ベビーカーで行ける? 東京の駅 ひととおり調べてみた

ベビーカーで行ける? 東京の駅 ひととおり調べてみた
ベビーカーで電車やバスを利用するのは迷惑?
以前、このテーマについて取材したところ、大きな反響がありました。
今回は「心の問題」ではなく「設備の問題」、つまり、エレベーターなどを使ってベビーカーで利用できる駅がどのくらいあるのか、東京23区の駅をひととおり調べてみました。鉄道会社と地下鉄の会社に取材すると、ほとんどは利用可能でした。ただ、実際に現場へ行ってみると…。想像を超える困難さがありました。
(ネットワーク報道部 記者 有吉桃子・野田綾・大窪奈緒子)

まずは事業者に聞いてみた

取材したのは特設サイト「“孤育て”ひとりで悩まないで」を担当する私たち3人。日常的にベビーカーを使っていますが、思うようにいかないことが多々あります。
そこで今回は、ハード面の整備がどの程度進んでいるのか調べることにしました。
来年にはオリンピック・パラリンピックを控える東京で、バリアフリー化がどの程度進んでいるのか、まずは鉄道と地下鉄の事業者に取材しました。

“309分の8”

東京23区内にある主な駅は309。
このうち、エレベーターやスロープがないか、あっても途中で階段などを使わなければならない駅は、8つでした。
<エレベーター・スロープなし(あっても途中で階段など)>
JR:新大久保駅 中野駅
京急線:泉岳寺駅
東武伊勢崎線:堀切駅
東京モノレール:整備場駅 昭和島駅 天空橋駅 新整備場駅

“179分の16”

東京メトロの179の駅には、すべてエレベーターがありますが、地上と往復する間に階段などを使わなければならない駅が16あります。
<地上と往復する間に階段など使用(東京メトロ)>
銀座線:浅草駅 稲荷町駅 上野広小路駅 末広町駅 虎ノ門駅 青山一丁目駅
丸ノ内線:大手町駅 淡路町駅
日比谷線:仲御徒町駅 茅場町駅 八丁堀駅
東西線:竹橋駅 中野駅 茅場町駅
半蔵門線:永田町駅
有楽町線:銀座一丁目駅

“119分の2”

また都営地下鉄の106駅と、日暮里舎人ライナー13駅のうち、エレベーターがないのは、都営地下鉄の2つの駅でした。
<エレベーターなし(都営地下鉄・日暮里舎人ライナー)>
都営地下鉄:高輪台駅 泉岳寺駅
思っていたよりもバリアフリー化は進んでいるようです。
ただ、事業者に聞くと「まあ一応使えるんですけどね…」と歯切れの悪い答えが。突っ込んで聞いてみると、実際は「エレベーターはあるけど使いにくい」駅があるとのこと。
巨大なターミナル駅の新宿駅や渋谷駅は、かなり大変だろうと想像がつきます。ただ、ほかの駅でも意外と使いにくいところはいくつもあるはず。現場へ行って確かめることにしました。

地下鉄なのに地上へ!?

“大人の街”、六本木。
最近は大型商業施設ができ、親子連れの姿もよく見かけます。
六本木駅は地下鉄日比谷線と都営大江戸線の乗り換え駅で、1日の乗降客数は日比谷線がおよそ14万人、大江戸線はおよそ10万人。
自前のベビーカー持参で、その使い勝手を確かめました。
私たちは、日比谷線から大江戸線へ乗り換えてみることにしました。日比谷線のホームに降りて、大江戸線方面の改札口に行こうとしますが、あれ?エレベーターが見当たりません。
大江戸線に乗り換えるには、神谷町寄りの改札から出るのが最短距離ですが、エレベーターでは広尾寄りの改札口にしか行けません。
しかたなく、広尾よりの改札口を出ましたが、ここから大江戸線に乗り換えるには、地上に出るしかないようです。駅を出て、六本木ヒルズのエレベーターを使い地上に出ると、そこは六本木通り。
交通量の多い通りをひたすら東京ミッドタウン方向へ歩きます。
私たちが取材したのは11月でしたが、この日の最高気温はおよそ24度。歩いていると少し汗ばんできました。

