リニア中央新幹線 中間駅で初の着工 2027年開業へ課題も

リニア中央新幹線 中間駅で初の着工 2027年開業へ課題も
k10012186731_201911271031_201911271033.mp4
リニア中央新幹線で神奈川県に新たに設けられる駅の起工式が行われ、東京と名古屋の間に設置される中間駅としては初めて工事が始まりました。総事業費9兆円を超える「次世代の交通の大動脈」。2027年の開業に向けて課題も残されています。
リニア中央新幹線の「仮称・神奈川県駅」は相模原市緑区に建設される予定で22日の起工式にはJR東海や地元の自治体の関係者などが出席し玉串をささげるなどして工事の安全を祈願しました。

リニア中央新幹線は2027年に東京・品川と名古屋との間で先行して開業する予定です。

品川ー名古屋間には6つの駅が設置される予定で、始発や終着駅となる東京の品川駅と名古屋駅では今ある駅の地下ですでに工事が進められていますが、途中に設置される中間駅としては今回が初めての着工となります。

神奈川県の駅は中間駅としては唯一、地下にできることになっていて、地下30メートルの場所に2つのホームと4つの線路が設けられ、2027年3月までに完成する予定です。

JR東海の金子慎社長は「中間駅として唯一の地下駅で工事に時間もかかるのでスタートできて本当によかった。リニア中央新幹線は日本経済を活性化させる大きな期待を背負っているので、できるだけ早く開業できるよう工事を進めていきたい」と話していました。

駅はコンパクト設計 チケットも事前に

「仮称・神奈川県駅」は、各駅停車のリニア新幹線が止まる駅となり、品川駅にはおよそ10分、名古屋駅にはおよそ60分で到着できます。

リニア中央新幹線のチケットは、全席指定の予約制で、販売方法は利用客が駅に到着する前にクレジットカードなどで事前に支払いを済ませておくやり方が検討されています。

このためJR東海は、従来の新幹線や在来線の駅とは違ってリニアの中間駅にはチケットの販売窓口や券売機を設置せず、コンパクトな構内になる予定だとしています。

国交相「災害の備えとしても重要」

リニア中央新幹線の中間駅の工事が本格的に始まったことについて赤羽国土交通大臣は閣議のあとの記者会見で、「リニアは三大都市圏の間の人の流れを劇的に変え、国民生活や経済活動に大きなインパクトをもたらすことになる。また、三大都市圏を結ぶ大動脈がリニアと新幹線で多重化することで災害への備えとしても重要だ」と述べました。

一方、リニア中央新幹線の建設をめぐっては静岡県が環境への影響が懸念されるとして県内のトンネル工事の着工を認めていません。

これについて赤羽大臣は「地元が抱える懸念や不満を建設主体のJR東海が受け止めて、意思疎通を図ることが大事だ。予定どおりのリニア開業には期待も大きいことから国土交通省としても、事業全体が円滑に進むよう引き続き、必要な調整や協力を続ける」と述べて、国が間に入って調整を続ける考えを改めて示しました。

総事業費 およそ9兆300億円

リニア中央新幹線は、東京と大阪を結ぶ次世代の交通の大動脈としてJR東海が総事業費およそ9兆300億円を投じて建設します。このうち品川ー名古屋間に関しては、総工事費用はおよそ5兆5235億円とされています。

北海道新幹線や九州新幹線などほかの新幹線の線区とは異なり、JR東海が全額自己負担で建設することになっています。ただJR東海は国が低い金利で資金を供給する「財政投融資」で3兆円を借り入れています。

時速500キロで営業運転 2027年の開業を目指す

リニア中央新幹線の特徴はスピードです。走行試験で出した最高速度は時速603キロとギネス世界記録にもなっています。

営業運転の最高速度は時速500キロとなる予定で、品川ー名古屋間は最短で40分、品川ー大阪間は1時間7分でつながります。三大都市圏どうしのアクセスが大幅に向上することで経済の活性化につながると期待されています。

品川ー名古屋間は、2014年に工事の実施計画が認可され、現在、2027年の開業を目指し、各地で駅やトンネルの工事が進められています。

大阪までの延伸工事は名古屋までの開業の後に進められる方針で、当初は2045年の全線開業が予定されていましたが、最大8年前倒し(2037年)することを目指して計画が進められています。

工事の進捗状況 駅はどうなる?

先行して建設が進む東京ー名古屋間は、そのスピードを最大限いかすためなるべくカーブの少ない直線に近いルートがとられ、東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知の7つの都県を通ります。

駅は6つ設けられる予定です。

▽品川駅
▽仮称・神奈川県駅(神奈川県相模原市)
▽仮称・山梨県駅(甲府市)
▽仮称・長野県駅(長野県飯田市)
▽仮称・岐阜県駅(岐阜県中津川市)
▽名古屋駅

JR東海は4年前から順次本格的な工事に着手していて、現在は品川駅と名古屋駅の地下に専用の駅をつくる工事が行われているほか、仮称・神奈川県駅で22日に起工式が行われました。

残りの3つの駅はまだJR東海と建設業者との間で工事契約が行われていません。

品川駅のホームは「大深度地下」に

品川駅では「大深度地下」と呼ばれる、現在の新幹線ホームのおよそ40メートル下の地中に「リニア」専用のホームなどの建設が計画されています。

計画では、専用のホームなどは延長1キロ、幅60メートル、面積3.5ヘクタールの巨大な構造物で、すでに建設が始まっています。

これほどの深さになったのは、「大深度地下」では土地の買収の必要がなく、地権者の同意も必要がないことが、主な理由としてあげられています。

トンネル工事 “難所”から優先して実施中

品川と名古屋間の全長286キロのうち、9割近くを占めるトンネルの工事も各地で進んでいます。

JR東海のホームページによりますと、トンネルは山梨県内の実験場のものを除いて全部で23か所あり、このうち11月22日現在、10のトンネルで工事契約が締結されています。

岐阜や長野、山梨の山岳地帯でトンネルを掘削する工事など、難所と呼ばれる場所から優先して工事を進めています。

静岡県内の工事は県が着工認めず

ただ、静岡県内で行われる計画の8.9キロの本体トンネル工事は、地元自治体などが水資源などの環境に影響するおそれがあると指摘して県が着工を認めていません。

静岡県の川勝知事は、リニア事業は賛成だとしつつも、環境影響の対策の構築が最優先だという認識を繰り返し示していて、県は事業主体のJR東海との間で協議を重ねてきましたが折り合いがつかず、JRや沿線の愛知県などからは、2027年の開業時期が遅れかねないという懸念が出されています。

こうした中、10月下旬に川勝知事は静岡県庁を訪れた国土交通省の藤田耕三事務次官と面会し、JR東海を含めた3者による新たな枠組みで、早期着工と環境保全が両立されるよう、国が主導して協議を進めることを確認しました。

ところが、この3者協議の在り方をめぐっても、川勝知事が環境省と農林水産省の参加を求めるなど調整が難航していて、協議がいつ、どのような形で始まるのか、見通せていません。

このため、地元の理解を得たうえでのリニア事業の推進が静岡工区でどうなるのか、不透明な状況になっています。