「プレミア12」初優勝で涙の稲葉監督 東京五輪へ弾み

「プレミア12」初優勝で涙の稲葉監督 東京五輪へ弾み
優勝が決まった瞬間、日本代表の稲葉篤紀監督は感極まった表情を見せ目からは涙があふれました。あの時、どのような思いがこみあげたのか。
稲葉監督は、「選手ですよ。(山田)哲人、浅村が慣れないファーストをやってくれたり、トノ(外崎)はサードやったり外野やったり。ピッチャーも慣れないポジションでやってくれて、大野も山岡も(山本)由伸もいつも先発しているところを中継ぎをやってくれたりね。選手みんなが本当に世界一をとるために一生懸命やってくれた」と涙の理由を答えました。

今回のプレミア12では優勝して世界一に輝くために、各チームの中心選手にシーズン中と異なるポジションや役割を担わせました。全員でバント練習。シーズン中、一度も守ったことのないポジションでのノック。韓国との決勝で決勝スリーランを打った山田哲人選手は、この大会のためにファーストミットを作り合宿では居残りで守備練習に取り組みました。

「本当に世界一になりたいという思いが強い選手が集まってくれた。そのおかげで世界一になれた」と気持ちを一つにしてチームに尽くした選手の頑張りが優勝という最高の結果につながったことに、47歳の指揮官はいちばんの喜びを感じていました。

そして8試合を戦った大会について「どの試合も楽な展開の試合はなかった」と振り返ったうえで、優勝できた要因に「粘り強さ」をあげました。

加えてこうした戦いができたのは、意外にも大会直前に沖縄で行われたカナダとの強化試合があったからだといいます。この試合、2回で0対6と大量リードを許しましたが、中盤以降、1点ずつ着実に返しました。結局、5対6と1点およびませんでしたが簡単には諦めず粘りを見せました。

稲葉監督は「負けてしまったが、1点差まで詰め寄ることができて、我々の野球はこういうものをやっていくんだというものがあの敗戦の中で見えた」と手応えをつかんだのです。

劣勢になっても諦めずに地道に得点を返すという戦いをチームとして確認できたことで、1次リーグ初戦のベネズエラ戦、2次リーグ初戦のオーストラリア戦、決勝の韓国戦での逆転勝ちにつながったと考えています。

さらに東京オリンピックに向けて日本の強みが何かを再確認できた大会でもありました。

2年前の就任当初、「スピード&パワー」をテーマに掲げていた稲葉監督。しかし今大会でホームランを打ったのは鈴木誠也選手と山田哲人選手の2人だけ。初対戦の海外のピッチャー相手だとなかなか長打を打てないのが現実でした。

それでもフォアボールを選び送りバントを決め走塁でゆさぶる。緻密な攻めで1点を積み重ねる戦いで、海外のパワーに対抗し勝てることを証明しました。

「1歩ずつ、こつこつ点をとっていくという大事さをみんながわかってくれたし、私自身も勉強になった」と稲葉監督。

来年夏の東京オリンピックは今大会のメンバー数から4人少ない24人で臨むことになります。

稲葉監督は「技術的なところも当然、そうだが、最後は熱いメンバーで私は戦いたいと思う。そういうところも含めてオリンピックへ向けて選手をしっかり見ていきたい」と今後を見据えました。その視線の先には日本悲願の金メダルがあります。

韓国打線抑えた背景に前日の岸投手のピッチング

一方、建山義紀投手コーチは決勝で投手陣が韓国打線を抑えられた背景には、その前日の韓国戦で先発した楽天・岸孝之投手の自分を犠牲にしたピッチングがあったと明かしました。

決勝で対戦する韓国と2次リーグの1位通過をかけて戦った今月16日の試合。岸投手は試合前、「自分のピッチングスタイルを捨てて、あすの決勝のためにチームが必要な配球で投げます」と首脳陣に申し出たと言います。

このため決勝でもマスクをかぶることが決まっていたキャッチャーの會澤翼選手は無得点に抑えることよりも韓国のバッターが球種やコースにどのように反応するかの情報収集を優先してサインを出しました。

その結果、岸投手は4回6失点。試合後は「申し訳ないです」とコメントを残しましたが、決勝で投げるピッチャーのために自分のピッチングを犠牲にしたことを言い訳にしませんでした。

そして、翌日の決勝。前日に得た情報が會澤選手のリードに生きて2回以降に投げた6人のピッチャーは無失点に抑えました。

建山コーチは「前日の岸のピッチングがとても参考になった。岸みずからがそういう役回りを買って出たことに感銘を受けた」と感謝していました。