ミッドタウンに到着すると、大江戸線につながるエレベーターがありました。2本のエレベーターを乗り継いで、ホームに到着すると…なんとここまでおよそ18分かかっていました。
試しにベビーカーなしでも乗り換えてみました。すると所要時間はおよそ5分半。地下を通るこの最短ルートを使う場合は、エスカレーターや階段でベビーカーを畳んだり、持ち上げたりする必要がありますが、もし雨が降っていたら、エレベーターで地上に出るよりはいいかもしれないと感じました。

乗り換え時間に要注意!

地下鉄とJRの乗り換えはどうでしょうか。
JR中央線と中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線と千代田線の乗り換えができる御茶ノ水駅(新御茶ノ水駅)へ行ってみました。
私たちは東京メトロ千代田線からJR中央線に乗り換えてみました。地下5階にある千代田線のホームから一気にエレベーターで地下1階へ。改札を出てスロープを上り、駅に隣接するビルのエレベーターで地上階へ移動。ビルを出ると、目の前にJR御茶ノ水駅の「聖橋口」があります。

しかしこの改札から入ると、短い階段と、ホームに降りる長い階段の2つを降りなくてはいけません。子どもを抱っこひもで抱き、ベビーカーをたたんで抱え、さらに大きなベビーバッグを持つとなると、階段でつまずく危険もあります。
エレベーターがある「御茶ノ水橋口」まで移動することにしました。公道を130メートル歩き、到着。改札を入り、さらに奥まで進み、エレベーターに乗って中央線のホームにたどり着きました。
ここまでの所要時間はおよそ9分。
聖橋口改札から入った場合は、4分ほどしかかかりません。
乗り換え情報サイトで検索すると、乗り換え所要時間は7分となっています。事前に検索していても、これでは予定していた電車には乗れません。
「ベビーカーなら当たり前だ」と言われるかもしれませんが、それほど大きな駅ではなくても、乗り換えるには時間に余裕を持って家を出なければならないことがわかりました。

まるで“迷路”

時間だけではありません。
複数の路線が乗り入れている駅は、経路が複雑すぎて、もはや迷路です。
JR山手線や京浜東北線、総武線、東京メトロ日比谷線、それにつくばエクスプレスが乗り入れている秋葉原駅。
都心と関東各地を結ぶ「玄関口」の1つです。
まずはJR秋葉原駅の「構内図」をチェックしてみました。
「む…難しい」
私たちが鉄道に詳しくなく、地図が苦手なせいかもしれませんが、複数の路線が縦横に通っていて、どのエレベーターに乗ればいいのか、すぐに理解するのは不可能でした。
そこで次に見たのが、「フロア案内図」。
これを見て、1階が改札、2階が京浜東北線と山手線のホーム、3階が総武線のホームになっているという全容がわかり、日比谷線とJR線の乗り換えルートも目星がつきました。

日比谷線から乗り換える場合、ホームからエレベーターを2回乗り継いで地上に上がると、JR秋葉原駅の「昭和通り改札」の目の前に出ます。
そこから2階にあるJR京浜東北線のホームにたどりつくには、いったん3階の総武線を経由して、さらに1階に降りて、またエレベーターに。結局、日比谷線のホームから京浜東北線のホームへ行くには、5回もエレベーターを乗り継ぐことになりました。

別の改札(「中央改札」や「電気街改札」)から入れば、エレベーターで直接、京浜東北線や山手線のホームへ行けますが、日比谷線から乗り換える場合は遠回りになります。

私たちは通勤・通学の時間帯を避けて取材しましたが、これが混雑時だったら、かなり大変だと感じました。

東京メトロに聞いてみた

利用できるけど、利用しにくい。
その理由を、東京メトロの担当者に聞きました。
東京メトロの駅に初めてエレベーターが設置されたのは、平成3年に南北線が開業した時。これをきっかけに、既存の駅でも整備を進め、最近では、オリンピック・パラリンピックに向けてさらにバリアフリー化を進めています。

