日本上陸! 「モッタイナイラム」って?

日本上陸! 「モッタイナイラム」って?
「独特のクセがあるラム肉はちょっと苦手…」と敬遠している人もいるのではないでしょうか。そのラム肉が、和牛のような食感の肉に改良されたとしたら?畜産王国オーストラリアで、そんな高品質のラム肉が開発されました。その名も「モッタイナイラム」。食通もうならせるという、そのラム肉は、いったいどんな肉なんでしょうか?(シドニー支局長 小宮理沙)

和牛のうまみ目指すラム肉

牛肉を大量に生産し、日本をはじめ、世界各国に輸出しているオーストラリア。実はラム肉の生産も盛んで、2017年度の輸出量はおよそ43万トンと世界一でした。

国内市場でも、スーパーや精肉店にラム肉がずらりと並ぶなど、オーストラリアでは、なじみの食材です。

一方で、牛肉のようにブランド化された高品質のラム肉はありませんでしたが、そこに目をつけて開発された新しいラム肉が、いま、広がり始めています。
その肉は、独特のクセがなく、口のなかでとろけるような食感が特徴。赤身が多い一般的なラム肉に対して、サシの割合が35%と日本の和牛に迫るといいます。また、脂の部分に含まれるラム肉特有の、あの強いにおいがないというんです。

その名も「モッタイナイラム」(Mottainai Lamb)。日本語の「もったいない」ということばから名付けられました。名前の秘密は、実はエサにあるんです。

エサは廃棄食材!?

「モッタイナイラム」が生産されているのは、西オーストラリア州にある牧場です。経営者のスザンナ・モス・ライトさんは、もともと弁護士ですが、4年前、新しい畜産業を目指し、知り合いの農家などと協力。いまでは、広さ1200ヘクタールの土地で、およそ4200頭の羊を飼育しています。

羊のエサは、牧草や干し草、穀物が一般的ですが、モス・ライトさんの牧場では、なんと、食べられるのに商品にならない、廃棄食材が主に使われています。このため、日本語の「もったいない」という概念が、ブランド名に取り入れられたのです。
使われている廃棄食材は、形が悪いにんじんや堆積物が混じったオリーブオイルで、エサ全体の8割を占めます。にんじんには、羊の肉を柔らかくしたり、霜降りの割合を増やしたりする効果があるといいます。また、オリーブに含まれるオレイン酸は、香りやうまみのもととなり、とろけるような食感を生み出すことがわかっています。

こうして育てられた羊、1頭当たりから生産される食肉は21.5キロと、オーストラリア産のラム肉の平均の、およそ2倍にあたるといいます。

食品ロスを削減せよ!

それにしても、なぜ廃棄食材を使うことにしたのでしょうか?実は、オーストラリアは、世界有数の農業大国であるだけに、食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が大きな問題になっています。

生産される野菜の最大4分の1が、形が悪いなどといった理由で、出荷されないまま処分されていると言われています。食品ロスによって農家が受ける損失は、日本円にして年間2100億円余りにのぼるとみられています。
見た目が悪くても、栄養分は同じだけありますから、モス・ライトさんは、こうした「もったいない」食材を有効活用し、食品ロスの削減に貢献できないかと考えたのが始まりです。そして、3年かけて、廃棄される農作物の成分の分析などを重ねた結果、羊の肉質を向上させるエサを作り出すことに成功したのです。

地球温暖化対策にも効果!

廃棄食材を使うことで、意外なメリットもあります。家畜のゲップや排せつ物には、温室効果ガスの1つであるメタンガスが含まれることなどから、いま、肉を食べることは地球温暖化につながるという懸念も出ています。
しかし、モッタイナイラムの場合、廃棄食材で作られたエサが牧草よりも消化しやすいため、羊の腸内で発生するメタンガスの量を大幅に削減できるといいます。また、これまで廃棄食材を埋め立てることで発生していた温室効果ガスを無くすことにもつながっています。

こうしたことから、モッタイナイラム1キロ当たりの生産で排出される温室効果ガスの推定量はおよそ6キロと、一般的なオーストラリア産ラム肉のおよそ13キロと比べて、半分以下に抑えることができるというのです。

世界市場へ売り込め!

独特の生産方法で改良されたこのラム肉ですが、海外市場の開拓も進められています。すでにアメリカやタイ、それにUAE=アラブ首長国連邦など、7つの国や地域に輸出しているということです。

販路をさらに広げるため、モス・ライトさんが自ら世界各地を訪れて、売り込みも行っています。特に期待しているのが、ラム肉の消費が多い中東と人口が多く経済発展を続けているアジアです。

中でも日本は、輸入されるラム肉の60%余りがオーストラリア産で、ここ最近、需要も高まっています。日本とオーストラリアとの間では、2015年に発効したEPA=経済連携協定によってラム肉への関税もかからないため、追い風になるとみられます。
モス・ライトさん
「日本は先進的な市場で、新しいものを受け入れます。和牛のように世界一のラム肉として認められ、人々が食べてくれることを期待しています」

日本人シェフも太鼓判押す

肝心なのは、日本人の口に合うかどうかです。モス・ライトさんは、オーストラリアに住む日本人の知人に試食してもらうなどして、市場調査を進めてきました。その結果、おおむね好評ということで、来年(2020年)1月からは、日本全国にある大手ホテルグループ「ハイアット」のレストランで、本格的に提供される見通しだということです。

これに先立ち、私たちも、料理人の意見を聞こうと、シドニー在住の日本人シェフにお願いし、実際にモッタイナイラムを調理してもらいました。
包丁が入れられると、肉はほどけるように切り離されていきました。肉のきめが細かいため、火のとおりも早く、脂の出方も牛肉のようだと、シェフは驚いていました。そして、ラム肉特有の臭みもないことから、塩焼きをはじめ、しゃぶしゃぶや照り焼きなど、和食にも合うとして、「新しい時代の食材」と高く評価していました。
個人的には、ラム肉独特のクセが好きなのですが、私もモッタイナイラムを試食してみて、その食感と味わいに、思わず笑みがこぼれました。

廃棄食材をいかして育て上げられ、プロの料理人をもうならせるオーストラリアの新しいラム肉。今後、日本の消費者にどのように受け入れられるのか、とても楽しみです。
シドニー支局長
小宮 理沙
平成15年入局
金沢局、国際部などをへて現所属
大洋州の取材を担当