長野県 台風19号でツイッターの救助要請収集 約50件救助に

長野県 台風19号でツイッターの救助要請収集 約50件救助に
台風19号による豪雨で千曲川が氾濫した長野県。当時、県はツイッターに投稿された救助要請を独自に収集し、およそ50件の救助につなげていたことが分かりました。
長野県では先月13日の未明に発生した千曲川の氾濫によって多くの住宅が浸水し、住宅に取り残された人などから119番通報が相次いだほか、ツイッター上にも救助を要請する投稿が相次ぎました。

長野県には防災情報の発信に使う公式のツイッターのアカウントがありましたが、当初は救助要請の情報を収集するツールとして使うことは想定していませんでした。

しかし救助要請に関する情報が多く寄せられたことから、先月13日の朝から急きょ、「救助が必要な方は写真や位置が分かる情報を『#台風19号長野県被害』をつけてツイートしてください」と呼びかけました。

当時、長野県庁では6人の職員が専属でツイッターでの情報収集にあたり、職員が投稿をした人と直接やり取りするなどして災害対策本部の被災情報を共有するシステムに入力していきました。

この情報が現場で救助にあたっている消防や自衛隊などに伝わり、長野県によりますと、およそ50件の投稿が実際の救助につながったということです。

ツイッターでの情報収集を指揮した長野県危機管理防災課の窪田優希さんは「当時、かなりの救助要請が投稿されていたので、一件一件丁寧に対応していかないと救助の遅れにつながると危機感を覚えました。より大きな水害や地震の際には、被害が広範囲に及ぶ中で救助要請の情報をどう正確に収集するのか課題も多いので、今後、ツイッターの活用方法をしっかりと議論していきたい」と話していました。

ツイッター上の実際のやり取りは

当時、ツイッター上に投稿されていた救助要請や、長野県の職員と投稿した人との詳しいやり取りの一部です。

救助要請の投稿として、「1階浸水で老夫婦とネコが2階から動けません」とか、浸水した建物の屋根の上に取り残された父親を心配する家族から「父親が全身びしょぬれで凍えているそうです。一刻も早く救助よろしくお願いいたします」などといった内容が寄せられていました。

投稿の中には救助を求めている人の詳しい住所や人数、まわりの浸水状況など詳細が分からない場合もあり、長野県の職員が投稿をした人とツイッター上でやり取りをして、救助に必要な情報を聞き取っていたということです。

このうち、「妊婦さんが救助を待っている」という投稿に対しては「ヘリでのホイスト救助の可能性に当たり、大変申し訳ないのですが、妊娠何か月かをお伺いしてよろしいでしょうか」とのやり取りがされていました。

長野市消防局によりますと、千曲川が氾濫した10月13日に寄せられた119番通報はふだんの8倍ほどにあたる540件余りに上り、119番がつながりにくかった時間もあったということです。

さらに消防では119番通報を受けた際、「救助要請が相次いでいて、すぐに救助に行けるか分からない」と伝えていたことから、ツイッター上で救助要請を投稿する人が相次いだとみられます。

長野県危機管理防災課の窪田優希さんは「救助が来ずに不安そうなツイートをする人に対しては、『必ず助けにいく』と強いことばで伝えて相手を気遣うようにして対処した。多くの人の救助につなげることができてよかった」と話していました。

実際に助けられた被災者は

ツイッターで長野県に救助要請を行ったことで、実際に助けられた被災者を取材することができました。

千曲川の堤防が決壊した地域の近くに住む中村節子さん(71)は自宅の1階部分が水につかって夫とともに2階に取り残され、救助されました。

節子さんは千曲川が氾濫したあとの先月13日の午前5時ごろ、玄関まで水が入ってきているのを確認したということです。

当時、節子さんは隣町に住む長女の望月ゆかりさん(51)に「水が入ってきていて、一緒に食べようとしていた夕飯は難しい」と電話で伝えたということです。

それから瞬く間に家の中に水が流れ込んで、1階部分はほぼ完全に水につかり、2階に夫とともに取り残されました。

娘のゆかりさんは母親の節子さんとしばらくスマートフォンでメッセージのやり取りをしていましたが、ことばの数が少なかったうえ、ニュースで被災者が救助される様子を見て不安に思い、午前9時ごろ、ツイッターで両親の救助を呼びかけました。

当時のツイッターでは「私の両親が食べ物も無く、下に下りられない。救助してもらえないか」と投稿しています。

このツイートが拡散したことで、長野県の防災アカウントでも把握され、県はゆかりさんたちと住所など詳しい状況のやり取りを行いました。その結果、両親はボートで救助されました。

娘の望月ゆかりさんは「誰に救助を求めればよいのか分からなくなっていて、わらをもすがる思いだった。住所などの個人情報を発信するという不安はあるが、SNSで救助を要請する方法はあってもいいのではないか」と話していました。

救助された母親の中村節子さんは「こんなに水が来たのは初めてで死も覚悟しました。このような形で助かって感謝しかありません」と話していました。

専門家「これまでない取り組みだ」

救助要請を投稿した人とやり取りをして情報を収集し救助につなげた長野県の取り組みについて、災害時のSNSの活用に詳しい専門家は「これまでにない取り組みだ」と評価する一方、「情報収集する職員を確保できるかは自治体にとって大きな課題だ」と指摘しています。

東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔 准教授によりますと台風19号が日本に接近していた10月12日から14日の3日間で、ツイッター上で「#台風19号長野県被害」というタグ付けで投稿されたのは全体で2000件以上に上っていたということです。

特に千曲川の堤防が決壊したあとの13日の朝は救助を求める内容の投稿などが急増していました。

長野県の取り組みについて佐藤准教授は「#台風19号長野県被害」とハッシュタグを指定して投稿を呼びかけたことで集めたい情報が限定できたと指摘しています。

さらに複数の職員が専属で情報を収集したことが効果的だったとしたうえで、佐藤准教授は「職員が投稿した人と双方向でやり取りすることで必要な情報を集められたことが実際の救助につながったとみられる。災害時のSNSの活用ではこれまでにない取り組みだ」と評価していました。

一方で、佐藤准教授は同じような取り組みを各地の自治体で行うにはまだ課題があるとしています。

佐藤准教授は「ツイッターの情報を収集しやり取りするには、それなりの数の職員が必要で、多数の災害対応がある中で人員を確保できるかは自治体にとって大きな課題だ」と指摘しています。