それでも、一気に進めることができないのは、エレベーターの出入口になる地上の用地確保が難しいという事情があるからだそうです。
東京メトロ 山口貴大さん
「地下から地上に向かって地面を掘り上げた時に、どこに出るのか、誰がその土地を所有しているのか、一つ一つ確認と交渉が必要になってくるので、自分たちの意志だけで改修が進められないのです」
そんな中でも、より利便性が高まるようにルートの改修を進めているということです。
私たちが乗り換えに18分かかった六本木駅でも、そのルートのちょうど真ん中あたりの六本木駅交差点の脇に、新たなエレベーターの設置工事が進められています。
東京メトロ 山口貴大さん
「時代の流れと共に利用の仕方も違ってくるので、お客様の意見や周辺環境などを考慮し、ニーズに合わせて改善する努力をしています」
東京メトロは、去年3月、「ベビーメトロ」というサイトを立ち上げました。このサイトでは、利用した駅ごとに、スロープの場所などがわかる構内図や、地上からホームまで階段を使わずエレベーターだけで移動できるか、乗り換えに便利な乗車場所はどこか、などの情報を載せています。
また、ホームにベンチはあるか、おむつ替えのできるトイレはあるかといった情報も調べることができます。
このサイトは、実際に子育てをしている社員が発案したサービスだということです。

JRは…

JRにも聞いてみました。JR東日本東京支社によると、御茶ノ水駅については、バリアフリー化の工事が進まない事情があるそうです。
理由はその「立地」です。
御茶ノ水駅は、東西を聖橋と御茶ノ水橋、南北を茗渓通りと神田川に挟まれていて、工事を行うためのスペースを確保しながら作業を進めるのが難しく、時間がかかるそうです。地中に埋まっている物の処理なども必要で、2023年を目標に工事の完成を急いでいるそうです。

秋葉原駅については、コンコースと京浜東北線、総武線が重なる珍しい「3層構造」の駅なので、構造的にエレベーターの整備が難しく、現時点では工事の予定はないそうです。
JR東日本東京支社 担当者
「駅ごとに制約があり、すべて同時に進めることは難しくなっていますが、引き続きバリアフリー化に取り組んでいきます」
JRは、困った時は、改札やエスカレーター脇のインターホンで気軽に相談してほしいと話しています。
駅員が移動の介助にあたるほか、対応できる種類の車いすやベビーカーであれば、エスカレーターのステップを切り替えて、利用することもできるそうです。

JRも、ホームページでバリアフリー設備に関する情報を公開していて、移動の際は活用してほしいと呼びかけています。
JR東日本ホームページ
https://www.jreast.co.jp/setsubi/
らくらくおでかけネット
https://www.ecomo-rakuraku.jp/ja
(※NHKのサイトを離れます)

あなたの体験を教えてください

子育て中は、ベビーカーに子ども、それに荷物も抱えて移動するので、できるだけ負担が軽くなれば、というのが私たちの気持ちです。ハード面の整備は、時間も手間も資金も必要なので、すぐに対応できるわけではありません。とりあえずは、私たち利用者が、事前に移動経路をよく調べておく必要がありそうです。

そのためには、駅に分かりやすい構内図や案内があるとありがたいし、気軽に駅員さんに尋ねたり、お手伝いを頼んだりできれば、とても助かります。少しずつ、便利な世の中になっていくことを願っています。

NHKの特設サイト「“孤育て”ひとりで悩まないで」では、ベビーカーの利用をめぐる問題、課題を取材しています。
サイトには専用の投稿フォームがあります。
みなさんの体験談や情報をお待ちしています。