMindの将来性について、アメリカ・スタンフォード大学の米国・アジア技術開発経営研究センターのリチャード・ダッシャー所長は日本だけでなくアメリカや世界の市場でも需要があると評価していました。
リチャード・ダッシャー所長
「この企業は、効率的にエッジ端末でディープラーニングを行える技術を開発し、より省エネで速いデータ処理を可能にした」
クラウドサービスでは、アメリカの大手プラットフォーマーが世界のビジネスをけん引していますが、今後日本は、国内のこうした若い企業の技術を使ってAIの活用を進めていけるのか、注目したいと思います。
国際部記者
曽我太一
平成24年入局
札幌局などをへて国際部
スタンフォード大学に客員研究員として滞在し、デジタル技術について研究