香港 1日で催涙弾1500発以上 取締り強化の背景に中国が?

香港 1日で催涙弾1500発以上 取締り強化の背景に中国が?
香港では13日も各地で政府や警察に反発する市民が道路に障害物を置くなどして交通網を妨害したため、商店の営業や学校の授業に影響が出たほか、中心部の金融街では今も道路の通行ができないなど混乱が続いています。
このうち国際的な金融センターでもある中心部のオフィス街では11日から3日連続で大勢の若者や市民が集まり、「自由のために闘う」などと叫んでいました。

一部の若者らは周辺の歩道を砕いて道路上にばらまき、交通をまひさせ、現在も通行ができない状態が続いています。

このほか地下鉄やバスなども多くの路線で運行が取りやめになり、商店が営業中止になったり、学校の授業が休講になったりするなど、影響が広がっています。

一方で、12日の夜、一部の大学で校内にこもった学生らと警察が対じし、一時、警察が大学の敷地内に入って学生数人を逮捕したことを受けて、若者の間では批判の声も広がっています。

警察は物を投げたり放火したりするなどの危険な行為が相次いでいると非難したうえで、12日の一日で1500発以上の催涙弾を使い142人を逮捕したと発表し、今後も取締りを強化する姿勢を示しています。

しかし、今後の対応次第ではさらに市民が反発して対立が一層深まる可能性もあり、混乱が収まる見通しは立っていません。

抗議活動に一部で反発の声も

香港各地で交通網を妨害する活動が続いていますが、通勤や通学で公共交通機関を利用する市民の足にも影響が広がり、一部で反発の声も上がっています。

このうち地下鉄の駅では抗議活動の参加者が車両の扉が閉まるのを妨害して出発が遅れ、これにいらだつ市民との間で激しい口論となっています。

香港では市民の多くがデモの要求に応じようとしない政府の対応を批判しているものの、市民生活にまで影響を及ぼす抗議活動の手法には意見が分かれています。

中国出先機関が非難「テロリズムに向かっている」

香港にある中国政府の出先機関は12日、「香港の暴力や破壊活動は法治の最低ラインを何度も破り、テロリズムに向かっている」とする声明を出しました。

声明では、11日に抗議活動の参加者と口論になった男性が油のようなものをかけられて火をつけられ重体となっていることを取り上げ、「暴徒が破壊活動に反対する市民に火をつけたことは良識ある人たちを憤慨させた。このような殺人的な行為は明らかなテロリズムだ」として、「暴徒」や「テロ」といった表現を使って非難しました。

そのうえで「香港政府や警察があらゆる必要な手段を取って暴力やテロ行為を食い止め、一刻も早く秩序を回復することを断固として支持する」として、香港政府に対し抗議活動にさらに厳しく対処するよう迫るねらいがあるとみられます。

警察が発砲 圧力強める当局

香港政府は抗議活動への取締りを強化しています。

先月1日には、抗議活動に参加していた18歳の高校の男子生徒が警察に拳銃で撃たれて一時、重体になり、今月11日にも、警察官の発砲で21歳の男子学生が一時、重体となりました。今月8日には警察の強制排除の最中に建物から転落した大学生が死亡しています。

また、香港に出張中の日本人男性がデモに遭遇してけがをし、日本総領事館は、抗議活動の現場に近づかないよう注意を呼びかけています。
一連の抗議活動のきっかけは、香港政府が、議会にあたる立法会に提出した、容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする条例の改正案でした。

中国当局が中国に批判的な活動をする人などの引き渡しを求めるおそれがあるとして反発が広がり、ことし6月9日、民主派の団体が呼びかけたデモに主催者の発表で103万人が参加しました。

その後も抗議活動は続き、一部が過激化する中、香港政府は9月4日、条例の改正案を撤回すると発表し翌月に正式に撤回しました。

ただ、抗議活動が長期化するにつれて、市民の要求は改正案の撤回だけにとどまらず、警察がデモ隊を取り締まる際の対応が適切かどうかを検証する独立調査委員会の設立や、民主的な選挙制度の実現にまで広がっています。

専門家「取締り強化の背景に中国の存在」

中国政府はこれまで「暴力や違法行為に対しては絶対に手加減してはならない」として、香港政府や警察に対して厳しく取り締まるよう繰り返し求めてきました。

11月4日には、習近平国家主席が香港の林鄭月娥行政長官と、一連の抗議活動が始まってから初めて会談し、事態の収拾に向けて改めて対策をとるよう求めました。

香港の政治に詳しい専門家は、抗議活動に対する警察の取締りが強まっている背景に中国政府の存在があると指摘しています。

「(11日の発砲は)事前の警告もなく近距離から体の中心を狙って発砲していて、デモ隊への対応がこれまで以上にエスカレートしているほか、市民の反発を招きかねない行為を繰り返すようになっている。林鄭長官は中国側から抗議活動をより強硬な方法で早期に鎮圧すべきだという方向性を示されたはずで、取締りの強化に“お墨付き”を得たとみられる」(立教大学 倉田徹教授)

中国政府は、激しさを増す抗議活動を抑え込めていないことにいらだちや危機感を示していて、香港政府に対して抗議活動に一層厳しい姿勢で対処するよう指示している可能性もあります。

次の焦点は区議会議員選挙

「選挙は平和的手段で政府に抗議するために残された最後の機会」(候補者)

今、香港で注目を集めているのは今月24日に予定されている区議会議員選挙です。

市民の直接投票で決まる、香港で行われる選挙の中では最も民主的な方法で行われ、民意を反映しやすいとされ、多くの市民が今回の選挙を抗議の1つととらえています。

しかし、民主派と、政府寄りの親中派との間で激しい選挙戦となっていて、民主派の候補や団体のメンバーが何者かに襲撃される事件が相次ぐ一方、親中派の候補者が刃物で刺されたり、選挙事務所が破壊されたりする事件も起きています。

抗議活動による混乱が続く中、選挙では民主派側が勢力を伸ばすと見られていますが、親中派の陣営からは「暴力が止まらなければ、選挙の延期や取り消しを検討すべきだ」といった声があがっており、市民の間では政府が社会の混乱を理由に選挙を延期したり、取り消したりするのではないかという懸念が広がっています。

立教大学の倉田徹教授は「親中派からは選挙を延期すべきだという意見も根強いが、法的には14日間しか延期できない。仮に延期した場合でも“人為的な延期”と見なされ、世論の反発は避けられない」と述べ、香港政府は難しい判断を迫られるという見解を示しています。