ロボットを“着る”? 最先端の紅葉狩りとは

ロボットを“着る”? 最先端の紅葉狩りとは
“最先端「着るロボット」で京都・紅葉ハイキング”
大勢の観光客でにぎわう京都。秋の紅葉シーズンに、一風変わったツアーの企画が目にとまりました。小型化が進み、価格も次第に下がってきたという「装着型ロボット」を使った、ちょっと珍しいツアーに同行しました。そこで見えてきた、未来を先取りする体験とは。(京都放送局記者 松原圭佑)

本邦初 装着型ロボット観光ツアー

ツアーは、東京にある大手旅行会社と奈良市のロボットメーカーが合同で企画しました。説明書きによると、「日々の歩行を支える歩行支援用パワードウェア」を装着して、ハイキングを楽しもうというのです。ロボットを活用した一般向けの観光ツアーは初の試みです。
行き先は、京都市中心部から車でおよそ30分、「高雄」と呼ばれる山あいの地域です。特に秋は多くの観光客でにぎわい、世界遺産の高山寺をはじめ歴史ある寺をめぐる「三尾めぐり」は色鮮やかな紅葉が楽しめます。

全長およそ6キロ、3時間の道のり。起伏の激しいハイキングコースを、ロボットの助けを借りて少しでも負担を減らし、歩くというのです。
この日、集まったのは、40代から70代までの8人。皆さん、最新の技術に関心があるそうです。ツアー代は、税込み・ロボット代込み(!)で9980円です。

ロボットはどう動く?

バスで到着した一行が身につけたのは、腰に装着するポーチ型の装置と、ひざに巻くサポーターがワイヤーでつながったもの。これがロボットとは思えないほどコンパクトな見た目です。
腰の装置にはモーターやコンピューターが内蔵されています。センサーで足の動きを検知して歩くリズムを予測し、モーターでひざのサポーターにつながったワイヤーを巻き上げる仕組みです。

ロボットを身につけて歩きはじめた参加者。感触を聞いてみると…
参加者
「初めは違和感があるが、慣れてくると多少楽になった感じです」
「階段や坂道を上るときには足を引っ張ってくれるのを感じます」
早速効果を実感している様子でした。

ツアーを企画した旅行会社は、顧客の70%が50歳を超えるシニア層だといいます。誰もが安心して旅行を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」を国が推し進めているなか、こうした最新のテクノロジーを活用した旅行の需要がますます高まるとみています。
KNTーCTホールディングス マーケティング部 波多野貞之部長
「歩くことに自信がなくなって旅行を諦めていた方が諦めずに参加しようと考える『需要の掘り起こし』、そして今旅行を楽しんでいる方が年齢を重ねても旅行し続ける『顧客維持』につながると期待している」

新開発の歩行支援ロボット

「歩行支援」ロボットに新たな可能性を感じた私は、ロボットを開発した奈良市のメーカーも訪ねてみました。会社のエントランスには、開発された製品や試作品など、数々のロボットがずらり。
平成15年に設立されたこのメーカー。もともとは物流拠点や工場など、重いものを持ち上げる際に腰への負担を軽くする作業支援タイプのロボットを手がけてきました。

作業支援ロボットは、今や働く現場で広く使われるようになっていて、こうした装着型ロボットの市場は、5年で4倍に急成長するとも言われています。
今回の「歩行支援タイプ」のロボットは、作業支援ロボットと違って、身につけることにより階段や坂道では最大およそ20%、砂地などでは最大およそ30%の支援効果が見込まれます。

メーカーが目指しているのは、生活の質の向上。高齢者が日常生活や軽いトレーニングに使うことを想定して、いかにコンパクトに、軽くできるかにこだわり、2.5キロまで軽量化したそうです。
ATOUN技術開発部 半沢文也さん
「歩行をアシストするロボットはこれまであまり開発されてこなかったが、ニーズがあるとみて開発した。高齢化が問題になるなか、ウォーキングや健康作りなど世界中に市場価値があるだろう」

ひざの痛みを気にせず旅行できたら…

高齢者のニーズをねらったという今回のロボット。私は、ツアーに夫と一緒に参加した、田畑滋美さん(62)に話を聞いてみました。

田畑さんは旅行が趣味で、毎月のように、夫や友人とハイキングなどに出かけています。しかし最近、ひざの痛みに悩まされるようになり、病院で「変形性膝関節症」と診断されました。特に階段では足にかかる負担が大きく、痛みが強い日などは1段ずつ足をそろえなければ上り下りができません。田畑さんにとって、ハイキングや街歩きは生きがいですが、最近は山登りに友人を誘うことを遠慮してしまうそうです。
田畑滋美さん
「歩いているうちにだんだんと痛みが強まるので、帰りは足が動かなくなって同行した友人に『1人で帰るから先に帰って』と言ったこともあります。痛みを気にせず旅行ができたらもっと楽しいと思います」
ツアーでロボットを身につけて歩き始めた田畑さんは、平たんな道では、早速効果を感じていました。

そしてハイキング終盤、田畑さんを待ち受けていたのは、400段という長い階段です。ストックを両手に持って階段をのぼり始めると、ロボットのアシストもあって、足取りは快調。周囲に遅れをとることなく、登りきることができました。
3時間のハイキングを終えた田畑さん。やはり痛みはあると言いながらも、装着型ロボットの使い心地について、笑顔で次のように振り返りました。
田畑滋美さん
「リタイアしたら悪いなとか考えていましたが、足が持ち上がって階段が上がりやすかったです。夫も『きょうはいつもより歩くのが早かったよ』と言ってくれました。今後この装置が実用化され、安く売られるようになってほしいです」

足腰だけでなく“生きがい”もサポート

現在はまだ開発段階のこのロボット、どれほどの効果なのか疑問でしたが、実際に私も体験してみたところ、モーターがリズムよく足を引っ張り上げてくれるため足の運びが軽くなるのを感じました。

もともと歩けない人が歩けるようになるなど劇的な効果があるものではありませんが、それでも田畑さんのように、少しのサポートで旅行を楽しめるようになる人もいます。

メーカーでは今後も製品化に向けてロボットを一般の人たちに体験してもらい、製品化に向けて改良を重ねたいとしています。

日常生活での活用も始まった装着型のロボット。これからの時代、生きがいづくりにも欠かせなくなるかもしれないと感じました。
京都放送局記者
松原圭佑
平成23年入局
富山局、大阪局などをへて
現在は経済や文化を担当