“いいね”非表示 ~インスタを守れるか

“いいね”非表示 ~インスタを守れるか
世界で10億人、国内でも3300万人が利用するSNS、インスタグラム。単なる写真投稿サイトを超え、巨大なソーシャルメディアに成長した。一方で、誕生から9年がたち、問題も起きている。「インスタ依存」や「いじめ」、「フォロワー水増し」などだ。こうした問題にどう対応しようとしているのか、インスタグラムの“風紀活動”に取り組む担当幹部が来日。NHKのインタビューに応じた。(経済部記者 川瀬直子)

“いいね”非表示のねらい

多くのSNSにある機能「いいね」。投稿された写真や文章に画面タッチ1つで感想を寄せることができ、その数を見れば投稿者だけでなくほかのユーザーからも人気の投稿かどうかが分かる。

最大の特徴とも言えるこの「いいね」について、インスタグラムはことしから日本・アイルランド・イタリア・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・ブラジルの7か国で、数を「非表示」にするテストを始めている。
ランダムに選ばれたユーザーが対象で、自分が投稿した写真などへの「いいね」の数は確認できるが、他のユーザーの投稿にどのくらい「いいね」が寄せられているかが分からなくなる。

背景には、「いいね」の数に対するユーザーの過剰な執着がある。国内でも「いいね」を集めたいばかりに、“インスタ映え”するものを買っては写真を撮って捨ててしまったり、そもそも買わずに写真を撮ったりする行為が問題になっている。

世界的には、過激な投稿を目指して命を落とす人さえいると伝えられる。そこまでなくても、自分の投稿がどう見られているかを意識するあまり、「インスタ疲れ」ということばも生まれている。

インスタグラムで公共政策部門の責任者を務めるカリナ・ニュートン氏は、非表示のねらいを次のように話す。
「私たちが望むのは、皆がさまざまな経験を表現したり、シェアしたりすることであって、『いいね』の数のためにウソの経験を表現することではありません。『いいね』の数を非表示にすることで、ユーザーがプレッシャーから解放され、生活の中で本当に経験したことを投稿し、シェアするようになるのではないかと思い、テストをすることにしました」

「まだテストの結果を語るには時期尚早です。しかし、皆が『いいね』の数ではなく、コンテンツそのものに関心を向ける流れになっているのはよいことだと思います。『いいね』の数が表示されたほうがいいという人もいますが、そうしたユーザーが求めているのは、数が示唆すること。つまり、例えば料理のレシピであれば、『いいね』の数が多ければ、その料理がおいしいというようなことです。そこで、私たちは『いいね』の数のプレッシャーを与えずに、『いいね』の持っていたよさを何らかの形で示すような機能を開発しています」

フォロワーの水増しも見逃さない

インスタグラムによって注目されるようになった「インフルエンサー」ということば。ファッションや趣味、ライフスタイルなどインスタグラムでの発信が人気を集め、多くのフォロワーを持つ人たちのことだ。

その発信力を武器に、企業から商品のPRなどの仕事を請け負うこともある。一方、こうした活動が知られるようになるにつれ、フォロワーを買って数を多く見せる「水増しインフルエンサー」なる存在まで生まれてしまった。

ニュートン氏は、こうした問題への技術的な対策も進めていると言う。
(カリナ・ニュートン氏)「私たちは最近、誰かが『いいね』やフォロワーを買ったらそれを検知し、自動的に取り除くシステムを開発しました。ですので、そういうこともなくなって来ています。また、アカウントが乗っ取られて不正に『いいね』が使われるのを防ぐために、パスワードを変更することを促したり、乗っ取りを検知したら通知を出したりもしています」

人海戦術の部分も

インスタグラムの不適切な投稿を監視しているのは、AIだけではない。

「レビュワー」と呼ばれる人たちが、世界中で24時間、投稿内容をチェックしている。その数、1万5000人(フェイスブックグループ全体)。インスタの“風紀活動”には、人海戦術の面もあるのだ。

ニュートン氏は、それでも10回に1回は、不適切なものを削除できなかったり、削除すべきでないものを削除してしまうといった誤りもあるという。
「いちばん難しいのは、いじめに関する投稿のチェックです。文脈によっても違ううえ、個人的なものなので難しいと思っています。テクノロジーで検知する取り組みも進めていますが、不正な『いいね』を見つけるのに比べて簡単ではありません。今はいじめに使われるような単語をAIで検知したり、利用者からの報告を受けたりしたあと、レビュワーが文脈を判定しています。今後もいじめについてさまざまな対応の形を研究し、防ぐために何ができるのか研究していきたいと思っています」

「こうした取り組みの最終目標は、皆がお互いを思いやり、安心して自分自身を表現できる場にしていくことです。やはりルールは重要だと思います。使われ方を見ながら、皆がよりよくインスタグラムを使えるようにコンスタントに機能を改善させていくことが私たちの使命だと思います。何かをリリースしたら終わりではなく、それを利用者がどう使うのかを見て、思いもよらない使い方を見つければ、そこに価値を加えるような工夫をしていく。これがうまくいくとテクノロジーに携わっていてよかったなと思います」

SNSの役割とは

インスタグラムでは誰もが情報の発信者となれる。そこで誰もが情報を得られるという意味ではテレビや新聞、雑誌のような既存のメディアに似た力を持つようになったと言える。

このため、インスタグラムの本国のアメリカではSNSにもメディアと同じようにファクトチェックや広告の規制などを求めるべきだという声が強まっている。

一方で、検閲するべきではないという意見も多い。

自由な発信ができる場を守りながら、どう取り締まるのか。ニュートン氏の話を聞きながら、日本でも議論が必要だと感じた。
経済部記者
川瀬 直子

平成23年入局
新潟局 札幌局を経て
現在 情報通信業界を担当