“気持ちが休まる暇がない” つながらない権利を!

“気持ちが休まる暇がない” つながらない権利を!
「深夜早朝にもLINEの業務連絡。すぐに対応しないと上司との関係が悪化する」

「職場を離れても店のことはすべて店長の責任。気持ちが休まる暇がない」

時間外の業務連絡をシャットアウトする「つながらない権利」。
先日、お伝えしたところ多くの反響が寄せられています。
「携帯電話を気にしない時間ができると仕事のモチベーションも上がる」
そうした従業員の反応を受け、いま、「つながらない権利」を取り入れる動きが広がり始めています。(ネットワーク報道部記者 成田大輔)

業務時間外のメール・電話 すべて禁止

「つながらない権利」に取り組み始めているのが、東京・千代田区のIT企業、「イグナイトアイ」です。
この会社は従業員は40人余り、1年余り前、業務時間以外である深夜早朝、土日や祝日などの仕事に関するメールや電話をすべて禁止しました。
これを徹底するため、取り引きのあるほかの会社にも時間外には対応できないことを前もって知らせ、メールが届いても、「休み」であることが自動で返信されるよう設定されています。
吉田崇社長が6年前に起業した当初は、残業や休日出勤は当たり前だったと言いますが、会社が大きくなるにつれ、女性社員の割合も増え、今では6割に上ります。

子育て中の女性などでも安心して働ける環境を整えることが、持続可能なサービス提供につながると考え、取り組みを始めたのです。
吉田崇社長
「誰か1人が頑張ってそれで成り立っているようなサービスではその人が抜けたり、辞めたりした場合に立ちゆかなくなる。人に依存しすぎたサービスではなく、仕組みを整えた安定したサービスが必要です。健康で意欲を持って働き続けるためにはつながらない権利を取り入れることは欠かせない」

“携帯”を気にしなくてもよくなった

正社員として働く20代の女性は「つながらない権利」で仕事のモチベーションが上がったと話します。
女性がかつて勤務していた会社では、日中は外回りの営業を続け、パソコンを使った業務は夜、会社に戻った後、終電まで続けていたそうです。

休日も電話にすぐ出ないと取引先を逃してしまうのではないかと不安で、スマホは常に手放せませんでした。

その結果、激務で体を壊してしまい、退社せざるを得なかったといいます。
20代の女性
「今の会社に転職してからは常に携帯を気にしなくてもよくなったので、旅行に行ったり、携帯を置いて遊びにいったりと土日にリフレッシュできるようになりました。仕事のモチベーションもあがります」

業務効率の改善に乗り出す

しかし「つながらない権利」を取り入れるためには徹底した業務の効率化も必要だといいます。

この会社ではまずは、移動時間を短縮するため、商談はすべてオンラインに切り替えました。
限られた勤務時間でも効率的に働けるようオフィスのレイアウトも変更しました。
●集中して仕事するため仕切りを設けたスペース
●オンライン会議専用スペース
●打ち合わせ用のフリースペースなどを設け、社員一人一人が好きな場所で働けるようにしました。
さらに、時間がかかる紙ベースの経理処理をやめ、領収書をスマートフォンのアプリで撮影するだけで、経費精算ができるようにしました。

従業員の仕事への意欲があがり、顧客の開拓などでも結果が出やすくなったほか、生産性も高まったといいます。

「つながらない権利」を取り入れ業務時間外の連絡を禁止しても、逆に会社の売り上げは4割増えたということです。
吉田崇社長
「お客様や企業のパートナーもあるので、1社だけで完結するのは難しい。つながらない権利は従業員にとっても会社にとっても大切だという意識を高めていくことが非常に大切だ」

“スラッシュセブン” “サイレントテン”

かつては長時間働くというイメージが強いと言われていた広告業界でも取り組みが始まっています。

大手広告代理店の博報堂は、働き方改革を推進するため、「スラッシュセブン」「サイレントテン」と名付けた社内キャンペーンを行っています。

「スラッシュセブン」は、午後7時以降に打ち合わせを設定しないルール。

「サイレントテン」は午後10時以降にメールでの業務連絡を禁止し、もしメールを受け取った場合でも対応しなくていいというルールです。
博報堂の人事担当者は「ルールを会社側で決めて、みんなで楽しみながら守っていくようにしている。時間を記号にすると、そこが区切りになるし、お互いに働きやすくなる。朝まで頑張ろうぜと言うのは時代感覚としてはもう古い」と話しています。

うちの会社にもつながらない権利を!

先日、「つながらない権利」についてお伝えしたところ、多くの反響が寄せられました。

メールの内容をご紹介したいと思います。
1「上司との関係が悪くなる」
役員秘書の方からは、深夜早朝問わず上司からLINEが届くことについての悩みが寄せられました。
送る側としては、忘れないうちに連絡しようという意味でも、受け取る側は、休日でも反応しなければと思い、勤務とは見なされませんが、自宅で毎日、資料を作ったりしているということです。
しかしこうした連絡を断って上司との関係が悪くなるのも困るので、どう対応すればよいか悩んでいるといいます。
2「仕事場から離れても責任を持つのが当たり前で…」
飲食店の店長として働く男性からは、休日でも店からLINEで連絡がきて、気持ちが休まる暇がないという悩みが寄せられました。
仕事場から離れても、店で起きたことはすべて店長が責任を持つことになっていて、会社も上司もそれが当たり前だとして、異議を唱えることができにくい環境だといいます。
男性からのメールには「つながらない権利」はまさに私が望んでいる権利で、仕事から切り離された時間がほしいという切実な気持ちが書かれていました。
同じ内容のメールは、スーパーマーケットの店長からも寄せられています。
3「卒園式出席を伝えたのに上司から緊急性のない電話」
30代の女性は、ことしの3月、有給休暇をとって娘の幼稚園の卒園式に参加したといいます。
しかし、卒園証書の授与式の最中に上司から緊急性がない電話がかかってきたということです。
卒園式だと事前に伝えていたにもかかわらず、電話がかかってきたことがとてもショックだったそうで、せめて入学式、卒業式、結婚式など一生に一度の機会に休んでいる場合、電話やメールをしない社会になってほしいとつづっていました。

お客さんの側も考えて

企業の間でも徐々に広がり始めている「つながらない権利」。

NHKに寄せられたメールの中でこんな意見が印象に残りました。
「お客様と直接対応する職場で働いていますが、質問に対する答えが1日我慢できない、今すぐどうにかしろという今の時代ならではの問題があると思います。顧客優先を続けた結果、我慢できない顧客があふれています。まずは自分優先をやめませんか?お客様」
NHKではこの「つながらない権利」について引き続き、取材を続けていきます。
皆さんのご意見や情報提供をお待ちしています。