首都直下地震 今この瞬間もひずみ蓄積 いざという時の備えを

首都直下地震 今この瞬間もひずみ蓄積 いざという時の備えを
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今後30年以内に70%の確率で発生するとされる「首都直下地震」。専門家の分析では、関東の地盤は年間最大2センチのペースで北に押されていて、地震のエネルギーとなる「ひずみ」が、今この瞬間もたまり続けています。専門家は「30年以内に70%という発生確率は、『あす起きてもおかしくない』ことを意味している。できる備えを進めなければならない」と警鐘を鳴らします。
関東地方は、陸側のプレートの下に、南から「フィリピン海プレート」東から「太平洋プレート」という2つの海のプレートが沈み込む複雑な構造で、さまざまなタイプの大地震が繰り返し発生してきました。
京都大学防災研究所の西村卓也准教授は、GPSの観測データを用いて地盤の動きを分析し、どれくらい「ひずみ」がたまっているかを調べています。

分析によりますと、陸側のプレートはフィリピン海プレートの沈み込みに伴って北向きに押され、関東南部ほど変化の量は大きく、房総半島や三浦半島などでは地盤が年間2センチほど動いているということです。
西村准教授は「陸地の中に、どんどんひずみがたまっていくと陸地にある活断層が動きやすくなり、いわゆる『内陸直下型』の地震が起こりやすくなると言える」としています。

さらに、西村准教授は、地下深くで別のタイプの地震を引き起こすひずみも、たまり続けていると指摘します。

フィリピン海プレートが沈み込んだ先では、東から沈み込んだ太平洋プレートによって一部がブロックされ、プレート自体が曲がるような力がかかっているということです。
こうして起きるのがフィリピン海プレート内を震源とする地震で、震源の真上が東京都や千葉県などにあたり人口密集地域で揺れが激しくなります。

国が首都直下地震として想定している複数の地震のうち、最悪の場合2万3000人が死亡するとしている「都心南部直下マグニチュード7.3」の地震も、タイプとしてはフィリピン海プレート内で発生する地震です。

西村准教授は「首都直下地震の発生確率は今後30年以内に70%とされているが、これは、30年後に起きるという意味ではなく、あす起きてもおかしくない。身の回りの危険や家の備えなどを見直し、できる備えを実行に移すことが重要だ」と話しています。

首都直下地震とは

首都圏で甚大な被害が出るおそれのある「首都直下地震」は、政府の地震調査委員会が今後30年以内に70%の確率で発生すると予測しているマグニチュード7クラスの大地震です。

この地震について、専門家などでつくる国の検討会は東日本大震災を教訓に平成25年、最大クラスの地震による被害想定と対策の方向性を公表しました。
首都の直下で起きる地震にはさまざまなタイプがありますが、被害想定は、このうち、陸のプレートの下に南から沈み込む海側の「フィリピン海プレート」の内部で発生し、首都中枢機能への影響が特に大きいマグニチュード7.3の「都心南部直下」というタイプの大地震で考えられています。

まず、揺れの大きさは、東京の江戸川区と江東区で震度7、東京、千葉、埼玉、神奈川の4つの都県で震度6強の激しい揺れに襲われると想定されています。
被害が最も大きくなると想定されるのは、まさに今の季節、風の強い「冬」の夕方に地震が起きた場合で、全壊、または焼失する建物は61万棟に上り、このうち火災によって41万2000棟が焼失するとされています。

死者はおよそ2万3000人に上り、その7割にあたるおよそ1万6000人は火災が原因で死亡するとされています。

また、けが人は12万3000人、救助が必要な人は5万8000人、避難者の数は最大720万人に達すると想定されています。
上下水道や電気などライフラインや交通への影響も長期化し、鉄道は1週間から1か月程度運行できない状態が続くおそれがあるほか、都心の一般道は激しい交通渋滞が数週間継続し、食料や水、ガソリンなどの燃料も不足した状態が続くとされています。

経済的な被害は、建物などの直接的な被害に加え、企業の生産活動やサービスの低下による間接的な被害をあわせると、95兆円余りに上ると想定されています。

その一方で、事前の対策を徹底すれば死者は10分の1にまで減らせるとしていて、建物の耐震化を進めることや、出火防止のため、揺れを感知して自動的に電源を遮断する「感震ブレーカー」の普及などが重要だとしています。

今後30年以内に70%の確率で発生の根拠は

今後30年以内に70%の確率で発生すると予測される「首都直下地震」。

過去に繰り返し起きた大地震をもとに導き出されています。

関東南部の沖合の「相模トラフ」では、陸のプレートの下に海側の「フィリピン海プレート」が沈み込んでいて、2つのプレートの境界では過去に“巨大地震”が発生しています。

1703年のマグニチュード8.2の「元禄関東地震」と、1923年に「関東大震災」を引き起こしたマグニチュード7.9の「大正関東地震」です。

このプレート境界で発生するマグニチュード8クラスの“巨大地震”は、今後30年以内の発生確率は、ほぼ0%から6%とされています。

一方、2つの“巨大地震”に挟まれた220年の間には、ひとまわり規模が小さいマグニチュード7クラスの大地震が数多く発生しています。

例えば、江戸時代1782年の「天明小田原地震」、1855年の「安政江戸地震」、明治時代には1894年に「明治東京地震」と「東京湾付近の地震」、さらに大正に入ってからは1922年の「浦賀水道付近の地震」など、220年間で合わせて8つの大地震が発生しました。

政府の地震調査委員会は、これらの発生頻度をもとに、2014年に「首都直下地震」の将来の発生確率を公表しました。

2つの“巨大地震”が起きた220年間を1つのサイクルとした場合、この間にマグニチュード7クラスの大地震は平均で27.5年に1回発生。

これをもとに導き出されたのが「マグニチュード7クラスの首都直下地震は、今後30年以内に70%の確率で発生する」というものでした。

地震調査委員会が指摘しているのは、マグニチュード7クラスの大地震には“静穏期”と“活動期”があるように見えるということです。

220年間の前半の100年は静穏期で、関東大震災に至る後半の100年は大地震が相次ぐ活動期だったというのです。

関東大震災からまもなく100年になりますが、この100年間にマグニチュード7クラスの地震は1回しかなく、いわば静穏期でした。

地震調査委員会は、今後は地震活動が活発になる可能性もあるという考え方も示しています。