萩生田大臣「身の丈発言」英語の民間試験に抗議や不安の声

萩生田大臣「身の丈発言」英語の民間試験に抗議や不安の声
萩生田文部科学大臣の「身の丈発言」で改めて注目される英語の民間試験。新たに導入される大学入学共通テストをめぐっては、来年度に受験を迎える高校生を中心に反対する声が上がっています。インターネットのSNS上では、4日前から共通テストの中止を求める署名活動も始まり、29日正午時点で、すでに7000人が賛同しています。

ツイッターの声

ツイッターでは、萩生田文部科学大臣の「身の丈発言」に対して、「地方の受験生のことを考えれば到底、看過できない」、「身の丈に合った受験方法?馬鹿にするのもいい加減にして」、さらに、「萩生田さんは謙虚に、この訴えを受け入れてください」などと抗議する声が相次いでいます。

署名に賛同した高校2年の男子生徒は「萩生田大臣の発言は制度が変更されることで不安を抱える受験生の気持ちを踏みにじるものです。国は当事者のことなんて何も考えていないことがよくわかりました」と話していました。

専門家「発言は教育の機会均等に反する」

教育政策に詳しい名古屋大学大学院の中嶋哲彦教授は「教育の憲法とされる教育基本法は経済的地位にかかわらず教育を受ける権利、つまり受験の機会を守ることを保障している。ただでさえ、英語の民間試験については、公平・公正な受験が可能か疑問視する声があがっている中で、今回の萩生田大臣の発言は、本来、国が施策によって、教育の機会均等を確保するという大前提に反していると言わざるをえない」と指摘しています。
萩生田大臣の発言について都内で高校生を対象に無料の学習塾を開いているNPOで話を聞きました。

現在、ここで勉強している生徒は15人ほどです。ひとり親の家庭などで、経済的に厳しく、民間英語の受験料など負担が増える新たな入試に不安を持つ生徒も少なくないといいます。

塾を運営するNPO「まちの塾フリービー」の木村裕子代表は「子どもたちは、大学進学などに費用がかかることを身に染みて実感しています。それなのに、大臣の『身の丈』という発言はお金がなければ教育の機会が与えられないと受け止められ、子どもたちは深く傷つく発言だと思います。子どもたちが平等に試験を受けられるように制度を整えてほしいです」と話していました。

そもそも「英語の民間試験」とは…

そもそも、「英語の民間試験」はどのようないきさつから導入が決まったのでしょうか。

入試制度改革 「話す力」と「書く力」も

毎年およそ50万人が受験する大学入試センター試験は、再来年1月から「大学入学共通テスト」という新たな試験に変わります。これは1990年に共通1次試験からセンター試験に切り替わって以来の大きな入試制度改革となります。

共通テストで大きく変わるのが英語の試験です。今のセンター試験の英語はマークシート方式とリスニングの2種類で、読む力と聞く力を測定しています。

これに対して、新たな共通テストは、日本人が苦手とする英語のコミュニケーション力を向上させるため、話す力と書く力についても、測定することを目指すことになりました。

そこで、文部科学省が活用を決めたのが、すでにこれらの力を問う英語の検定試験を行っていた民間事業者です。国は公募によって、2018年3月に、以下の7つの事業者を選びました。

▼ケンブリッジ大学英語検定機構が実施する「ケンブリッジ英語検定」、
▼Educatinal Testing Service実施する「TOEFL iBT(トーフル・アイビーティー)」、
▼ブリティッシュ・カウンシルと▼IELTS Australiaが実施する「IELTS(アイエルツ)」、
▼ベネッセコーポレーションが実施する「GTEC(ジーテック)」、
▼日本英語検定協会が実施する「英検」、「TEAP(ティープ)」、
そして、「TEAP CBT(ティープ・シービーティー)」、
▼国際ビジネスコミュニケーション協会が実施する「TOEIC(トーイック)」です。

国はこの民間試験と並行する形で今の英語のセンター試験を、初めての共通テストとなる2020年度から4年間は従来どおり実施すると公表しています。

その仕組みは

この英語の民間試験は、第1回となる再来年1月に共通テストを受ける人たちの場合は、来月共通IDを取得し、来年4月から12月の間に希望する民間試験を選んで2回受けます。もし3回受けても2回分のスコアしか採用はされません。スコアは大学入試センターを通じて受験する大学に提供され、各大学の判断で出願資格や合否判定に使われる仕組みです。

戸惑う大学・短大 活用は6割ほど

こうした民間試験について全国の国立大学で作る「国立大学協会」は、2年前、活用する方針を明らかにしましたが、各大学からは戸惑いの声が上がりました。

その理由の1つが、難易度の異なる民間試験のスコアをどうして1つの物差しで測れるのか、でした。

これについて、国はセファールと呼ばれる国際的な基準により可能だとしましたが、厳格さが求められる合否判定に活用することは難しいなどとして北海道大学や東北大学など、見送る大学が出始めます。

さらに、東京大学などは受験資格には活用はするものの、合否判定には使わないことを決めました。

その結果、初年度に民間試験を利用する大学と短大は629校、全体の6割ほどにとどまりました。

事業者も混乱 中止求める高校 受験生

試験を行う事業者でも混乱が続いています。

事業者側も、公正公平な試験を実施するため、受験料や採点の体制、さらに試験会場などについて国からさまざまな注文が出されました。

これにより、事業者内部で調整が難航し、高校や受験生に対して、試験の日程や場所などの基本的なスケジュールがことし夏になっても示されないままでした。

さらに、7つの民間事業者のうちTOEICの事業者が7月になって、撤退することを明らかにし、混乱に拍車をかけます。

その結果、公立高校の校長でつくる団体は、試験の実施方法などの情報提供が不十分だとして、文部科学省に、初年度は民間試験を延期するよう異例の申し入れをしました。

さらに、受験生からも、試験会場が少ない地方は不利だという声や検定料が高すぎるという声が相次ぎます。

中にはSNSで試験に反対する署名を集める受験生も現れ、すでに賛同者が7000人分に上るなど反響を呼んでいます。

このように、混乱が続く民間試験ですが、9月に就任した萩生田大臣は「受験者が安心して活用することができるよう、万全の体制を整える必要がある」と述べて、不安払拭(ふっしょく)に努めつつも、試験は予定どおり実施する考えを重ねて強調していました。