台風19号の浸水エリア ハザードマップの浸水想定と多くが一致

台風19号の浸水エリア ハザードマップの浸水想定と多くが一致
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台風19号の豪雨で相次いだ堤防の決壊による河川の氾濫。
特に被害が大きかった福島県の阿武隈川など8河川の流域で、浸水したエリアをNHKが分析した結果、そのほとんどが自治体の「ハザードマップ」などで浸水が想定されていたことがわかりました。

(動画をご覧いただくと、「浸水想定」と「実際の浸水エリア」を比較できます)
NHKは、堤防の決壊などで広い範囲が浸水した8河川の流域について、国土地理院が推定した実際の浸水の範囲と、自治体のハザードマップなどであらかじめ浸水が想定されていた範囲を比較し、分析しました。

比較した河川の流域は、
▽福島県と宮城県の阿武隈川、
▽宮城県の吉田川、
▽長野県の千曲川、
▽埼玉県の入間川、越辺川、都幾川、
▽茨城県の那珂川と久慈川です。

地図の重ねあわせの分析に使ったのは、自治体のハザードマップの元になる国土交通省の「浸水想定」と、国土地理院が航空写真を元に推定した「浸水エリア」の電子データです。

吉田川 宮城県大郷町の付近では…

地図情報を可視化するシステムで重ね合わせて詳しく分析してみると、このうち、実際の浸水エリアが浸水が想定されていた範囲と広い範囲で一致したのは、吉田川の流域の宮城県大郷町の付近です。

吉田川の近くの地域では、浸水の状況がほぼ一致していたほか、吉田川に流れ込む支流の周辺でも想定されていた範囲に沿うようにして、浸水が発生していました。

阿武隈川下流 宮城県角田市や周辺では…

阿武隈川下流に位置する宮城県角田市やその周辺では、支流に沿って浸水想定範囲が放射状に広がっていますが、こうした場所に沿うように浸水が広がっていました。

千曲川 長野市穂保と周辺では…

千曲川の堤防が決壊して2人が死亡したほか多くの住宅が水につかる被害が出た長野市穂保とその周辺では、浸水したと推定されるおよそ950ヘクタールが、浸水が想定されていた範囲にすっぽりと含まれていました。

4河川では全ての浸水エリアが「浸水想定範囲」

今回、分析した8河川のうち、
▽千曲川、▽入間川、▽越辺川、▽那珂川の4河川は、
すべての浸水エリアが、浸水想定範囲に含まれていたことが確認されました。

浸水想定の範囲外で被害が出た場所も…

一方、台風19号の豪雨では、浸水が想定されていた範囲の外で被害が出た場所もありました。

宮城県丸森町では、ハザードマップなどで阿武隈川による浸水が想定されていた範囲の外にある住宅地や田畑でも浸水被害が発生しました。

町によりますと、このエリアの浸水は阿武隈川そのものではなく、その支流が氾濫したことが原因で発生したとみられ、少なくとも70棟以上の住宅で床上が浸水する被害が出ました。

なぜ、この地域では、ハザードマップで浸水が想定されていなかったのか。

国や町は、今回、氾濫が発生した阿武隈川の支流は、川の規模が小さく、浸水の想定を行う対象の河川ではなかったため、この支流の氾濫は想定には含まれていないと説明しています。

ハザードマップの周知 十分進まず

一方で、自治体のハザードマップについては住民への周知が十分には進んでいません。

4年前、平成27年の関東・東北豪雨で茨城県の鬼怒川の堤防が決壊し多くの住宅が流された常総市で、中央大学理工学部の河川・水文研究室が住民およそ500人に調査した結果、▽ハザードマップを知らない、見たことがないと答えた人が65%にのぼった一方、▽ハザードマップを確認し浸水の程度を把握している人は10%にとどまりました。

国土交通省は、去年の西日本豪雨など相次ぐ水害によってハザードマップを知っている人は増えているものの、内容を理解し、避難などの行動に結びつける人が多くないことが課題だとしています。

専門家「ハザードマップで地域のリスク知って」

災害時の避難に詳しい東京大学の関谷直也准教授は、浸水したエリアのほとんどがハザードマップで想定されていた範囲だったことについて、「過去の水害でもハザードマップの通りに浸水することが多く、今回の豪雨でも、ハザードマップの重要性が改めて示された。水害が起きる地域はある程度決まっているので、日ごろからハザードマップを見て自分が暮らす地域のリスクを知ることが重要だ」と述べました。

一方、想定されていない一部のエリアで浸水が発生したことについて、「洪水のハザードマップは大きな河川を中心に浸水の想定が作られ、小さな河川沿いは想定の対象となっていないところもあるため浸水が想定されていない地域が安全だということではない。小さな河川も氾濫し、周辺が浸水することは十分ありうるので、『川の近くでは注意をする』ということを徹底してほしい」と指摘しています。