ローマ教皇 広島で平和を願うメッセージ

ローマ教皇 広島で平和を願うメッセージ
ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、長崎に続いて広島でスピーチを行い、「戦争のために原子力を使うことは犯罪以外の何ものでもない」と述べて核兵器の使用は倫理に反すると強調しました。そのうえで「ここで起きた出来事を忘れてはいけない」と述べ、過去の記憶を受け継いでいくことが平和を築くために欠かせないと訴えました。

「一瞬の破壊、刻まれる」

フランシスコ教皇は、広島の平和公園でスピーチを行い、冒頭、「ここで大勢の人が、その夢と希望が、一瞬のせん光と炎によって跡形もなく消され、影と沈黙だけが残りました。一瞬のうちに、すべてが破壊と死というブラックホールに飲み込まれたのです。そしてその瞬間は、この国の歴史だけでなく、人類史に永遠に刻まれました」と述べて、この記憶を決して失ってはならないと強調しました。

そして、心と体に大きな傷を負い、死の恐怖と向き合いながら生きてきた人たちへの深い敬意を表しました。

被爆地訪問はみずからの使命

フランシスコ教皇は「私は平和の巡礼者として、この場所を訪れなければならないと感じていました。激しい暴力の犠牲となった罪のない人々を思い起こし、現代社会の人々、特に、平和を望む若者たちの願いと望みを胸にしつつ、静かに祈るためです」と述べて、被爆地を訪れることがみずからの使命と感じてきたことを明かしました。

そして、「私は記憶と未来にあふれるこの場所に、貧しい人々の叫びも携えてやってきました。貧しい人々はいつの時代も、憎しみと対立の犠牲者だからです」と述べました。

声なき声の代弁者

そして、フランシスコ教皇は「私は声を発しても耳を貸してもらえない人々の声になりたいと思います」と述べたうえで、「人々は現代社会で不安と苦悩を抱えてさまざまな緊張に直面しています。それは、人類の共生を脅かす不平等と不正義、私たちの共通の家である地球を思いやる能力の欠如、絶えることのない武力の行使などです」として、こうした課題に向き合う人たちの代弁者でありたいという思いを伝えました。

核兵器の使用は犯罪

フランシスコ教皇は「戦争のために原子力を使用することは、犯罪以外の何ものでもありません。人類とその尊厳に反するだけではく私たちの地球の未来のあらゆる可能性に反します」と述べて、核兵器の使用は犯罪にあたるとの考えを示しました。

さらに核兵器を保有することについても、「2年前に私が言ったように、倫理に反します」と述べました。

そのうえで、「平和について話すだけで、何一つ行動しなかったと、次の世代の人々が私たちの失態を裁く裁判官として立ち上がるでしょう」と述べ、平和について語るだけでなく、核兵器の廃絶をはじめとした具体的な行動を起こすべきだと訴えました。

そして、「戦争のための最新鋭で強力な兵器を製造しながら、平和について話すことなどどうしてできるでしょうか」と述べ、平和な国際社会を築くために武器を手放すよう呼びかけました。

真の平和は非武装の平和以外ない

また、フランシスコ教皇は「武力の論理に屈し、対話から遠ざかってしまえば、一層の犠牲者と廃虚を生み出すことがわかっていながら、武力が悪夢をもたらすことを忘れてしまうのです」と述べて、国際社会は対話によって軍縮を進める必要があると訴えました。

そして、「紛争の正当な解決策として、核戦争の脅威で威嚇することに頼りながら、どうして平和を促すことができるでしょうか。真の平和とは、非武装の平和以外にありえません」として、核兵器の廃絶を強く訴えました。

広島の原爆を忘れない

そのうえで、フランシスコ教皇は、被爆地、広島を訪問した意義に触れながら「過去を思い出し、ともに歩み、そして守る。この3つの行動こそが倫理的に最も重要であり、特にここ広島ではより一層強く、普遍的な意味を持つのです。そして、この3つの行動こそ、平和への真の道を切り開く力があるのです」と述べました。

そのうえで、いま私たちに求められることについて、「現在と将来を生きる世代が、ここで起きた出来事を忘れてはいけません。その過去を記憶にとどめておくことが、より正義にかない、兄弟愛にあふれる将来を築くことにつながるのです」と述べ、広島に原爆が投下されたことを始め、過去を忘れないことの重要性を強調しました。

自己や自国の利益だけ追求に警鐘

また、ローマ教皇は、グローバル化が進む世界について、「私たちが生きる世界は、グローバル化によって結ばれているだけでなく、同じ大地に暮らしているという点でも互いに結ばれています」と述べました。

そのうえで、「グループのためだけの利益を追求することよりも、私たち全てに共通の未来を確かなものにするため、責任をもって闘う偉大な人間となることがかつてないほど求められています」と述べ、自己や自国の利益だけを追い求めることに対し、警鐘を鳴らしました。

「戦争はもういらない」

そして、広島でのスピーチの最後に、「原爆や核実験、それに、あらゆる紛争で犠牲となった人たちの代わりに一つの願いを声を合わせて唱えましょう。戦争はもういらない。兵器のごう音はもういらない。こんな苦しみはもういらない。私たちの時代に、私たちのいるこの世界に平和が来ますように」と呼びかけ、平和を願うメッセージを伝えました。

そして、フランシスコ教皇はスピーチの最後、参加した人たちへの親しみを込め「私は、君とともに平和を唱えます」と力強く述べました。