きのうフルーツ何食べた?

きのうフルーツ何食べた?
先日訪れたスーパーの売り場で、ある果物を手に取ったとき「最近よく食べるようになったな」とふと思いました。気になってよく見ると、売り場も広がって人気が出ているような。そこで…国内の果物の消費について調べてみると、果物をめぐる日本人の好みの変化が見えてきました。(経済部記者 新井俊毅)

日本の国民的果物は?

早速ですが皆さん、日本でいちばん人気がある果物は何だと思いますか?答えは総務省の家計調査の中に。
2人以上の世帯がどんな果物にいくらお金を遣ったのか、それぞれの支出額を調べてみたところ…去年の1位はバナナ。1世帯当たりの年間の支出額を平均すると4824円で、2010年から8年連続でトップだったりんごを抜いて、首位の座を奪還しました。2位のりんごの支出額が4638円。3位のみかんは4323円でした。りんご、バナナ、みかんは、長年、上位争いの常連で、これらは日本の国民的果物といってもよいかもしれません。

存在感を高める南半球の…

この3強に続く果物として最近、存在感を高めているのが甘酸っぱくてジューシーなキウイフルーツです。前置きが長くなりましたが、私が最近よく食べるようになった果物がまさにこのキウイでした。家計調査の統計には2005年に初めて登場。それ以降、1世帯当たりの支出額は年々増え、去年は平均で1906円となりました。10年前と比べると、実に2倍となっています。

なぜキウイの消費がこれだけ増えているのでしょうか。ニュージーランド産のキウイを取り扱う「ゼスプリ インターナショナル ジャパン」の栗田麻衣子マネージャーによると、その秘密は、キウイ本来の甘さを引き出したことにあるのだとか。

この会社では、キウイを日本の倉庫で管理して熟すのを待ち、店頭で食べ頃になるタイミングで出荷しています。この「追熟」(ついじゅく)と呼ばれる作業で糖度を高める工夫をしているのです。また、果肉が黄色く、より甘みが強いゴールドキウイの販売を強化。今では、この会社の日本での売り上げの半分以上をこの商品が占めるまでになっています。

日本人の味覚がより甘さを求めるようになっていると分析したこの会社。酸っぱいという印象を持つ人も多かったキウイを甘い果物としてイメージチェンジしたことで販売が伸びたといいます。
こうしてスーパーなどでよく目にするようになったニュージーランド産のキウイ。日本が輸入するキウイの、実に9割以上を占めています。

ニュージーランドにとってさらに追い風となりそうなのがおよそ1年前に発効したTPP=環太平洋パートナーシップ協定です。これによって、日本がニュージーランドからキウイを輸入する際にかかっていた6.4%の関税が撤廃されたのです。価格は、その年の収量や品質などに左右されるため、撤廃分がそのまま反映されるわけではないということですが、今後、価格の面で競争力が高まる可能性もあります。
キウイはニュージーランドにとって外貨獲得の貴重な資源。ことし9月には、来日したアーダーン首相が都内の大型スーパーを訪れてPRするなど、国を挙げての輸出促進が進められています。ただ、ニュージーランド産のキウイには課題もあります。現地で収穫されたキウイが日本国内で店頭に並ぶのは4月から1月ごろまで。ニュージーランド産だけでは、年間を通じた販売が難しいのです。このため会社では、愛媛県や佐賀県などの生産者と協力し、冬場に国産のキウイが供給できるようにしていますが、まだ十分な量を確保できていないため、今後、栽培面積を増やす方針です。
「冬場にキウイがスーパーなどの売り場からいったんなくなると、春に再び売り場を確保しなければならない上に、消費者の記憶も薄まってしまう。バナナのようにさらに身近な果物となるには、年間を通じて供給できる仕組み作りが必要になる」

あの果物は苦境に…

キウイが存在感を増す一方、国内の消費が大きく減った果物もあります。酸味が売りのグレープフルーツです。私の祖父母は、米屋兼青果店を営んでいたため、幼い頃、りんごやみかんとともに、大きなグレープフルーツが店頭に並んでいたのを覚えています。しかし、そのグレープフルーツの去年の支出額は240円。ピークだった2004年と比べると、5分の1にまで減っています。消費量が急減しているのはなぜなのか、都内のスーパーの担当者に話を聞きました。
(スーパーの担当者)
「独特の酸味に甘さが加わり人気があったアメリカ・フロリダ産のグレープフルーツが現地のハリケーン被害などで出荷量が減り、価格が上昇していることが影響しているのではないか」

家計調査の項目が消えることに

こうした果物をめぐる栄枯盛衰について農林水産省に聞くと「果物の消費量の統計からは消費者が甘さを求めていることがうかがえる。コンビニなどで手軽にお菓子が買えるようになったこともあって、いまや果物はお菓子と競合する関係になっている」という答えが返ってきました。

そういえばキウイだけでなく、国民的果物ともいえるりんごやみかんのほか、いちごやぶどうなど、多くの果物で甘さをアピールする品種が増え、店頭に並ぶようになりました。一方のグレープフルーツ、総務省は支出額が減少していることを理由に、来年の家計調査からグレープフルーツ単独の項目を廃止し、「他の柑きつ類」の項目に統合する方針です。

幼い頃から身近にあり、居酒屋でグレープフルーツサワーを愛飲してきた「グレフル党」としては寂しいかぎりですが、果物に甘さが求められる時代の流れということなのかもしれません。
経済部記者
新井 俊毅
平成17年入局
北見局・札幌局を経て経済部
現在、デジタル経済や統計問題・防災など幅広い分野を取材